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ソロヴェツキーの石




名も無いロシア兵の
写真が壁一面に
貼られた広場では
雪の降るなか、
ひとり、ふたり、三人と
人々はどこからか集まり
それぞれに花を手向ける

広場を取り囲む護送車と
警官はメドゥーサの様な
光る眼で市民を狩り立て
人々が足早にそこを
立ち去ろうとも、

降り積もる雪のなか、
ひとり、
また、
ひとり、ふたりと
花束の行進は続き 

2月16日、

ソロヴェツキーの石
の中へ葬り去られた
男の声無き声に
市民は耳を澄ませ

誰かが雪の上に、
その男の声を描いた  
「あきらめるな」と、

その言葉の上に
雪は
降り積もり
降り積もり、
やがて
見えなくなった
けれど、
その言葉は
いつか、
雪解け水になって
川の中へ
海の中へ
流れて

いつの日にか、
蜃気楼のように
立ち上がるだろう
あなたの胸の奥で
「あきらめるな」と、



#現代詩
#自由詩
#ロシア
#蜃気楼  









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