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映画「渇水」


 群馬県前橋市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)は、日照りが続き、取水制限が叫ばれる町なかで水道料金🚰を滞納している世帯を回っては、水道の栓を閉じてゆく仕事を繰り返していた。

そんなある日、岩切は幼い姉妹を抱えるシングルマザー(門脇麦)の家を訪ねるが、彼女は水道料金を払うどころか、幼い姉妹の子供を置き去りにして、家を出てしまう。

残された姉妹が(パパは船乗りで、今頃はスエズ運河を航海しているの)と、世界地図を見て、母親の嘘をそのまま信じているところが、とても悲しい。

 水道局員の岩切が、水道を停止する前に、
幼い姉妹のために、出来るだけ水を沢山、汲んであげるところは少しだけ救われた気がした。原作者の川林満(かわばやし みつる)さんは、小説家になる前は市役所の水道局員の仕事をされていたそうです。芥川賞候補にもなった、この小説はご自身の経験も織り交ぜて描かれたのかもしれない。
(川林満さん)って、どこかで、
聞いたお名前だと思っていたら、2008年の
「文芸思潮第3回現代詩賞」に私の詩、
(桜はるらん/祈り)を佳作に選んでくださった審査員の川林満先生だったことを、あとで思い出しました。

下段2行目に桜はるらんの評が書いてある

私はその時、戦争をテーマにした詩を書いたのですが、審査員の川林満さんから、
(戦争の予感はどの時期の実感に孕まれたのであろうか)いう評価を頂きました。
話が横道に逸れましたが、この「渇水」も、
まさに戦争そのものではないでしょうか?

 岩切は法の下で、水道料金を滞納している人たちの水道を止めに行く。でも水は生きてゆくための最終手段です。それを幼い姉妹にまで執行するのは「君たちが生きようと死のうと、私たちの知ったことではない」
と役所が、宣言しているようなものです。
法律に照らすなら、市民がそれで命を落としたとしても、それは仕方のないことなのでしょうか?(秩序のある、無秩序な、この世界)
 それほど知られてはいないかもしれませんが、この様な事例は現実にどれほどの数に上るだろうかと、私は身震いしました。

 心の神経を麻痺させなければ、とても出来ない仕事だと思います。岩切が最終的に選んだ道は、一見、狂った様にも見えますが、まともな人間なら、そうせずにはいられないのではないか。極限状況に陥った時こそ、人間のその人の本質が問われるのではないか。
そんな感想を持ちました。
 貧しい中でも、姉がまだ小さい妹を庇い、
水の張っていないプールでシンクロスイミングの真似をして、ふたりで楽しそうに躍るシーンは、誰にも頼らず健気に生きてゆこうとしている姉妹の意志が強く感じられました。
ふたりに、恵みの雨(愛)が、これからも、
降り注ぎますように^^

三十年前に私の町の湖も枯れたことがある

(残念ながら、原作者の川林満先生は2008年に、享年58才の若さで亡くなられたそうです。ご冥福をお祈りします)

#渇水
#生田斗真
#映画感想
#文芸思潮



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