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救命

ディナーショーに母と行った時の話。
食事中、おばあちゃまが急に嘔吐し、意識を失った。
原因は、アルコール摂取により、急に脳の血流量が減少した事による血管迷走神経失神だったようで、幸い直ぐに意識が戻った。
ご本人は駆けつけた救急隊を頑なに断り、そのまま最後までショーの鑑賞を続けていた。

母が元気な頃は、コンサート鑑賞に頻繁に付き添っていたので、
お年寄りの集いに参加する事が多かった。
なので、こう言う事もあるだろうと、緊急に備えて消防庁の講習を受け、資格を取得した。

今回の場合は、脳卒中の可能性もあるので、とりあえず動かさない方がいいと思った。
 が、
近くにいたイケイケお爺さまが、お姫様抱っこをしてしまい
首が大きくダランと垂れた。。。
更に狭いソファに仰向けで寝せてしまい、あれでは気道が確保出来ない。。。
“ まずは床に寝かせて、回復体位です!!”
とはっきり言えれば良かったのだが、
ドレスの女性を床に寝かせるなんて!とんでもない!
と言う空気にのまれてしまった。 私の初動ミス。。。
そして、私から出た言葉は
「床に横向きで寝られるのが宜しいんじゃないかと思いますが、、、」
と、蚊の鳴くような静かな声。。。
興奮状態のイケイケお爺さまには届かなかった。。。

消防署で定期的に訓練している時は、ズボン姿でひざまずき、大きな声で的確に救命する練習をしていて、隊員の方に褒められる程の張り切りっぷりなのに、
ディナーショーの空気の中では、練習通りには出来なかった。


今回は、軽い失神で本当に本当によかった。
心肺停止だったら、非日常のディナーショーの現場で、ドレス姿の女性を床に直に寝かせて、
『AED持ってきてください!』と指示を出して、
心臓マッサージをしなければならないのだ。

次、同じような場面に出くわした時は、きちんと対応出来るようにと、頭でシュミレーションはしている。
大きな声でイケイケお爺さまに「お姫様抱っこはダメですッ!」と言える勇気が大事なのだ。

定期的に救命の訓練は受けている。
心臓マッサージのやり方もわかっている。
でもその場の空気に対応出来ないと訓練してても意味がないと学んだ。
次はしっかりやろうと思っているが
またきっと練習通りにはできなくて後悔するんだろう。
でも最善を尽くせるように努力は続けようと思っている。


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