秋桜

日々思い浮かんだこと、幼い頃からの出来事などを綴っています 好きな作家(敬称略)・作…

秋桜

日々思い浮かんだこと、幼い頃からの出来事などを綴っています 好きな作家(敬称略)・作品  江國香織「なつのひかり」  高田郁「あきない世傅」  若松英輔「藍色の福音」 好きな映画  “The Notebook", “The Polar Express" 「まちの本屋」

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  • 遠い記憶

    こどもの頃からの出来事を綴ったもの (不定期更新)

最近の記事

撹拌

お試しのジュース屋さん 届いたばかりのブレンダー あっと言う間のスムージー 瞬く間に売り切れ また作ろうと アイディア募集 今しかできない季節もの 意外な仕上がり 笑顔のひととき

    • 我是…

      時折 わからなくなる 私はたしかに ここにいて 頭で考え 動いている 私は私 ただそれだけ トランプの手札のように 取り換えはできない あるところまでは地の姿  途中からは貝のよう 記憶の抽斗は ミキサー車のごとく ゆっくりと 昔のことが手前に 最近の出来事は奥へ ぐるぐると回転 暗闇から抜け出し まばゆい光の中へ それでも不自由と感じならば 自ら課した枷のせい

      • 曲芸

        あまりに驚き 後ずさり なぜ ここでブランコを? 大きな蜂がただ1匹 雨戸の紐にちょんと乗り 夜風に吹かれてご満悦 写真を拡大してみると いたずら顔に見えてしまう どんなに隠れたつもりでも ぐるっと一周 隙だらけ いつまで 滞在する気だろう 蛍の光を聞かせたい

        • 希釈

          用事は3つ まとめてしまおう ついでの1つ これが曲者 ただ座って前を観る それだけの筈が 強烈な展開に圧倒され 終わってから 誰一人  言葉を発しなかった 持てる者 持たざる者 極限状態に追い詰められ 顕になるのは 人間の 愚かしさ 観る側も 自分の内面を裏返され 蓋をしていた醜い心を 直視せざるを得ない 容赦なく揺さぶられる感覚 他の記憶と足して分れば大丈夫とは 到底言い切れなかった こういう時 受け手は辛い それも織り込み済みなのだろう 無理にでも切り替え 現

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        • 遠い記憶
          114本
        • 8本

        記事

          源流

          初夏の山あいを 縫うように 列車はゴトゴトと進む 終点で待ち合わせのはずが 乗り継ぎ前に合流 ロングシートの向かいに 懐かしい顔 十年ひと昔 初対面の子は照れて 帽子を深くかぶる 大河の一滴は 落ち葉の積もる 深い森から 岩間を流れる 川のしぶき 山鳥の声 姿なき ご先祖さまへの 感謝の思い

          里山

          水温む 田んぼの横で 麦の穂が 風に揺れている 行き来する度 発見がある 奥に連なる山々 教会の十字架 背の高いお地蔵さま 次は梅雨時 紫陽花の葉の上の カタツムリにも 出会えるだろうか

          窮鼠

          ある時 米びつ代わりの タッパーの蓋が欠けていた よく見れば歯型 まさかと絶句 プラスチックなど 美味しくなかろうに 聞けば 前の借り手は 贔屓にしていて 時に 高級アイスをふるまって すっかりなついていたらしい 挙げ句は天井裏の運動会 大家さんに相談してみたら 何やら取り出し 大丈夫だ これで 人さ いねえところへ 逃げてゆくべと しんみり言うのだ 見たこともない 鮮やかな色の特効薬 たしかに それからは 音もなく 平穏な日々 もし猫がいたならば 苦しまぎれに 立

          加速

          爽やかな風を受けて 走り出した朝 犬を見かけて減速 花時計を目がけて加速 あっという間にゴール なのに 帰りはすっかり牛歩 同伴者の企てで うぐいすきなこのお団子を 平らに運んで お土産に 趣旨に賛同は得たものの すぐに息切れ ついつい歩き 昼前のアスファルトでは 影絵のオオカミで遊ぶうち 風のように 追い抜かれ 相当地道に続けないと どうやら勝ち目はなさそうで 密かに練習したくなる  

          神経

          図太くは無く か細くもなく ただ鈍感なだけ トランプの10倍以上 めくっては確かめ 元に戻しての繰り返し 時折は手を休め 新緑を眺め 日の陰りを感じつつ 淡々と続ける 家路に着く頃 空は むらさき 続きは明日 気付かずにいた 不思議な景色

          余韻

          日曜午前のレッスン前 せめて反復練習すべきところ 鍵盤に向かうのはごくわずか お稽古後のお菓子の準備に むしろ時間を割いていた いかにお菓子の妖精の曲でも 力を注ぐポイントは  そこでは無かろうに 弾き込んでくる一番手と あまりに暢気な二番手と 目指すところが異なる生徒 後年 楽譜に残る 書き込みに 匙を投げずに教えてくれた 師匠のありがたさを実感 一月遅れのお祝いの ケーキの焼ける匂いに ふと思い出す 紅茶のひととき

          待ち時間

          電車はちょうど出たばかり 次は小一時間も先 昨日と同じに違いないのに 自販機の並びを眺め 横切る雀を目で追ううちに 反対側が先に到着 また静かになる 読みかけの本をおもむろに開く 栞は後半 往復すれば 読み切れるだろう 先達にも 駆け出しの時期があり  その後 想像し難い出来事に  何度も見舞われながら 人や自然との関わりの中で 生きていたことに気付かされ 誰しも順風満帆な時ばかりではないと 改めて知る 選び抜かれた言葉に 込められた思いの数々 驚きと納得を繰り返す

          待ち時間

          河童

          子どもの頃 電車から見える 用水路の柵に 河童の絵が描かれていて 頭のお皿が乾いたら大変らしいとか 水の流れに引きずり込まれる そんなイメージでいた 久々に水に親しむひとときを 見ているうちに なぜか思い出した 架空の生きもののお話

          明滅

          蛍の季節には まだ早い 怖がりの枕元で チカチカ光る 懐中電灯 近寄ると 真っ暗に 遠ざかると 光が漏れる この調子では また朝寝坊 時折覗く 静かな夜更け

          着席

          連休にかかる大移動 つい思い浮かべたのは 「フルーツバスケット」 減りゆく椅子に 滑り込み 終われば 普通に友達同士 高速移動は 座席ありき 不思議と満席 皆どこへ向かっているのか 降りた途端 人波に揉まれ 次なる席へとひた走る  着いたばかりの電車から 新たに人が押し寄せる あっけに取られ 声も出ず 奇跡の座席にホッとして 居眠りするのも 無理はない

          道路にできた水溜まり バシャンと派手な水しぶき 平らになるのは きっとまだ先 重たそうな車輌が ミシミシと通る あたかも 鈍い痛みに  身が抉られるかのよう 晴れ渡る日が 待ち遠しい

          双葉

          種を蒔き、お水を撒いて 来る日も来る日も 静かに見守る ついに芽生え 大きい種は 土を 力強く押し上げ 小さい方は 柔らかに 両葉を広げる そういえば最初は こんな風だった 懐かしさに つい目を細める やがて本葉が育てば バッタが跳んできて 遊び場にするだろう