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こんな北朝鮮に注目! 料理番組にも党の思惑

一人目のシェフは、「私は、食べれば長生きするヒラタケを使ってキノコ豚肉トウモロコシ包みを作ろうと思う」と述べ、別のシェフは、「私はきょう、ビタミンが多く含まれているビタミントウモロコシ包みを作ろうと思う」と述べた。どちらもトウモロコシの粉を水で溶き、クレープのように丸く焼いた後、健康にいい食材を入れて巻いて切っただけで完成である。 これは、朝鮮中央テレビの料理コンテストの番組の一場面。北朝鮮の場合、シェフが料理対決するテレビ番組の意味が日本とはかなり違って、食材を決める上で当局の思惑が入り込む。

放送された北朝鮮の料理コンテストのスタジオで、テーマとして出てきた「トウモロコシ包み」。トウモロコシは、食料が不足している北朝鮮では、様々な料理に使える主要な食材と位置付けられる。コンテストの食材には特に視聴者が食べてみたくなるようなものではなく、当局が増産などを奨励するものを選ぶという仕組みで、食糧不足に苦しむ北朝鮮の現実が垣間見える。次のコンテストの材料はナマズだった。早く大きく成長し、育てやすいという理由で、金正恩政権になって、養殖を奨励しているタンパク源だ。コンテストでは、ナマズの天ぷらをはじめ、蒸しナマズやナマズチヂミなど、様々な料理が完成した。こうした料理番組は、毎年、金日成と金正日の誕生日などに放送されている。

こうした料理番組は、北朝鮮の国民に受けているのだろうか?ある脱北女性は、そうした番組は人気がなく、批判されていると語る。別にテレビでシェフに料理の作り方を教えてもらわなくても、「材料さえあれば自分たちがもっとおいしく作れるのに」という声が多いからだ。「作り方が分からなくて、作らないのではない」と反発は大きい。脱北女性は、「あんな番組を放送せず、料理のための材料をくれ」と主張する。

朝鮮労働党の指示に基づいて作られているという北朝鮮の料理番組。国民が食べる物がないと飢餓に苦しんだ時期には、国民に人気のジャガイモ料理を放送。ジャガイモを米の代用食にしろと指示があると、党の指示を受けた各地域の商業管理所が、いくつかのレストランを選出し、スタジオでジャガイモ餅やジャガイモご飯などの料理を作るという流れで番組は作られた。トウモロコシ料理のコンテストの場合、それをどのようにおいしく食べられるように料理するかというのがテーマだが、その背後には、トウモロコシ料理で米不足を隠そうとする政府の思惑があるのだ。

また、料理番組に出る食堂には、番組に出るために党の担当者に賄賂を贈るという悪習がある。自分のレストランがテレビで放送されれば、党から認められた食堂とアピールでき、レストランの宣伝になるからだ。

山の多い地域に住む、ある女性が、山が多く米がないので「トウモロコシでも米のようにおいしく料理しよう」というテーマで料理大会に出場し準優勝を果たした。準優勝の賞品はロシア製の電気ミシンだった。たが、その地域に電気はなく、結局ミシンは使えずじまいだったそうだ。

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