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こんな北朝鮮に注目! 閉鎖社会で生まれる芸術に価値アリ

北朝鮮は三代世襲の独裁国家であり、国民に自由がない、世界で稀に見る閉鎖された社会。それゆえ芸術の分野では、共産主義を礼賛する情宣ポスターであったり、独裁者を崇めるための巨大像であったり、作家たちは独自の路線を突き進み続けている。以前、北朝鮮の美術品についてドイツでも活動する韓国人監督は「ヨーロッパでは北朝鮮のポスターが人気」「原画は1枚1000~3000ユーロ(約16万~47万円)で取引されている」と述べた。中国とヨーロッパで北朝鮮の絵が本当に人気なのだ。理由は「世界で唯一の社会主義的リアリズムの作品として希少性があるから」なのだそうだ。北朝鮮の美術は「世界美術界のガラパゴス」と評される。現代美術の流れを追わず、ユニークなジャンルを作り出していると聞くと、「ふ~ん」となぜか納得してしまう。

1959年に設立された万寿台(マンスデ)創作社は、60年近い歴史を誇る革命美術創作の象徴であり、北朝鮮で最大規模の美術創作団体である。そこには、集団美術という独特の概念がある。これは社会主義美術の特徴で、複数の人が一緒に資料を集め、協業で完成させる作品である。北朝鮮は絶対的な存在である首領と主体思想を具体的に表現することは、ある個人の能力だけでは不可能であり、創作の速度を早めるためという理由で、集団創作を奨励している。宣伝扇動部に属している万寿台創作社の職員は約4000人。その役割は宣伝と外貨獲得にあるため、創作、組織事業、製作、普及の4つの分野で構成している。朝鮮画(写実主義的な北朝鮮の画)や彫刻、工芸など10余りの創作団に、美術家だけで1000人が所属している。金日成国家主席と金正日総書記の大型銅像、肖像画、壁画などは全て万寿台が造った。

万寿台創作社はインターネットサイトを開設し、外国に作品を販売している。経済制裁下でも「万寿台アートスタジオ」というサイトには、万寿台創作社所属のアーティストの風景画、静物画などを紹介する写真と説明が載せられている。このサイトはあるイタリアの業者が万寿台創作社と独占契約を結んで、イタリアで運営しているという。万寿台創作社のイタリアの連絡担当者は「万寿台創作社は大型プロジェクトを具体化できる能力と経験を持っており、数々のアーティストを海外に長期間、派遣することができる」とし、「このようなことができる機関はほとんどない」と述べた。また「全ての取引は、北朝鮮当局や万寿台創作社ではなく、イタリアの会社を介して配送されている」と語っている。おそらく制裁を逃れるためだろう。

海外に派遣された万寿台創作社のアーティストたちは国に監視されながら生活を送る。しかし、海外滞在中には食事の心配がなく、より多くのお金を稼げるので、賄賂を使ってでも海外に行こうとする人が多い。万寿台創作社の海外での実力という意味では、イタリアのブランドであるベネトンが「イマゴ・ムンディ(世界のイメージ)」コレクションである発注をした。刺繍で作られた世界地図である。万寿台創作社にとって、海外からの注文はいい外貨稼ぎになる。主にヨーロッパで注文があるのはドイツからだが、他は、アルジェリア、アンゴラ、カンボジア、エジプト、ギニア、マレーシアなどから注文が入ってくる。金王朝の偶像化のために、長きにわたって大型作品を作ってきたノウハウだけではなく、人件費などのコスト面でも競争力があるという。

また、イギリスのBBCは2016年2月、「北朝鮮の最大輸出品 - 巨大な銅像(North Korea's biggest export - giant statues)」という番組で、世界市場でよく売れている北朝鮮の製品は多くはないが、唯一の成功した輸出品は「芸術」とし、特にアフリカで北朝鮮の文化的影響と成果が目立っていると紹介した。北朝鮮がアフリカで多く受注できた理由として、BBCは「安さ」と「サイズ」で勝負するスタイルを挙げた。また、中国やロシアは現在、 巨大な銅像などは造らないとし、「(北朝鮮の芸術品の)魅力は明らかで、当然その大きさが全て」と北朝鮮芸術の特異さを伝えた。

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