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嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞シリーズ

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藤原定家の小倉百人一首の和歌を原作にして、自由気ままに読み下してシリーズ化したものです。前日譚から後日譚まで合計102話になる予定です。
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記事一覧

《ノー天気に嵐吹く》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十九の歌~ 

《ノー天気に嵐吹く》原作:能因法師 「三室の神さん、また、女の尻追いかけてんやて。」 「そ…

渡良瀬 遥
10時間前
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《夜半の月》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十八の歌~

《夜半の月》原作:三条院 ……素面やで、酒は目の前にあるけど。 笑うてくれや、お月さん。 …

《浮かれ女》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十七の歌~

《浮かれ女》原作:周防内侍 春の夜、夢のように 貴方の腕に抱かれている。 朧月に夜桜が蒼く…

《はぶてる》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十六の歌~

《はぶてる》原作:前大僧正行尊 「まだまだ、六十歳」いうて騒ごう思うても、 ……体がついて…

渡良瀬 遥
2週間前
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《青い炎》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十五の歌~

《青い炎》原作:相模 もう、何日会ってへんのやろ、うちら。 もう、うちのこと飽きたんやろか…

渡良瀬 遥
2週間前

《源氏の悲劇》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十四の歌~

《源氏の悲劇》原作:権中納言定頼 接吻の後、泣いた。 宇治の川霧は深く、濃く流れている。 …

渡良瀬 遥
3週間前
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《おばあちゃん、待っててな!》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十三の歌~

《おばあちゃん、待っててな!》原作:左京大夫道雅 「おばあちゃん、何ボーっとしてるん?」 「べつに何でもあらへんえ。」 「嘘や。好きなひとのこと想ってたんやろ?」 「……何、言うてんの? 年寄りをからかうもんやあらへん。」 「孫のウチかて女や。そのくらい分かるわ。左京のおっちゃんやろ、あいてのひとは?」 「もう、ええんよ。あきらめたさかいに。」 「だめや、そんなん! 一度会って、ちゃんと直接想い伝えな、一生後悔するし!」 「そんな方法あらへん。」 「大丈夫、ウチが今から行って

《夜をこめて》嵯峨野小倉山荘色紙和歌k異聞~六十二の歌~

《夜をこめて》原作:清少納言 少納言、わしの指で戯れてみたいやろ、悦楽が欲しくはないのん…

渡良瀬 遥
4週間前
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《八重ちゃん、満開!》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十一の歌~

《八重ちゃん、満開!》原作:伊勢大輔 ♪さくら、さくら、やよひの空はくまなく晴れて……♪ …

渡良瀬 遥
4週間前

《黒の舟唄2》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十の歌~

《黒の舟唄2》原作:小式部内侍 「一緒に死んであげる。」 十八歳の小式部は大きな瞳をクリク…

渡良瀬 遥
1か月前

《Eine kleine Nachtmusic》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~五十九の歌~

《Eine kleine Nachtmusic》原作:赤染衛門 今夜、行くよ……、なんて、嘘。 いつまでも待っ…

渡良瀬 遥
1か月前
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《YINA》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~五十八の歌~

《YINA》原作:大弐三位 風が吹けば、ウチの心は笹原のようにざわめく。 それは貴方の呼ぶ…

渡良瀬 遥
1か月前
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《なんや、なんやて!?》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~五十七の歌

《なんや、なんやて!?》原作:紫式部 式部はんのこと、どう思うかて? あの方は才女、才媛さ…

渡良瀬 遥
1か月前
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《この世のほかの》~嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~五十六の歌

《この世のほかの》原作:和泉式部 「Ki~nnto~(公任)」 ……あかん、ウチもう黄泉帰りしそうや あんたはもてるさかい、今もどこかできれいな娘と一緒やろな……。 彼岸でも、もう二度と会えんでもええから 明日のウチの命日には必ず来てな、Ki~nnto~。 <承前>   定家は式子を抱きかかえたまま池から出て、庭の玉石を踏んだ。しずく がポタポタと定家の夏の直衣からしたたり落ちた。塗れて肌に張り付いた衣を透かして式子の白桃色の乳房を月明かりが照らす。乳首が固く凝って衣を