“習”に交われば赤くなる

“習”に交われば赤くなる
“シーチン”修一

【雀庵の「大戦序章」218/通算649 2023(令和5)年9/5/火】2001年末までの現役時代は、通勤の車内では新聞や本を読む人が多かったが、2003年あたりから携帯電話(ケータイ=今で言うガラパゴス携帯、ガラケー)が普及し始めて、高校生の次女が夢中になっていたポケベルが消えた。

記者&編集稼業の小生は昔から電話が嫌いで、アポイントを取るために電話は使うが、極力対面取材をするようにした。対面取材は、取材後の雑談で本音や裏話が聞ける良さがあるからだ。例えば「と、まあ、そういうことなんだけれどね・・・実は結構すったもんだで、納得しない人も随分多いのよ・・・」という話になったりする。そういう裏話を名前を伏せて書くと喜んでくれる読者もいて「マムシ」という有難い評価をいただいたり、情報を流して貰えたりした。

2001年9月11日の米国同時多発テロで、売上の7割を占めていた米国・中南米の航空会社のPRの仕事がなくなると、小生の会社はお先真っ暗。50歳では気力、体力が劣化しているし、銀行に追加融資を断られたから再起不可。生命保険を解約したりして借金を返し、懇意の他社に事業を移管し終えたのが2003年2月、ホッとしていたら胃に穴ができ始めていた。

摘出手術で9割ほど胃袋はなくなり、それ以降の1年間、転移が疑われるからと抗癌剤治療が続き、その副作用でフラフラだった。生きていながら死んでいる、死んでいるのに生きている、という状態。見かねたカミサンが「これでは死んだ方がマシ、延命より穏やかな成仏を!」と医者に抗癌剤治療を停止させて以降は、あら有難や、少しずつ気力、体力が改善していった。

どうにか体調が安定してきた2005年から2009年まで、九州の友人の世話でマーケティング(首都圏市場開拓)の仕事に就けたことも幸運だった・・・が、ガラケーを持たされたのには閉口した。「禍福はあなざえる縄の如し」、Oh my God! 大げさか?

米国では2008年あたりから高機能のスマートフォン(スマホ)が普及し始めたが、日本では2010年以降だ。それから13年、今やスマホは世界中の“現代人”の必携情報&コミュニケーションツールになっている。で、それまで200年ほど情報源だった活字メディアは急速に「お役御免」になっていった。

活字文化、読書、物書きが大好きで、会話、シャベリが苦手な小生は「悪貨は良貨を駆逐する」、人間の思考能力はどんどん劣化し、ロクなことにはならないだろう、と心配し、不安を覚える。夏彦翁の箴言を真似れば、
「文明・文化の発展というのはモノや技術の発展であり、人間そのものが成長するわけではない。知能の発達した人間と言えども、オギャアと生まれ、そのうち右往左往しながら人がましくなり、やがて親となり、孫を見ておしまい、その繰り返し。寄せては返す波の如し」

そうであるのなら活字メディアの衰退も時代の流れ、「なったら、ならぬ昔には戻れない」と諦観するしかないのだろうか? 確かに現状は厳しい。WIKIなどによると―― 
<全国紙とは全国向けにニュースを報じる新聞 。このうち首都に本社が置かれる新聞は中央紙ともいわれる。 全国紙は主に5紙で、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞の3大紙に、日本経済新聞、産経新聞を加えた5大紙が全国紙と称される。5大紙で日本の新聞の全発行部数の半分以上を占める>

ABC協会の「新聞発行社レポート 2022年下半期平均部数」によると読売663万部、朝日397万部、毎日185万部、日経168万部、産経99万部と部数減が続いている。“天下の読売”は2001年の1028万部をピークに2002年から部数減が始まった。他紙も概ね同様の下り坂だ。バブル崩壊後の1990年代から経済がパッとしないから企業が購読部数を減らしたこともあるだろうが、スマホに駆逐され始めたのである。

同じように週刊誌も下り坂になっていった。長い間「売れる雑誌は3Sとか10Sが大事」と言われ、Star、Sex、Scandal、Screen、Stage、Shoppingなどの記事が“売り”だったが、それも今やスマホで多分、楽しめるのだろう。出版界もジリ貧が10年以上続いている。

「行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたかは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」(方丈記)・・・諸行無常だなあ。

Wedge ONLINE 2023/8/30、中島恵氏(ジャーナリスト)の「処理水放出で日本への旅行キャンセルが広まる中国」から抜粋。

<東京電力福島第一原発が処理水の海洋放出を開始したことを受け、中国政府は日本に対して猛抗議している。中国外務省は「状況を把握していない」としているが、中国の電話番号から福島県の飲食店などをはじめ、日本全国の処理水とは無関係の施設に嫌がらせの電話が相次いでいることは事実であり、日中関係は急速に冷え込んでいる。

北京の日本大使館では、外出の際に日本語を大きな声で話さないなど、在留邦人に注意を呼び掛けているが、8月10日に解禁になったばかりの訪日団体旅行もキャンセルが相次いでいることがわかり、4年ぶりにようやく再開に漕ぎつけたかと思われたインバウンドにも影響がじわじわと広がり始めている。

【日本観光「熱望」が一気にしぼむ】中国メディアの報道によると、中国の旅行大手、携程集団(トリップ・ドットコム・グループ)や中国文化観光部が行った調査では、処理水放出が実施される前まで、9月の中秋節から国慶節にかけての大型連休(今年は9月29日~10月6日)の旅行先として検索ランキングの第1位は日本だった。

中国から日本への団体旅行客は1月のゼロコロナ終了後もなかなか解禁にならなかっただけに、8月11日に団体客の第1陣が来日したときには、日本でも大きく報道された。コロナ禍前、日本への中国人観光客は全外国人観光客の3分の1を占めていたため、観光業界では「爆買いが復活するか」と期待が高まっていた。

しかし、それからわずか2週間――。処理水の海洋放出が始まるとすぐ、中国での日本旅行に関する検索は急速に少なくなった。現地メディアは「日本への団体旅行を予定している人が多かったが、一部でキャンセルしたり、申し込みを見合わせたりする人が出始めている」と報道している。現時点で、一部の団体旅行は予定通り出発する可能性もまだ残されているが、全体としての訪日旅行熱は一気にしぼんだ格好だ・・・

【「空気」を変えられるのか】先行きはかなり不透明だ。まず、処理水放出問題にどのように決着をつけるのか、という課題がある。中国政府が国民の不満の捌け口として「日本」を利用し、この問題を外交カードとして使い続ければ、それをよいことに、国民の反日行動も続くだろう。

日本への迷惑電話をかけているのは、中国のごく一部の人々であり、中国中で行われているわけではないが、社会の「空気」が日本に対して否定的なものであり続ければ、多くの人々はその雰囲気を敏感に察知して、訪日旅行にも行かなくなる。無用なトラブルなどを起こさないためだ。

団体旅行がキャンセルになるだけでなく、個人旅行も「今は行かないほうが無難」という考えで、減少するだろう。中国政府が日本との関係を改善しようと動けば、国民の行動も収まるだろうが、対米問題、台湾有事、国内の経済悪化などの問題もあり、すぐに解決するとは考えにくい。

また、日本国内でも不穏な動きが起きている。東京都内の飲食店で、中国人に向けて「当店の食材はすべて福島県産です」という看板を出したことがSNSで物議を醸しており、その店の前で在日中国人が動画撮影などを行って、中国や日本のSNSで流している。こうした「目には目を」のようなことが増えていけば、さらに日中関係は悪化する。せっかく再開された団体旅行にも水を差すことになり、しばらくの間、海外旅行どころではなくなるだろう>(以上)

余計な話だが、外国人による物見遊山誘致に熱心な国は、基本的にこれという産業がない国である。売り物がない貧しい国は娼婦が外貨を稼いできた。米国、特に共和党政権は外国人観光客誘致にほとんど関心を持っていない。日本でも外国人観光客の誘致にはほとんど関心がなかった。海外旅行でどんどん円とドルをばら撒け!というのが基本方針だった。一流の国は皆そうだ。

中国人が大挙して日本へ観光旅行するようになったのは最近だが、それで儲けているのは在日の中国人や中国系企業ばかりで、日本の商店やホテル、旅行会社に落ちるカネは微々たるものだ。「中国人旅行者が来ないから大変だ」というのは在日の中国人や中国系企業だけだと小生は思っている。正直に言えば「中国人旅行者が来なくてもどうっていうことはない」。先進国は皆そう思っているのではないか? 習に交われば赤くなる・・・イタリアもウンザリしている。アカ好きんちゃんみたいな中島恵先生、気をつけて!

産経2023/9/3「花田紀凱の週刊誌ウオッチング:中国の処理水政治利用、反撃の妙案示した『新潮』櫻井コラム」はよかった。以下引用する。 

<福島第一原発の処理水放出問題。政治利用しか考えていない中国政府と、無知蒙昧な中国国民、まともに相手にする方がバカを見るだけだ。
各誌、取り上げているが、『週刊新潮』(9月7日号)、櫻井よしこさんが人気コラム「日本ルネッサンス」で、日本の取るべき態度を明快に指摘している【 】内は櫻井氏。

【松野博一官房長官は「丁寧に説明する」と語ったが、一体何を考えているのか。中国政府は福島のトリチウム処理水が極めて安全なことは百も承知の上で、政治的戦いを仕掛けているのである。今更丁寧に説明するなど、無意味だ・・・直ちに反撃することだ】。以下、櫻井さんは5項目にわたって具体的な反撃方法を。

【反撃の第一手は中国にホタテ貝を今後も売らないこと、サプライチェーンから中国を除外することである。わが国の農林水産物の中で輸出金額第1位はなんとホタテ。令和4年の実績で見ると中国向け輸出が全輸出量の8割、約10万3千トン、金額にして467億円。

だが、それら全てを中国人が消費するわけではない。日本のホタテは賃金の安い中国で殻から外され、主に冷凍貝柱として米欧諸国に再輸出されている。その最大消費国は米国】 ならば、この際、日本や他国で加工を行い、直接、アメリカや欧州に輸出すればいい。【結果として中国は雇用を喪失し貿易量も減る(中略)自業自得である】
以下、櫻井さんの挙げる4項目の反撃方法は実に具体的で、すぐにでも実行すべきだ。松野官房長官にもぜひお読みいただきたい>(以上)

明日にでも週刊新潮を買いに行かなければならないが、我が街の書店やキオスクはとっくの昔に消滅してしまったので隣町に行くしかないか? コンビニにはあるのか? 便利にならずに不便になるのが今どきの「文明文化の発展」か? 塩野七生先生曰く「逆襲される文明」。まったく「戦老爺」としては逆襲したい気分だ。体力がないし腰痛だから気分だけ・・・舌鋒戦ならぬネット言論戦でシコシコやり続けよう。先人曰く「置かれた場所で咲くべし」。
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