李克強“突然死”の奇々怪々

李克強“突然死”の奇々怪々
“シーチン”修一

【雀庵の「大戦序章」238/通算669 2023(令和5)年10/29/日】「光陰矢の如し、先生逝きて早三年、久交なんぞ馳せるが如し」・・・荷風散人は珠玉のような日本語を遺した。

人には表の顔と裏の顔がある。どんな英雄でも自宅では下男や奥さんから見れば「ただの老人」、褌一丁で盆栽の手入れなんぞしている。人格者として尊敬されていた叔父さん(小生の名付け親)は奥さん(叔母さん、我が母の姉、これまた人格者)によると「夜がしつこかった」という。閨房のことを女はそこまで喋るか!? それを17歳の小生に楽しそうに喋る我が母もイカレテル!? 荷風も一族や巷間では不道徳な奴と嫌われたり、嫉妬も買ったのだろう、巷間では罵倒されたりもした。山本夏彦翁曰く「美しければすべて良し」、作家は作品で評価されればいいと。

荷風の言う上記の「先生」とは森鴎外である。鴎外も尊敬されたり罵倒されたり散々だったが、毀誉褒貶の世間のアーダコーダにうんざりしていたのだろう、「墓には森林太郎とのみ刻むべし」と遺言を残したとか。有名になると大変だ。晩年には市井の無名の人で終わるというのも一つの良き選択肢だろうが、李克強氏のような有名人になると、それも難しいのかも知れない。

Bloomberg News 2023/10/28「中国・李克強前首相の突然死、習政権に突きつける新たなリスク」から抜粋する。
<中国の李克強前首相の突然死は、習近平国家主席に新たなリスクをもたらしている。習主席に次ぐ中国ナンバー2として10年間首相を務め、改革派として人気のあった李氏への市民の思いが、景気減速に対する不満に波及する恐れがあるからだ。

中国では不動産危機で多くの人が資産を減らし、若年層失業率は記録的高水準に達している。こうした中、習主席が外相と国防相を相次ぎ解任したことで、すでに政権の安定性には疑問が投げかけられている。

李氏の死去に乗じて反体制の声が広がれば、政情不安への懸念は一段と強まりかねない。中国市民は実際に過去、共産党指導者の死去をきっかけに党の権力掌握への抗議を示したことがある。

アジア・ソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマス研究員は「習氏は恐らく、追悼を率先して行うことで、李氏の死が政治的主張に利用される可能性を封じようとするだろう」と指摘。「李氏の死を利用して習体制に反対しようとする企てを押さえ込むための協調的な取り組みもあるだろう」と述べた。

中国外務省の毛寧報道官は10月27日の定例記者会見で、「突然の心臓発作による李克強前首相の悲劇的な死に深く哀悼の意を表する」と述べ、李氏の葬儀の段取りについては「しかるべき時に」発表されると説明した。

中国のインターネット上では李氏を悼む声が広がり、ソーシャルメディアの微博(ウェイボ)では訃報の閲覧回数が約13億回に上り、多くのユーザーがショックと悲しみを表していた。

アメリカン大学の歴史学者、ジョゼフ・トリジアン氏はX(旧ツイッター)への投稿で、中国指導部が直面する当面の課題は、李氏の遺族を満足させながら習政権の政治的アジェンダにも配慮しつつ、民衆の感情を煽らないような方法で李氏の死去を扱うことだと指摘した>(以上抜粋)

上記の記事のリードには「過去には周恩来氏や胡耀邦氏の死で抗議行動が活発化した。現在は不動産危機や若年層の失業などに社会不安の火種がある」としている。火種がどうなるのか小生は分からないが・・・28日(土曜)の午前9時頃の日本のネット新聞をチェックしたが、李克強氏急逝の記事は少なかった。考えてみれば新聞社も基本的に月~金までの週5日制で、土日の紙面は何やら女性や子供向けなのだろう。

現役記者時代、大手企業の広報担当者がこう言っていたのを思い出した(当時、大手紙は夕刊があった)。「不都合なことを発表せざるを得ない時は、金曜日の午後に記者会見をして公表した。それなら夕刊に載ってお仕舞だからね」。今なら金曜日の朝刊やネット版に載れば、とりあえず「公表した」ことになり、メディアも一応それで区切りになるから、その週の仕事は基本的にお仕舞になる。翌週からは締め切りの木・金曜日まで死にもの狂いの日々になり、前週のことは「もう済んだこと」になるのが普通なのだろう。

と言うことで李克強氏の死が公表された10月27日(金)の昼頃から日本メディアはネット版で報じたため“一件落着”?、翌10月28日の日本メディアネット版に派手さはなかった。以下、チェックしてみると――

【朝日新聞デジタル】 冨名腰隆記者の[日中関係支えた「リーコノミクス」李克強氏死去、日本経済界も衝撃]から:中国の李克強前首相の死去は、日本経済界にも驚きを持って受け止められた。今年3月まで10年間、中国経済の司令塔を担った李氏は、時間をかけて関係を築いた相手だったからだ。今や、習近平指導部に残る知日派はわずかで、日中の経済交流の先細りを加速しかねない。
「我々は李氏の日中協力への切実な期待を強く感じた。日中の友好交流、経済協力への多大な貢献に感謝する」。中国に進出する日本企業でつくる中国日本商会は27日、李氏への追悼文を公表し、李氏の日中経済関係での貢献をたたえた。(以上)

【毎日電子版】 李克強氏について全く記事なしで、河津啓介・中国総局長の「等身大の中国 処理水問題で見えた中国の「多様性」 反対する政府と一線画す声が半数超」で、こう報じていた。
[東京電力福島第1原発の処理水海洋放出が始まって2カ月が過ぎた。中国政府は反対を続け、日本産水産物の輸入全面停止を解除する気配はない。日中平和友好条約の締結から45年という節目に、両国関係は閉塞感が強まっている](以上)

【東京新聞WEB】も記事がないが、朝日、毎日、東京(中日)は巨大な「経済パートナー」の中共を責めるような記事は書かないようだ。いわゆる親中派とか「リベラル≒アカモドキ」の読者が多いから記者もそれに寄り添うというLoveLove、WinWin。朝日の記者は退職金をもらってから“右派”転向する人が多いそうだが、峯村健司氏が先鞭をつけたよう。大いに結構。(以上)

【読売新聞オンライン】は1本。[北京=比嘉清太「世渡り下手」の党エリート、「習氏一強」に翻弄され冷遇の最後…李克強氏死去]から:中国の李克強前首相は、かつて習近平国家主席と共産党最高指導者の後継を競ったエリートだった。しかし、その党キャリアの後半は、改革開放政策推進の原動力でもあった党の集団指導から習氏一強への転換に翻弄ほんろうされ、退任からわずか7か月後に急死するという結末となった。
李氏は26日、上海のプールで遊泳中に心臓発作を起こしたとの情報が伝えられている。真偽は不明だが、引退後も周到な警護下にあるという元党指導者が病院に緊急搬送されて亡くなったとすれば極めて異例だ・・・(以上)

読売新聞取材班の「中国『見えない侵略』を可視化する」(2021年、新潮新書)を読んでいると記者連中は習近平・中共が大嫌いである。しかし。読売の経営陣は無難な「中道」を良しとしており、記者の不満は随分膨らんでいたのではないか。1か月前あたりから読売の論調が「独裁許すまじ!」にガラッと変わり、小生は新たな同志を得た感じだ。

【日経WEB版】も李氏に関する記事はないが、「中国スパイ罪で6年服役、男性の警告 『長期駐在は危険』」と警鐘を鳴らしている。[アステラス製薬の現地法人幹部の日本人男性がスパイ容疑で中国当局に逮捕され、中国事業を手掛ける企業関係者や専門家など多方面で不安が広がっている。刑法のスパイ罪で懲役6年などの実刑判決を受けて服役し、2022年10月に出所、帰国した鈴木英司さん(元日中青年交流協会理事長)が日本経済新聞の取材に応じた。実体験をもとに教訓や、政府がすべき対策などを語った]

産経はネット版ではなかったが、小生が購読している本紙では「李克強前首相を悼む声相次ぐ 中国、統制強化も」、さらに以下の「李克強氏の死去で習近平氏の存在を強調 中国共産党機関紙の人民日報」を掲載している。
[【北京=三塚聖平】中国共産党機関紙、人民日報は28日付1面で、27日に死去した李克強前首相の訃報と遺影を掲載した。李氏の首相在任中の業績について、「習近平同志を核心とする党中央の力強い指導」の下で行われたものだと記した。習近平国家主席(党総書記)の存在感に加え、党内が一体であると内外に示した形だ。
共産党中央委員会と国務院(政府)などが連名で発表した訃告がそのまま掲載された。その中で、李氏について「人民、大衆への感情に満ちていた」と表現し、「人民、大衆の充実感、幸福感、安全感を絶えず高めた」と評価した。
今年3月の首相退任後について、「習近平同志を核心とする党中央の指導を断固として支持した」と強調した。李氏は習氏と距離があったと指摘されていたが、そうした見方を打ち消す意図があるとみられる。
人民日報が掲載した李氏の訃報は、2019年7月に死去した李鵬元首相とほぼ同様の扱いだった。昨年11月に江沢民元国家主席が死去した際には、官庁のホームページなどが追悼の意を示すため白黒の表示になったが、今回、そうした対応は取られていない](以上)

ここまで言ってイインカイ、産経は再び中共から追放されるか、あるいは拘束されて刑務所行きとか、「急な病気で頓死」とかになるのではないか。産経2021/11/16「私は追放された 元産経新聞北京特派員・柴田穂の回想」から。
<第1話 日曜朝の国外退去通告:中国の文化大革命のさなかの1967(昭和42)年、産経新聞の北京支局長だった柴田穂(みのる)記者が突然、国外退去処分となりました。柴田記者は文革を丹念に取材していたため、中国当局には都合が悪かったのです。柴田記者は平成4年に亡くなりましたが、帰国後に執筆した連載を再構成して、改めて「新聞の自由」について考えます>

プーチン・ロシアと同様に習近平・中共も都合が悪い人をどんどん抹殺している。彼らが一日永らえば民も世界も惨禍に苦しむ。リベラル≒アカが大好きな流行の「人道的見地」から早めの“駆除”が必要だ。
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