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スズメのバトルモード

 冬のスズメはふくよかで愛らしい姿をしています。朝の早い時間帯、よく日の当たる欄干に横一列になって並んでいました。場所取りで揉めることもありますが、とても微笑ましい光景にこちらの頬も緩みがち。

 八月を目前に控えたスズメは少し細身で精悍せいかんな顔立ちをしています。特に我が家の庭にくるスズメは精鋭揃いで争いごとが絶えません。早い時は五時頃にはチュンチュンとさえずっています。

 目指す理由に畑があります。今はトマトにキュウリ。それとナスを育てています。空いているところはスズメ専用の砂浴びの場所に、いつの間にかなっていました。初めて見た時は意味不明の丸い穴にびっくりしました。

 ある日、白いレースのカーテン越しに見る機会を得ます。
 スズメは穴に身を沈めて両方の羽で砂をすくい上げていました。少し後ろには別のスズメがいて、じっとしています。注意して見ていると、入れ代わりました。穴の再利用とは考えたものです。

 ここまでは和やかで殺伐としたイメージはありません。スズメが豹変ひょうへんするバトルモードは午前七時前後。庭にいた仏飯ぶっぱんを切っ掛けにして始まります。
 以前、我が家では仏飯を食べずにゴミとして捨てていました。さすがに勿体もったいないと思い直し、鳥のエサとして利用することにしました。

 大抵、チュンチュンと鳴いている時は相手を威嚇いかくしています。庭木の枝に止まり、下で食べているスズメに向かって鳴き続けます。無言の抵抗で居座ると、飛んでいって蹴とばそうとします。実力行使です。
 体当たりに近い攻撃もあって直撃しますと、踏ん張ることができなくて綿ごみのように吹っ飛ばされます。仰向けに転がってジタバタするところを何回も見ました。その姿が可愛らしくて、もう一回、と心の中で飛び蹴りをリクエストしたこともありました。

 一番手のスズメは安全です。他から威嚇されることがないので黙々と食べます。私が見ている限り、一回も鳴きませんでした。
 元が仏飯なのでちゃんと砕けていなくてかたまりになっていることが多々あります。見つけたスズメは、その場では食べません。横取りを恐れているのでしょう。くわえて早々に飛び去りました。

 朝、目覚めた時、チュンチュンとスズメが鳴いていたとします。それは生存競争を賭けたバトルモードなのかもしれません。
 行動は過激でも、やはりスズメは可愛いです。

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