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誓われた呪い

「永遠の誓い」「男女の契り」「薬指の約束」

世の中には、実に沢山の愛の誓約を表現する言葉が存在する。

呼ばれ方もこの通り様々だ。

きっとこれまで数えきれないほどの人々がこの誓約を交わし、自身の愛情を相手に表現してきたのだろう。

日本語において、愛する男女の約束を表現したキャッチコピーは計り知れない量がある。

今回は、そんな「誓い」に関するお話。



ある日、僕はDMで一人の女の子の相談に乗っていた。

言い分はこうだ。

・最近彼氏が私を振った

・付き合った際、彼は私に「永遠を誓う」と伝えた

・私は30歳を過ぎ、これが最後の恋だと期待して全力を注いだ

・結果、1年の交際の末、彼から別れを告げられてしまった。

・とても恨めしい。一度誓った愛を放り投げるなんて認められない。毎日彼を思い出しては苛立ちがおさまらない。


実によくあるケースだと思った。口説き言葉から別れ方までどこにでもありふれている。

唯一、一般的でないのはこの終わった恋愛に対する彼女の執着心。

その根本に根差すものは何だろう。

年齢による焦り?それともプライドを傷つけられた哀しみからだろうか。 

違う。


彼女は根本的に言葉の解釈を間違えている。



この女性のように、男女間の永遠の誓いを「誓約」ではなく「保証」だと勘違いする人がたまにいる。

誓約はよく言えば意思の表明、悪く言えば努力目標に過ぎない。

保証は、意思も努力も関係ない。保証した事項の履行義務を負うということ。

双方の違いは辞書で引く限り上記のように限りなく明確だが、往々にして人はこれを勘違いする。

その男性がこの女性を口説いた際、男性は「永遠に貴方が好きだ」とだとかきっと口にしただろう。

それは言い換えれば、「貴方を永遠に好きでいるように努力します」の意図であり、

決して「貴方と結婚し、貴方の生活を支え、貴方と一生を共にする契約をします」の意図ではない。

今回の相談者の女性のように、これを勘違いすると「自分にしか見えない契約」がそこに発生することになり、その後のやり取りでも相手の男性をいついかなる時も精神的に縛り続けただろう。

※何が厄介ってこの一方的な見えない契約は、どうやら人に無意識の厚かましさを与えるようだ。契約の存在が相手に認知されていないのにも関わらず一方的な勘違いに過ぎないその契約を前提とした振る舞いを女性に許す。凶悪極まりない。※


「永遠の誓い」だなんて表現すればロマンチックだが、それが今回のように片方が勘違いすると一変し、「誓い」がもはや「呪い」になる。

男性はその呪いの重さに耐えきれなかったのだろう。

僕は彼女からの相談を聞きながら、その呪いの影を確かに感じた。



もしこの文章を読んでいる人の中で、現在恋愛をしている人、誓いを済ませた人がいたら自分に問いかけて欲しい。

貴方と貴方の恋人との誓いは、「誓い」ですか?

知らないうちに恋人を縛り、「呪い」になってませんか?


自分ではなかなか気づかないはずだ。

誓いと呪いは、姿は同じ。

ただ呼び方が違うだけなのだから。


一度見直してみてね。



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