星を追った日
10分台本。
リリナ:女、辺境惑星調査任務帰り。中継母艦ルーメンへ帰艦中。
ルクス:不問。ちょっと男っぽい。中継母艦ルーメンの艦長。まあ、でも中継母艦ルーメンはルクス1人で操船できる中型艦である。リリナの上司。
キラキ:女、ハッピーラッキー号にて遭難中。通信を飛ばす。今回は台詞少ないので兼ね役推奨。まあ、全体時間が短いから、何でも良いですけれど。
リリナ:……こちら、1-8(イチハチ)号機。惑星地質サンプル、および調査ドローンの記録回収に成功。中継母艦へ帰艦します。
ルクス:……こちら、中継母艦ルーメン。了解した。デブリに気を付けて帰って来ーい。
リリナ:なに? デブリ群でも流れて来てるの?
ルクス:いんや、別に。
リリナ:……ルクスが過保護なだけってことね。
ルクス:いや、過保護って程じゃないだろっ。普通に、テンプレの文言だって。
リリナ:はいはい、気を付けて帰るねーお母さーん。
ルクス:おーい、誰がお母さんだっつの!
リリナ:ほい、通信終了。
ルクス:あっ、てめっ!
リリナ:ふー……距離はあったけど、大したこと無かったなぁ。……ん、通信? いや……はぁ……なに?
ルクス:なに、じゃねぇ。勝手に切りやがって、この野郎。
リリナ:別に良いじゃん……もう、用事は無いでしょー。
ルクス:無いっ。けど、暇なんすよ。
リリナ:おーい。これ、仕事用の回線ですけどー?
ルクス:大丈夫だって。バレないバレない。
リリナ:えー、巻き込まないでよ。怒られたらどうすんの。
ルクス:うーん、じゃあ……中継母艦ルーメンより、通信試験を求める。十分な試験データが得られるまで通信を維持されたしっ。
リリナ:はい、職権濫用。
ルクス:職権を行使してるだけだ。
リリナ:はぁ……りょーかい。1-8(イチハチ)号機、通信試験を開始します。
ルクス:よろしい。
リリナ:なんで仕事終わりに、暇人の相手しないといけないんだか。
ルクス:おいっ、上司だぞっ。
リリナ:こんなのが上司なのかぁ。
ルクス:職権を行使して、お前の今期評価を下げます。
リリナ:クソボケー、とっても聡明で良い上司ー、いぇーい!
ルクス:おぉいっ! 頭にクソボケーってつけて、誤魔化せる訳無いだろがっ!
リリナ:いや、クソボケーってのは、私の地元では、超カッコいいって意味なんで。
ルクス:だとしても、共通語じゃ、クソボケーって意味なんだよっ。
リリナ:へー。勉強になるー。
ルクス:はははー、マジで減給してやりてー。
リリナ:言って無かったけど、この通信は記録されています。
ルクス:……と、ここまでは冗談だってのは、お分かりですよねー?
リリナ:あははー、それは第三者が決めます。
ルクス:……ごめんね。
リリナ:いや、謝らないでよ。大丈夫、冗談ですよ、一部。
ルクス:全部っ、全部だから!
リリナ:……まあね。
ルクス:くっ……ずっと不利だっ。
リリナ:……で、なんか話題とかあるの?
ルクス:あ、あぁ、話題……えーと、どんくらいで着く?
リリナ:なにそれ。
ルクス:いや、いったんね。
リリナ:えーと……3日と11時間ちょい。いまは、ナビに3日と11時間20分って出てる。
ルクス:あれ、思ったより早いな。5日くらいだと思ってたわ。
リリナ:スムーズに行けばこんくらいなんじゃない?
ルクス:なーんか……ステーションジャンクションの渋滞みたいな話だな。
リリナ:単に障害物を避けないといけないかどうかでしょ。
ルクス:そうなんだけど……まあ、でも、スムーズに戻れそうで良かったじゃん。、
リリナ:そうだねぇ……ん?
ルクス:お? どした? 到着時間が2倍にでもなったか?
リリナ:いや、そんな極端なこと起きないって……ちょっと、信号をキャッチしたみたい。
ルクス:信号か……タイプは?
リリナ:……救難。
ルクス:うげぇ……めんどいの拾ったな。
リリナ:……これも記録されるんだよね?
ルクス:はぁい、当社のドライブレコーダーは、キャッチした信号ログも記録され、自由に参照出来ますぅー。
リリナ:営業口調やめい……あーあ、ちょっと音声信号だから、聴いてくる。いったん保留しまーす。
ルクス:へーい。
リリナ:……あんまり、面倒な内容じゃなきゃいいなぁ。
キラキ:……メーデー、メーデーッ! えっと、誰か、聞こえますか!? 何かが船に衝突して、計器とかエンジンが……あぁ……どうしよう……火災はして無いですけど、あのっ……えぇと……ダメだ、落ち着いて……落ち着かなきゃ……何を伝えないといけないのか……考えて……っ!
リリナ:あぁ……まっずいの拾ったー……。
キラキ:とにかく、エンジンが動かないっ、あとっ、スラスターとか……あぁ、コクピットの画面表記が、少し壊れたみたい……同期が取れない……嘘でしょ……。
リリナ:可哀想に、テンパってる……そりゃそうだよなぁ。でー、えっと、これの発信時間ログは……うわ、バグってる。
キラキ:すぅーっ、はぁーっ……しっかり、しないと……メーデーメーデー、こちら、ハッピーラッキー号。ただ今、遭難中。エンジン故障により、推進力を、失っております。至急、救助願います……助けて下さいっ!
リリナ:ハッピーラッキー……ふふっ、アンラッキーじゃんか。……あー、もしもし?
ルクス:あーい。どうだったー?
リリナ:いやぁ……やばそう。
ルクス:うわぁー、どんまい。
リリナ:うるさい。
ルクス:で、どうする? 見に行くんか? それとも一回帰って来るか?
リリナ:んー……あれ、救助隊への連絡ってさぁ……。
ルクス:中継母艦の停泊地から、少なくとも3〜5日くらい進まないと、銀河系の主要回線にはアクセス出来ないな。
リリナ:だよねぇ……これは個人回線だもんなぁ。
ルクス:しゃーない、こんな辺境に駆り出されてんだから。
リリナ:……何しに来て遭難してんだろ、ハッピーラッキー号は。
ルクス:あ? ハッピーラッキー?
リリナ:あー、救難信号出してる船の名前。エンジン故障で、動かないんだって。
ルクス:……いや、アンラッキーじゃん。
リリナ:ふふっ……それは思った。
ルクス:ははっ……で、相互通信は出来たんか?
リリナ:いや、音声ログをキャッチ出来ただけ。
ルクス:電気系統やばいのかな。ログのタイムスタンプは?
リリナ:バグってて不明。
ルクス:うぇー、それじゃあ大昔のかもしんねーじゃん。
リリナ:音声的には、最近のっぽいけど……数年前とかは、あり得そうかもね。
ルクス:じゃあ、信号キャッチした座標だけ記録しといて、後日救助隊に報告するでいいんじゃね? それくらいで救難信号への対応義務は、果たせるだろ。
リリナ:……まあ、ね。
ルクス:……リリナ、お前、チラ見しに行こうとしてんな?
リリナ:ぎ、く、う。
ルクス:何だその反応……。やめとけって、無駄足になるだけだぞ。
リリナ:……まあねぇ。
キラキM:メーデー、メーデーッ! えっと、誰か、聞こえますか!? 何かが船に衝突して、計器とかエンジンが……あぁ……どうしようっ。
リリナ:うん……どうしようかなぁ。
ルクス:なんで迷ってるんだ……いや、もしお前まで、なんかトラブルで動けなくなったらどうすんだよ?
リリナ:……あれじゃん、ルクスがさ、今から救助隊へ通信しに行ってくれれば良く無い?
ルクス:はぁ? お前が帰ってくる距離長くなるじゃん。燃料が保た無いだろ。
リリナ:いやぁ、そっちが戻ってきてくれれば良いじゃん。
ルクス:はぁー? 救難隊に連絡した後にぃ?
リリナ:そう。
ルクス:嫌だよ、面倒くさい。
リリナ:なるほど、私を見殺しにすると。
ルクス:うぉーいっ、お前がハッピーラッキー探しに行くのは決定なんかーい!
リリナ:いや……まぁ。
キラキM:えぇと……ダメだ、落ち着いて……落ち着かなきゃ……何を伝えないといけないのか……考えて……っ!
リリナ:……放っておけないじゃん。
ルクス:はぁー?
リリナ:いや、可哀想なんだよっ、聴けば分かんのっ!
ルクス:……そーかい。はぁ……お前の今の座標と、音声ログの送れる情報だけ、送ってくれ。
リリナ:わー、ルクスかっこいー。
ルクス:いや、心の底から思えよ? あと、お前も出来るだけ、こっちに通信飛ばしとけよ。もし追えなくなったら困るから。
リリナ:うん、分かってる。
ルクス:……お前、あんまり深追いすんなよ? ミイラ取りがミイラになるなんてこと……宇宙じゃデブリの数ほどあるんだから。
リリナ:……知ってるよ。大丈夫。馬鹿なことはしないって。
ルクス:……どうだか。
リリナ:いやいや、信用無いなぁ。
ルクス:こんなことしようとしてる時点で、んなもん無いわ。
リリナ:ふふっ、確かに。
ルクス:……なるべく早く戻って来るからな。お前も深宇宙まで行かないようにな。
リリナ:そんなとこ行かんわ……ありがとうね。
ルクス:はぁ……じゃあ、ハッピーでラッキーなことを祈るよ。
リリナ:いやぁ、ありがたいけど……それが今、遭難中なんだよなぁ。
ルクス:ははっ、じゃあな。通信終了。
リリナ:はーい。……さて、と。
キラキM:……助けて下さいっ!
リリナ:……星を探しに、行きますか。
▫️救難ラジオ『ハッピーラッキー』へ、つづく。
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