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カナダ格闘技修行。GSPのジムで練習すれば強くなれると思ってたときの話②

(前回の記事はこちら)

ジムに到着。初日からまさかの宿無しフラグ。

バスに揺られて約3時間。ようやくジムに到着しました。本来なら30分ほどで到着する距離でしたが、地図もネットもなかったため、予想以上に時間がかかってしまいました。

お伝えし忘れていましたが、当初「トライスターにおいでよ。」と言ってくれた赤沢さんはカナダにはいませんでした。ビザの関係か何かで東京?にいることになっていて、まさかの入れ違いになっていました。カナダに着いたときには、知り合いは誰もいない状況でした。赤沢さん!笑

到着すると、目の前には想像以上に大きな施設がありました。ここで1か月間の修行が始まるんだと、緊張と興奮の二つをもってジムの受付に行きました。元気の良さと礼儀正しさだけは忘れまいと、日本からの手土産とともに大きな声で挨拶しました。

俺「ハロー!YUKI(赤沢さん)の後輩のジョージです。今日から1か月よろしくお願いします!」

受付の人「・・・?」

受付の人は、どうやら僕が来ることを把握していなかったようでした。僕はビジター会員として1か月分の会費を支払いました。その後、泊まるところに移動して荷物を置きたいと伝えると、宿泊スペースの「ドーム」と呼ばれるところに連れて行っていただきました。そこにはトライスター所属の選手が寝泊まりをしていました。今日からここが自分の部屋か。僕は部屋のみんなに挨拶をして、やっと落ち着けると思ったのか、時差ボケもあったのか、寝落ちしてしまいました。

目を覚ますと、「ドーム」のオーナーのかたがいらっしゃっていました。嫌な予感がしたので一旦いないふりをしましたが、見つかってしまいました。やはり予感は的中。月で数万円分の宿泊費がかかると言われました。あれ?タダじゃない・・・

『稽古代も宿泊代もかからないように言っておくよ!』

あの言葉が頭を10回ほどよぎりました。
(詳しくは前回の記事を読んでください)

ジムの会費と宿泊代はかからない想定だったので、この時点でお金は足りなくなる寸前でした。貧乏大学生だった僕は、どんなベッドでもいいから泊まらせてください。ジムの掃除もします。というのを必死に伝えました。優しいオーナーは、掃除をする約束をしたら値引いてくれて、なんとか宿泊場所を確保しました。その後観光や外食もほとんどせず、毎日作り置きのカレーを食べてしのぎました。笑

早速始まった練習。カナダに来れば強くなれると思ってた。

移動の疲れをしっかりとって、さっそく練習に参加させていただきました。1週間のスケジュールでは、火曜と木曜に16オンスグローブとフル装備をつけてガチスパー、それ以外はグラップリングや打撃、フィジカルトレを幅広くすることができました。ジムには当時UFCファイターだったローリーマクドナルドを筆頭に、テレビで観たことのあるメンバーが沢山いました。スパーリングの日には、そんなメンバーが40名くらい集まっていました。素晴らしく整った環境だと感じました。

初めて参加したグラップリングの中級クラス。基本的なことを何も知らない自分は、途中で初級クラスに移動させられてしまいました。

そして悔しい思いのまま迎えた火曜ガチスパー。ここで爪痕を残さないと生き残れないと思った自分は、プロ選手相手に開始早々フルパワーで突っ込んでいきました。結果、返り討ちにあいました。

その後のスパーでは、KOもされました。その後も挑んではやられ、挑んではやられを繰り返していきました。毎日たくさんやられました。そうして、あっという間に最終日を迎えました。あれ、俺って強くなったのかな。

海外に行けば強くなるわけではないし、東京に行けば強くなるわけではない。

自分が強くなれなかった理由は大きく2つあったと当時の自分は考えました。(当時のメモを見ながら書いています。)

1つ目の理由は「何ができないかすら分からない状態だったこと」です。ジムにいる選手からすれば当たり前のことでも、当時の自分にとっては当たり前ではありませんでした。先述の通り、火曜と木曜にガチスパーがありました。火曜にやられた相手を木曜にやっつけるためにどうしようか考えるのですが、引き出しがないので良い案が思いつかない。仲間にアドバイスをもらうのですが、それを咀嚼して飲み込めるだけの受け皿もない、という状態でした。

2つ目の理由は「明確な強みがわかっていなかったこと」です。なんとなく打撃かなというのは分かっていたのですが、明確な武器は分かっていませんでした。磨くべき牙を知らないでいると、自分が何をすれば倒せるのか、どこにもっていけば勝てるのか、というのが分からないなと思いました。

この2つは、地方から上京をして潰れちゃう人によく当てはまるんじゃないかなと思ってます。東京に来たからって強くなれない。ではなんで自分は東京に来たのか。トライブに入門することを決めたのか。これはまた今度書きます!

嬉しい悲しいGSPとのセルフィ。

練習の最終日、ずっと声をかけたかったGSPと話すことができました。GSPは他の選手といつも同じ目線でいるような謙虚な人でした。高級車に乗らず、ブランドで着飾ったりも一切せず、普通の一般練習生のような格好で、いつもジムに来ていました。そんなGSPに、コーチに怒られないように気を付けながら、満を持してセルフィをお願いしてみました。快くOKをしてくれました。

めちゃくちゃ嬉しくて、その後何回も写真を見返しました。けど、少ししてから悲しいような気持ちになりました。有名人と撮った写真を持って、強くなった「気がしている」だけの男がこのまま日本に帰る。そう考えるととても悔しかったです。1ヶ月GSPのジムで練習すれば、超人的に強くなれると思ってました。理想と現実は違いました。だけど、ここでの経験がなければ上京してトライブに所属していなかったかもしれません。ずっと地元にいてお山の大将で終わってかもしれない。

全部が必要なものだったと思っているし、初めての海外で、ひとりで1か月間生き抜いた経験は、自分にとっての自信につながりました。このときくらいから、できると自分にハッタリをかけてトライしてみるという考え方が、自分の身に染みついてきてました。これからも自分にハッタリをかけてどんどん挑戦していきたいなと思います。

p.s.余裕をもって持ってきたはずの所持金は、帰国時に1万円もないくらいでした。生きて帰ってこれてよかったなあ。笑

次の記事では、「ただのタイ旅行だと思ってたら、なぜかムエタイの試合をしてたときの話」を書こうと思います。


読んでいただきありがとうございました!

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