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青春はらすめんと シロクマ文芸部

子どもの日だからって、浮かれる歳でもない。
高校生だからって、みんながみんな青春しているわけでもない。

まして、今年は受験生。入試の日まで、1年切っている。
夢の影すら見あたらないまま、リタイヤの許されぬ登山はすでにはじまっていた。なんのためにがんばっているのか、わからなさすぎて笑える。

息苦しい毎日の清涼剤は、塾だ。
もちろん口やかましく暑苦しい講師などではなく、他校の女子生徒。
いちど僕のスマホを拾ってくれたことがあり、なんとなく言葉を交わすようになった。

送迎バスで彼女の後ろ姿を見守るのが、癒やし。
我ながらジジくさいのか青いのか不明だが、とにかくなごむ。
天使の輪って、現実に存在するんだよな。

彼女が立ち上がったとき、はっとした。
あわてて追いかけ、いきおいで僕はバスを降りてしまう。
無情にも走り去る車体を横目に、彼女に忘れ物を差し出した。

「ありがと。トラップしかけといたんだ。安東くんに拾ってもらおうって」
ピリッと刺激的な制汗スプレーの、粉っぽい香り。
これこそ青春ハラスメント、アオハラだ。

(おわり)

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