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小鳥カフェ トリコヤ ⒋小鳥撮影会 連載恋愛小説

いくら特定の人と顔を合わせづらくても、毎月恒例のイベントは決行するしかない。
お店を2時間貸し切っての撮影会だ。
一般客に紛れて一眼レフを構えている人物の腕を、かの子は引っぱった。
「なんで先生が申し込んでんの」
「え?腕を上げたいからだけど。参加費も払ったし、なんの問題が?」
思わず素のため息が出た。

***

夏目祐は本部と契約している獣医師だ。
小鳥カフェはフランチャイズのため運営面でいろいろとサポートがあり、獣医の手配はその一環である。
彼はただの関係者ではなく、かの子とつかのま交際していた。

向こうから告白されて始めた関係だったが、好きになれない、という身もフタもない理由で振った相手。
カラッとした性格で、別れたあとも友人みたいに普通に話せる。
それでも、気まずいものは気まずい。

「かの子も講師の話、ちゃんと聞いとけー?写真ド下手なんだから」
ウルサイ、と小声で話していたら、佐東創史そうしと目が合った。
そのまま何を言うでもなく目線がはずれたので、気のせいだったのかもしれない。

***

被写体の良さを活かす数々のテクニックを伝授されたが、レベルがけた違いでとてもついていけない。
当たり前だが、小鳥たちはすばしこく動くので、ブレる。
ごくごく初歩のアドバイスが欲しい。
でも、小鳥クラスタ写真部の皆さんの盛り上がりはうれしくて、限定の南国フルーツサンド(マンゴー&バナナ)を配ったりして、かの子は裏方に徹した。

写真講座のあとのお茶会を立食形式にしたのは、正解だった。
参加者同士が自然に交流していて、いい雰囲気。
イベントレポを発信してもらっているので、お店の公式SNSがちょっとばかり残念な見ためでも、他力本願できるというものだ。

(つづく)



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