見出し画像

気象予報士試験 学科 一般 大気

小倉先生の「一般気象学」では、まず初めに太陽について解説されていますが、太陽自体の出題は極めて稀なので省略します。

気象現象を引き起こす大気について出題されています。
本日打ち上げのロケットは対流圏から出ることはありませんでした。次回に期待しています。技術者の皆様、応援しています。
さて、気象予報士試験では大気の項目で地上から宇宙空間の手前までの現象について出題されます。

頻出項目の一つに大気の組成があります。
地球には水蒸気が1〜4%程度あります。最も水蒸気の多いのは気温の高い熱帯地方です。
空気の中に含まれる水蒸気量は「空気の温度」に比例します・・・ここ重要!!
従って、気温の高い熱帯地方の空気が水蒸気が多く(4%程度)、気温が低い冬半球の極地方が水蒸気が少なくなります(1%程度)。

大気の中で地方によって含有量が変わる水蒸気を除いた乾燥空気の組成は、高度80kmの中間圏界面(地上から中間圏まで)まではほぼ一定です。
組成について多い順に並べると
①窒素・・・・・78%
②酸素・・・・・21%
③アルゴン・・・0.9%
  となっていて、この3元素で99.9%を占めています。

地球温暖化を招く二酸化炭素の割合は、0.038% です。👈稀に出題されます。

学科試験で問われる 温暖化を引き起こす気体として
「メタン」や「一酸化二窒素」が挙げられますが、乾燥空気に占める体積比では、
メタン・・・・0.00014%. 程度であり、二酸化炭素の約271分の1です。
一酸化二窒素・・・0.00005% 程度であり、二酸化炭素の約760分の1です。

温室効果はメタンは二酸化炭素の24.5倍です。
一酸化二窒素は320倍もあります。この数字も覚えておくと良いです。稀に出題されています。

(参考)一酸化二窒素とは。
成層圏オゾンの破壊物質とも言われています。
一酸化二窒素は、約半分が海洋、森林、サバンナという自然発生源を由来とし、残りの約半分は肥料(窒素肥料)、家畜からの堆肥製造、バイオマス燃料の使用など。
自然由来では、自然の土壌から5.6%(4.9~6.5) 海洋から3.4%(2.5~4.3) の順に大きく
人為的なものの由来では、農業3.8%(2.5~5.8) 化石燃料・工業 1.0%(1.0~1.1)
バイオマス燃焼0.6%(0.5~0.8) となっています。この数字は国立環境研究所のウェブサイトから引用しました。

https://www.nies.go.jp/whatsnew/jqjm1000000pt51h-img/jqjm1000000pt5p8.png

国立研究開発法人 国立環境研究所ウェブサイト

🟢大気の組成の比較(金星・火星と地球)

地球の大気(原始大気)はもともと「水素」と「ヘリウム」でしたが、太陽風により吹き飛ばされた後に、地球内部から放出された気体でできたとされています。

同じ地球型惑星とされる「金星」と「火星」の大気組成は「地球」と大きく異なります。
金星および火星
 二酸化炭素 約95%以上
 窒素    2~3%     金星と火星では大気はほぼ二酸化炭素で占められています。

地球は窒素が78%、酸素21%。この空気の割合などが出題されています。

大気の構造
🟢対流圏 troposphere
地上から概ね11km上空付近までを指します。気象現象のほとんどが出現する空間です。水蒸気の大半はこの対流圏にあります。
対流圏では平均して100mごとに0.65℃の気温の低下があります。対流圏では地上付近が最も気温が高くなります。これは太陽からの熱を吸収できるのが地表や海洋であり、太陽からの熱で温められた地表や海洋からの熱伝導で空気が温められるからです。高い山に登ったら地上よりも寒いというのはこのためです。

🟢対流圏界面 tropopause
対流圏と成層圏の境目にあるところです。成層圏では上空に行くにつれ気温が上昇します(対流圏と反対です)。対流圏と成層圏の境目では、高度が上昇しても気温の上昇が緩やかか全くない状態となっています。地上から上昇してきた空気はこの対流圏界面で上昇が止まります。対流圏界面の高度は一般的には、赤道付近で最も高く、両極の上空では低くなります。空気の熱力学で学習しますが、暖かい空気は膨張して体積が大きくなります。地上は空気が膨張しても空気によって押し潰されないので、膨張した空気は上空に向かって広がっていきます。他方、冷たい空気は堆積が縮小するので、高度が低くなります。
赤道付近の対流圏界面高度は約18km。極上空では約8km。

🟢成層圏 stratosphere
対流圏界面より上空で、高度約50km付近までを指します。この空間では高度の上昇とともに気温も上昇します。乾燥大気の組成はほぼ対流圏と同じです。高度ともに気温が上昇するので安定した気層です。成層圏が高度上昇とともに暖かくなるのは「オゾン」が関係しています。
この成層圏内の上空約25kmあたりにオゾン濃度が高い層があります。「オゾン層」とよんでいます。オゾンは太陽からの有害な紫外線を吸収してくれますので、地上の生物にとって有害な紫外線が地上に到達しない役割を担っています。
オゾンは赤道上空で紫外線を吸収した酸素分子が光解離をして酸素原子となり、この酸素原子が酸素分子と再結合することで発生します。
『大気中のオゾンは成層圏(約10~50km上空)に約90%存在しており、このオゾンの多い層を一般的に オゾン層といいます。成層圏オゾンは、太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護しています。 また成層圏オゾンは、紫外線を吸収するため成層圏の大気を暖める効果があり、地球の気候の形成に大きく関わっています。
 上空に存在するオゾンを地上に集めて0℃に換算すると約3ミリメートル程度の厚さにしかなりません。 このように少ない量のオゾンが有害な紫外線を防いでいます。』『』内は気象庁ウェブサイトから引用。https://www.data.jma.go.jp/env/ozonehp/3-10ozone.html

頻出事項として、
「成層圏で最も気温が高いのは「オゾン層」である」という記述の正誤問題があります。上述の通り、オゾン層は上空約25km。成層圏では、後述する成層圏界面付近が最も気温が高くなるので誤りを選択しなければなりません。

🟢成層圏界面 stratosphere
成層圏は上空に行くについて気温が上昇する気層でした。高度約50km(約1hPa)付近では気温の上昇が緩やかになり気温が高度が上がっても一定となります。
この気温が高度によって変化しない気層付近を成層圏界面と言います。
成層圏界面付近では気温が極大となります。オゾン濃度は下層の高度約25km付近ですが、高度50kmでは紫外線の強度が強く、空気分子が受け取るエネルギー量は大きいということによります。

🟢中間圏 mesosphere
成層圏界面(約50km)よりも上空の大気で気温が高度とともに低下する気層を中間圏といいます。乾燥空気の組成はこの中間圏まではほぼ同じです(👈この項目頻出項目)。中間圏では高度約80km付近で気温の低下が緩やかになります。この高度約80km付近を中間圏界面と言います。
中間圏までの大気の動きは一般知識としてよく出題されます。1月または7月の中層大気の動き(偏西風、偏東風)について別の単元で学習します。

🟢中間圏界面 mesopause
中間圏を上層に向かうと気温減率が次第に小さくなるところがあります。急激に気温減率が減少する付近が中間圏界面です。中間圏界面よりも上空は熱圏という層になります。中間圏界面の高度は約80km。この数字はよく出題されるので覚えておきましょう。

🟢熱圏 therrmosphere
中間圏界面よりも上空では次第に気温が上昇します。この気層を熱圏といいます。熱圏の範囲は上空約80kmから約700kmくらいまでとなります。空気組成も熱圏では酸素原子の占める割合が多くなります。上空約500km以上になると水素原子が主成分となります。
熱圏では酸素・窒素の分子が紫外線を吸収して温度が高くなります。
熱圏では空気が希薄であるため紫外線で温められる空気量が少ないために、太陽エネルギーの影響を受けやすく、気温の変化は大きいです。
熱圏では例えば高度600km付近では1000℃〜2000℃に達していると言われていますが、空気の分子のエネルギー量から計算したものなので、熱圏を移動する人工衛星がこの熱で溶けてしまうことはありません。空気分子の運動エネルギーは大きいのですが、空気分子そのものが少ないので熱い!ということはありません。オーロラが出現するのもこの熱圏です。また、低軌道衛星や国際宇宙ステーションの飛行高度も熱圏になります。気象予報で使用する極軌道衛星も熱圏を移動します。赤道上空の静止気象衛星(ひまわり)は熱圏上端よりも遥かに高い高度にいます。
また、熱圏には、電離層があります。無線通信の際に利用する層です。
電離層では自由電子やイオンの濃度が高く、D、E、F層などが有名です。

🟢デリンジャー現象
太陽フレアの影響で電離層(D層)内の電子密度が増加し長距離短波通信ができなくなる現象を「デリンジャー現象」といいます。このデリンジャー現象は何度か出題されています。

(コラム)気圧と高度
専門知識や実技試験では、高度を示すのにメートル、キロメートルの代わりに気圧の値を使用することがあります。
高度約5.5km(約500hPa面)では気圧は約半分となります。(地上波1013hPaですから半分ですね)。
成層圏界面(高度約50km)の気圧は上述の通り1hPaです。地上の気圧の1000分の1になるということです。

気象庁ウェブサイトから引用

気象庁ウェブサイトによると、高度15kmごとに気圧は10分の1になると解説されています。大気のほぼ90%は15km以下に存在します。(👈類題が過去出題されています)

過去問はまた別の機会に。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?