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ビジネス法務・2024年2月号

あけましておめでとうございます。

今回は2024年最初の「ビジネス法務」(2024年・2月号)の紹介をします。

【特集1】類型別整理から社内連携まで 業務提携契約の総チェック

2024年2月号の特集1は「業務提携契約」に関する解説です。

私の勤務先は自社製品開発だけでなく、他社とのOEM契約や販売代理店契約を結ぶことでビジネスを展開しているため、法務部として取り扱う契約業務のうち、業務委託契約と業務提携契約の2つが最も重要な契約類型となっています。

業務提携契約は、業務委託契約以上に取引の具体的な内容が多種多様です。非典型契約であるため民法の教科書での解説もほとんどないうえ、実務の解説書も少ない契約類型です。

そのため、事業部から業務提携の施策の相談を受けた際、私もスクラッチから契約書を作ることが多かったのです。

今回の「業務提携契約の総チェック」特集は、多様な「業務提携契約」を実務に照らして①「販売」提携(販売代理店契約やFC契約)、②「開発」提携(共同研究開発契約等)、③「生産」提携(OEM契約等)と明快にカテゴライズし、それぞれの契約内容に応じて契約書作成にあたって留意すべき条項とチェックポイントが分かりやすく解説されていました。

さらに、法務部と事業部門と社内連携に関する解説(「事業部との連携と工夫の勘所」)は、企業内弁護士として仕事を進めるうえで非常に有益な示唆がありました。
例えば、【図表」タームシートの書式例は、契約目的や収益分配、経費負担、知的財産権といった検討項目が漏れなくあげられており、条件案と社内情報欄を項目分けして表にすることはそのまま実務で使えそうです。

業務提携契約という実務で重要性を増していながら、業務提携契約にポイントを絞った解説書が少ない現状において、今回の特集は本当に役に立つものでした。

【新連載】AIガバナンス「導入編」

2024年2月号から新たに始まった連載(AIガバナンス「導入編」)も、OpenAI社が提供するChat-GPTをはじめとしたAIツールの利用が広まっている現在において、タイムリーな記事となっています。

個人的に感銘を受けたのは以下の部分です。

AIのリスクは広いが、実は同種のリスクの多くは、AIの登場以前から社会に存在してきた。採用における性差別も、個人情報の不適切な取扱いも、著作物の無断利用も、現に法律で禁じられている。AIリスクが、このような既存の制度で対処可能なものであれば、ことさら騒ぎ立てる必要はないのではないか。
もしそうなら、本連載はここで終わりを迎えるのだが、あいにくそう単純ではない。既存の制度は、人間が主体的に判断することを前提としているため、統計と確率に基づいて自律的に判断するAIにどのように適用すればよいのかが明らかではない。たとえば、採用AIの判定に「差別」があったかどうかをどのような基準で判定すればよいのだろうか。確率的に絶対的な安全を保証できないAIシステムについて、結果回避義務としての「過失」をどのように判断すればよいのだろうか。AIのバリューチェーン上には、AIモデルの開発者、AIサービスの提供者、AIの利用者などさまざまな主体が関与しているが、これらの異なる主体の間で責任の範囲をどう決めればよいのだろうか。(略)このように、AIガバナンスの領域には、わからないことや、そもそも正解がない問題が溢れており、既存の制度だけでは対応することが難しい。

ビジネス法務(2024年2月号)43頁~44頁

法務部の仕事の基本は、文字通り確固として存在する国家制度である「法」を駆使して、企業を健全に成長させることです。

しかし、AI分野においてはそもそも法務部が拠るべき法制度が整備されていないのです。
一方、うまく使えば優れた利便性を発揮するAIを活用しないことは、競争の激しいビジネスで後れを取ることにほかなりません。

例えば当社では、AIサービスへの対応として、①AIシステムの利用自体は社として制限せず、許可制もしない、②ただし、個人情報や機密情報のAIへの入力は禁止する、という基本ルールを敷くこととしました。
まだ当社が若い企業ということや、細かなルールを設定しても運用されないだろうことを考慮し、わかりやすいルールで最低限のリスクヘッジをする方針をとったのです。

法律という正解のない中で、法務部としてどのようなスタンスをとるかは、まさに企業成長とリスクマネジメントを調和させるバランス感覚が反映させられることになります。
今後、自社のAIガバナンスをどのように構築するか、すべきかという点について、この連載を参考にしたいと思います。

まとめ

2024年2月号のビジネス法務で特に参考になった記事を2本紹介しました。

ほかにも【特別企画】「五輪イヤーに備える スポンサーシップの法務」や、【特集2】「法務の働き方が変わる!ビジネス感覚を養うための法律・経営書レビュー」など、興味深い記事が多い印象でした。

ビジネス法務を定期的にチェックすることは法改正情報、ビジネス法に関する知識のアップデートにおすすめです。



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