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柴田勝家『走馬灯のセトリは考えておいて』

 個人的にかなり推しているSF作家、柴田勝家の短編集。今回は、信仰、魂、VRなどがモチーフとして多く使われている。
 短編一本一本、短いながら感想を。

「オンライン福男」…コロナ禍による自粛やオンライン化を逆手に取った作品。要はメタバース上で福男をやっちゃう。メタバースには詳しくないけど、パソコンの腕が高ければ男女も年齢もどんなハンディキャップも関係ないというところは良かった。全体的にコミカルな雰囲気なのも◎。

「クランツマンの秘仏」…中身が本当にあるかどうかは、開けてみるかX線でも使わないと分からない秘仏。その質量は信仰の度合いによって生じている、いや実体さえも、と主張する学者と、そこから続く親子三代の物語。信仰を取り扱わせると右に出るSF作家はいない柴田勝家らしい作品だった。

「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」…これも宗教ネタ。宗教を寄生虫に置き換えて、その広がり方を繁殖としている。日本だからこそ書ける作品。割と好き。

「姫日記」…解説を読んで、「本当にあったのかよこんなクソゲー!」と叫んだクソゲーの話。

「絶滅の作法」…人類の絶滅後。何故か外星人によって在りし日の姿を再現(あくまでも再現)された地球で、本体は自分の星にありながらも地球人の遺伝情報を再現した体でスローライフを謳歌する宇宙人の話。地球という惑星の割り切れなさが描かれている気がする。

「走馬灯のセトリは考えておいて」…死者の生前を再現するAI「ライフキャスト」を作ることが生業の主人公が、ある人の死後、その人が中の人だったVTuber「黄昏キエラ」の卒業ライブを手掛けることになる話。生と死がどんどん曖昧になっていく世界で、そのAIは何なのか、など考えさせられる作品だった。ちなみに我が妹は投げ銭しないVTuberオタで本も読むので、これをエサにこの本をオススメした。

 といった感じでした。
 推し活も人によっては半ば信仰活動に近いので、偶像崇拝なので、そのあたりもぼんやり考えさせられました。

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