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異形者達の備忘録-25

緊急警報

私は宮内ユリ、JK一年生です。母親が足が少し不自由なため、両親はよく湯治と言う温泉旅行に出かける。その影響で、私も旅行大好きになってしまった。一緒に連れて行ってもらうのだが、でも温泉じゃなくて、友達とお弁当を持って山歩きする方が好きだ。

だから、ワンダーフォーゲル部に入部した。部活は、土日や連休を利用して、キャンプに行ったりします。次の連休はキャンプの予定で、部員8人と顧問の先生が1人のチームが決まった。

キャンプ出発の朝、母「何かあったらすぐ電話するのよ」父「念のためこれ持っていけ何処からでもタクシーで帰って来い」とか、色々心配されて、エヘッ幸せ! ワイワイガヤガヤと電車を乗り継ぎ、到着したキャンプ場は、超満員! 色とりどりのテントが間を詰めて立っている。隙間が・・・無い!

先生どこにテント貼るの? 探し回ったが、スペースを見つけられず、チームは、場所を移動してみる事にした。しかし、少し歩くとすぐに森になってしまう、そんな時、先行していた男子が「かなり良いスペースがあるんだけど、奥に家が立っている。」と言って来た。

見に行くと、確かに広く開けた場所があり、奥の方にロッジの様な家がある。先生は、「人様の敷地に無断で入るわけにはいかない」と言って、その家の外から「すみませーん」と何度も声をかけました。返事はありません。場所も近いことから、キャンプ場の管理に電話して、この家のことを聞いてみた。すると現在その家は誰も住んで居らず、家主は行方不明になって、10年も経つとのことでした。キャンプ場に空きが無かったことを謝っていて、その場所にテントを貼るのは大丈夫だと思う、水やトイレはキャンプ場のものを使って欲しいと言うことでした。チームは、キャンプが出来ると大喜びしました。

早速、テントを3つ立て、キャンプ場まで何往復もして、火を起こし食事の準備をしたのです。

すぐに、定番のカレーライスが出来上がった。旨い旨いと、揃っておかわりした。食後は、楽しく火を囲み、おしゃべりしていると、突然! スマホの警戒警報が鳴り響いた。ギュイギュイギュイまもなく大きな揺れが来ます。ギュイギュイギュイまもなく大きな揺れが来ます。しかし、私たちの誰のスマホも鳴っていない、

では この大音量は何処から? しかも全く鳴り止まないのだ。

全員が気が付いた。あの建物から聞こえている。ワラワラと家に近付き、何人かが窓から覗く、暗い室内に四角く光るスマホが見える。

ギュイギュイギュイまもなく大きな揺れが来ます。警報は一向に鳴り止まない、私がドアを引いて言った。「先生!開いてるよ」そっと中に入ると、みんなワラワラと付いて来た。中は結構広い、私がスマホにタップすると、 警報が止んだ 一同ほっとする。が、スマホが切れると、同時に部屋は真っ暗に! ワーキャーと悲鳴があがる。

パッと部屋が明るくなった。見ると京子が入り口付近のスイッチを手に、「あれ、電気通ってるんだ」と、また、一同ほっとする。

誰ともなく中央のスマホがある木製テーブルを取り囲んだ。

すると、10年積もったホコリの下に、未投函の手作りの葉書が2枚あった。手漉きの和紙に、水彩で葡萄と柿が描かれている。2枚とも同じ人への宛名だ。

文面一枚目:俺たちも随分な年齢になったね、会いに出かけるのも、お互いに無理だな、今年は紅葉が特別綺麗だったよ

文面二枚目:君の思いの中にまだ俺が居たら、連絡ください、俺がまだ俺であるうちに、 尚、形態は人でなくても良いよ

この葉書投函しようよ、と友達が言った。全員がうんと頷いた。先生が手帳を破いて、『此処にあった葉書はポストに投函します。貴方の思いが届きます様に。』と書いて机に置いた。

翌日早朝キャンプ場を出発した。麓の郵便局に寄りたいから、其々に小さな郵便局に合掌してから、電車に乗り込んだ。

疲れ切って地元の駅に到着すると、徒歩5分なのに、父さんと母さんが迎えに来ていた。エヘヘ!

おしまい


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