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Pythonでバレー分析:イタリアリーグ① 2/29

(画像:legavolley.it)

先日、Pythonで作成中のバレーデータ分析用プログラムの投稿をしましたが、ようやく実際の試合で入力できるくらいまで完成してきました。
というわけで、さっそくイタリア・スーパーリーグ 20節のミラノ対ヴェローナの試合を分析しました。

今までのバレー分析はExcelで行っていて、初めての方はその投稿もあわせて読んでいただけると嬉しいです!

目次はこちら☟


対戦チーム

Allianz Milano (ミラノ)

Allianz Milano (画像: Volleybox)
前列左2番目:石川祐希
右2番目:パオロ・ポッロ
後列左6番目:オーガスティン・ロセル

以前も取り上げたミラノは、われらが石川祐希選手が所属するチームで現在7位とやや低いですが、昨シーズンはレギュラー戦無敗だったチームを破り、プレーオフで見事な戦跡を刻んでいました。

注目は、若手実力派セッターのパオロ・ポッロ選手と、
アルゼンチン代表で機動力の高いブロックで定評のあるオーガスティン・ロセル選手です。
石川選手やロセル選手を含めサーブやアタック力が高い印象です。
ただレシーブ力が少々弱く、今期の石川選手の対角となるサイドのレセプションが安定していない感じがします。

Rana Verona (ヴェローナ)

Rana Verona (画像: Volleybox)
前列左1番目:ロク・モジッチ
左2番目:Noumory・ケイタ

リーグ内のポジション的にはミラノと変わらないチームですが、攻撃力が非常に高い印象があります。昨シーズンはコート内の平均身長が2mをゆうに超えていて、上位チームをなぎ倒していて非常に恐ろしいチームだなと思いました。

注目は、マリ出身のNoumory ・ケイタ選手とスロベニア代表でパワーのあるスパイクが特徴のロク・モジッチ選手です。

試合の分析

スタートメンバー

ミラノ

セッター(S):16番ポッロ
オポジット(OP):7番レゲルス
アウトサイドヒッター(OH):14番石川、2番メルガレホ
ミドルブロッカー(MB):8番ロセル、6番ヴィテッリ
リベロ:5番カターニア

ヴェローナ

セッター:13番スピリト
オポジット:9番ケイタ
アウトサイドヒッター(OH):4番ザヴォロノク、19番モジッチ
ミドルブロッカー(MB):11番グロズダノフ、1番ズィンゲル
リベロ(L):ディアミコ

スコアと項目別得点

試合結果は、
      VER  vs  MIL
1st   20        25
2nd  23       25
3rd  16        25

となりミラノが3-0で勝利しました。

上の図の「Set Result」は各セットの得点、「Set Detail」は項目別の総得点(サーブ、アタック、ブロック、相手のエラー)を表しています。
項目のうち特に大きな差が出たのは、サーブアタックの項目でした。
この違いを、次項で詳しく見ていきたいと思います。

サーブ -チームごとの評価

下の表は、各選手の試合全体での項目別データです。
左から「名前背番号ポジション」、「サーブ(s-)アタック(a-)ブロック(b-)レセプション(r-)ディグ(d-)」という順番で表しています。

各選手の項目別データ。上がヴェローナ、下がミラノ。

サービスエース(表のs-Point)ミラノが多く、14番・石川選手が最多で5本でした。
一方で効果サーブ(表のs-Effective)ヴェローナのほうが多く、13番・スピリト選手6本と最多となっています。

サーブコースをコート上に示した図。サーブの結果によって色付けしている。

上の図は、左側がヴェローナ右側がミラノサーブコースです。
丸の色のうち、オレンジと赤色は相手のレセプションを崩せたサーブを表しています。
この赤色またはオレンジ色の丸が、ヴェローナコート左側ミラノコート右側に偏っていることが分かります。
チームごとに詳しく見ていきましょう。

左側がヴェローナのチーム全体で、右側がそのうちスピリト選手のサーブ
試合データのうち、スピリト選手のサーブを抽出したもの。1番左からセット、ラリー、ヴェローナのデータ、ミラノのデータとなっている。
例えば、No.1がヴェローナの背番号でaction1がヴェローナが行動(サーブ:s )。同じ行のNo.2がそれをレセプション( r )したミラノの選手の背番号を、result2がその評価(a,b,c,o,m)を示している。

上の図は、左側がヴェローナ全体のサーブコースで、右側がスピリト選手のサーブコースです。
スピリト選手のサーブは、やはり左側に偏っていることが分かります。
主にミラノの2番・メルガレホ選手が崩されています(上の表)。

右側がミラノのチーム全体のサーブで、右側がそのうち石川選手のサーブ。
No.2がミラノのサービスエース(action2が s 、result2が p でサーブによる得点)をした選手の背番号を示している。zone2はそのサーブがヴェローナのコートのどこに行ったかを示している。
zone2の数字の1文字目が5であるとき、または1文字目が6で2文字目が4,7,5のときに相手コート右側。

それに対して、ミラノのサーブはどうでしょうか。
上の図は、ヴェローナと同様に左側がミラノ全体のサーブコースで、右側が石川選手のサーブコースです。
石川選手のサーブは、全体と同様にヴェローナとは対照的に右側に偏っていることが分かります。
表はわかりづらいですが、コート右側の8本のサービスエースのうち5本が19番・モジッチ選手を狙ったものであることを示しています。

サーブ -サーブ戦略についての考察

試合を通じて、ヴェローナはメルガレホ選手をサーブで狙い、ミラノはモジッチ選手をサーブで狙っていたことが分かりました。
どちらもレシーブが苦手な選手で、結果的に両チームとも狙い通りレセプションを乱すことができていました。
しかしサーブコースの図から、ヴェローナはメルガレホ選手が後衛の時(左側でレセプションをする)、逆にミラノはモジッチ選手が前衛の時(右側でレセプションをする)を狙っていた可能性が考えられます。

ヴェローナがメルガレホ選手が後衛時を狙った要因として、ミラノが多少乱されてもセッターの16番・ポッロ選手は早いトスをガンガン使ってくるし、また乱された位置からも使うことができる石川選手のバックアタックを警戒したことが考えられます。
メルガレホ選手が前衛時に多少乱されても、前衛にレゲルス選手がいる場合は速いライト攻撃が使えますし、石川選手の縦横無尽なバックアタックが残っている可能性が高いということです。
ヴェローナとしては、それよりもメルガレホ選手が後衛時を狙って、レゲルス選手のバックアタックと石川選手のレフト攻撃をしのぐほうが楽だという判断をしたんでしょう。

それに対して、ミラノはサーブをより強く打つことができるコート右側にモジッチ選手がいるときを狙っていたようでした。
コート右側は入れば強力ですが、サーブ地点とコートエンドまでが短く、リスクの高いゾーンとなっています。
石川選手とメルガレホ選手は勝負所でこのリスクのあるコースにサーブを打ち、見事にサービスエースを量産していました。

ヴェローナのサーブ戦略もよかったと思いますが、この試合ではミラノの勝負所でのサーブ力が上回っていたと言えます。

アタック -チームごとの評価

もう一度、各選手の項目別データを見ていきます。

ヴェローナのアタックは9番・ケイタ選手26本と最多となっていて、次いでモジッチ選手が18本でした。
ミラノはレゲルス選手が最多で20本、次いで石川選手18本となっています。
ヴェローナのアタック効果率(表のa-success)は、ケイタ選手・モジッチ選手ともに10%代後半とかなり低い数値でした。
モジッチ選手を狙ったサーブで乱されて、コンビ攻撃がなかなか使えなかったことが原因だと考えられます。

一方でミラノも、石川選手20%代前半と低くなっていますが、これはサーブでの項の考察と一致した結果と考えられるでしょう。
メルガレホ選手が後衛の時に乱されると、前衛でオープントスを打てるのは石川選手なので、必然的にオープントスを打つ機会が多くなりますが、この場合はブロッカーは余裕をもって3枚揃えることができます。
これが石川選手のアタック決定率が低くなった要因かなと思います。

アタック -Aパス時のトスの違い

トスの配分について見ていきます。

左側がヴェローナのトス配分で右側がミラノのトス配分。
円のx座標はそのままスパイクする位置を示していて、縦方向のy座標は1番上が前衛でのコンビ攻撃、上から2番目が後衛からのコンビ攻撃、下から3番目が前衛後衛問わずオープントスでの攻撃。

上の図は左側がヴェローナのトス配分とそれぞれの決定率
右側がミラノのトス配分とそれぞれの決定率です。
特徴的だったのは、ミラノのセンターの使用率が高く26.5%だった点です。
また、その決定率8割以上というものでした。

今回のゲームの勝敗を分けたのは、このミラノのセンターの使用率にあると考えています。

項目別データ(2個上の表)から分かる通り、ヴェローナのクイック攻撃(1番・11番のattack)は計6本であるのに対して、ミラノ(6番・8番のattack)は計14本となっており、その決定率もとても高かったことが分かります。
ヴェローナとミラノのAパス・Bパス(項目別データのr-A,r-B)の本数は変わりませんが、これは「いいパスが返ったときに、ミラノの方が積極的にクイック攻撃を使っていた」という意味になります。

一方でヴェローナはAパス時にサイドを多く使っていましたが、ロセル選手メルガレホ選手の強力なブロックに何回も捕まってしまいました。

総評

両チームともに、サーブ戦略はそれぞれの狙い通りに効果があったように思われますが、イン-システム(コンビ攻撃が使える時の攻撃)でポッロ選手の強気なトスがチームを勝利に導いたのだと考えました。
ポッロ選手はそれだけではなく、多少乱れた位置からでも早いサイド攻撃を展開することができる選手だと思うので、次の試合ではそういった部分について考察できたらなと思います。

最後に

今回は、Pythonで作成したバレー分析システムを使って、試合の分析を行ってみました。
初めての試行だったので、修正点はまだまだあるなと感じましたが、Excelで行うのと作業時間も変わらず、分析方法も幅が広くなったなと感じました。

こんな感じで、試合の分析も続けていく予定なので、今後の投稿についても是非チェックしていただけたら嬉しいです!


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