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正を分解すると、一と止。はじめに戻ろう。

これまでマガジンでは日本酒を「SAKE」として世界に紹介することで、その独特なテロワールを強調し、グローバルな認知を高めることができるという提案をしてきました。

内容としては、ワインが「フランス酒」として知られていたら、その普及は限られていたかもしれません。

同様に、日本酒もその起源と特性を世界に広めることが重要です。

日本酒は、厳しい寒さと清らかな雪解け水、質の高い米、そして杜氏と蔵人の高い技術と職人魂に支えられ、多様な銘酒を生み出しています。

そういた産地が誇る蔵元では、かならずと云っていいほど「|和釀良酒わじょうりょうしゅ》」という言葉を耳にします。

私は酒米の栽培もしていましたし、他の蔵元にも酒米を販売させていただいてました。自分の蔵元での酒造りでは当たり前のように存在していましたので、実はあまり意識していませんでした。

しかし、この言葉は酒造りそのものを表現していると言っても過言ではないのです。

和釀良酒の意味は2つあります。

ひとつめは「和は良酒を醸す」ということ

つぎに「良酒は和を醸す」ということです。

つまり、この2つは互いに影響し合う言葉なのです。

私は、このキーワードを具体的にどのようなことなのか、大きく3つに分けて紹介したいと思います。

酒蔵内での和釀良酒

まずは、酒造りにおける人の和。

酒造りは肉体的にも精神的にも要求される仕事です。多くの蔵で今でも、重い米袋の運搬や洗米作業などの疲れる作業が行われています。

これらは単独では成し遂げられないため、蔵人たちは一致団結して作業に当たります。酒は「生き物」とされ、常に注意が必要です。

そのため、酒造りの期間中は、蔵人が共同生活を送ることもあります。この共同生活を通じて、仲間同士の絆が深まり、良質な酒が生まれます。

同じ目的に向かって努力することで、おいしいお酒が造られるのです。

蔵人たちが愛情を込めて育てた日本酒は、人間の手によってその成長を見守られます。この過程で蔵人同士の和が形成され、その和がさらに良酒を醸し出すのです。

蔵人たちの共同作業と日本酒の成長が、静かに、しかし力強く語られることでしょう。それぞれの蔵人が持つ物語と、彼らが育む日本酒の物語が、和を通じて一つに結ばれるのです。

酒蔵と周りの人々との和釀良酒

そして和を広げていきます。

日本酒造りには「酒米」と呼ばれる「酒造適合米」が必要です。だからこそ、おいしい日本酒には、おいしいお米が不可欠なのです。

わたしは農業生産法人の経営もしていましたが、その米だけでは足りず、農業生産者団体も設立していました。

農家は春から秋にかけて、台風や冷夏にも負けずに米作りに励みます。

彼らは酒蔵との深い絆を持ち、目指す味わいの日本酒を造るために栽培方法を工夫します。

そして、完成したお酒は販売店を通じて消費者に届けられます。この過程は、お酒を子供のように大切に扱うことで、品質を保つための連携が重要です。

農家、酒蔵、酒販店が一丸となって酒造りのストーリーを共有することで、良酒が生まれます。この過程で、彼らはお互いの人間性を理解し合い、和を築いていきます。

農家の土と水、酒蔵の技と情熱、酒販店の物語と出会いが、一つの美しいハーモニーを奏でるのです。そのハーモニーは、私たちが日本酒を通じて感じる深い絆と、共有される喜びの源泉となります。

消費者の和釀良酒

いよいよ最後は、飲むひとの和。

おいしい日本酒を飲むことは、その場の雰囲気を和ませ、人々をつなげる魔法のような力があります。

初対面の人でも、日本酒を通じて心を開くことができます。

丁寧に造られた日本酒を飲みながら、普段は話せないような話題に花を咲かせることも。

愛情を込めて造られた日本酒は、人々の間に和を生み出します。日本酒に関わる全ての人々に感謝しながら一杯を味わうとき、それはただの飲み物ではなく、文化と絆の象徴となるのです。

この独自の魅力を「SAKE」として世界に伝えることで、日本酒の価値をさらに高めることができると考えています。

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