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【コラム】医療法人(病院)のM&Aの実態

ここで少し筆者の本業である、RCDコンサルティングの話をしたいと思います。


私たちのビジネスモデルは、2010年に起業した際の理念に基づいています。

日本の財閥型企業のように、多岐にわたる産業分野をカバーし、ビジネスの全段階を内製化するスタイルを採用しています。

このビジネスモデルにより、核となる事業から付帯収益を生み出し、収益源の多様化と業績の安定化を実現してきました。

私たちのコンサルティングサービスは、クライアントのビジネスを総合的に支援し、収益源の多様化や業績向上を目指すものとなっています。

一方で、冒頭の登場人物の紹介でも話したようにRCDCでは医療系のM&Aを数多く手掛けている背景もあり、本書を推進することになりました。

そこで就活生の視点から、医療法人にM&Aが増えている要因を解説します。

この知識をキャリアプランを考える際に役立ててください。


国内における現状


※㈱日本M&Aセンター調べ

日本全国で後継者不足に直面している企業の数が、驚くべき数字に達しています。

最近の調査では、全国全業種の408,954社のうち、なんと65.9%、つまり269,488社が後継者不在の状態にあることが明らかになりました。

これは、国内企業のほぼ2/3が現在、後継者問題に頭を悩ませているということを意味しています。

特にオーナー企業、つまり会社代表が筆頭株主である企業においては、この問題がさらに深刻で、68.2%が後継者不足という状況です。

この数字から、私たちは日本の多くの企業が事業継承の難しさに直面している現実を窺い知ることができます。

後継者不足は、単に一つの企業の問題に留まらず、日本経済全体に影響を及ぼす可能性があります。企業の存続はもちろんのこと、雇用の安定、地域経済の活性化など、さまざまな側面に波及効果をもたらすのです。

このような状況を受けて、企業はどのように対応すべきでしょうか。

M&Aを含むさまざまな戦略的選択肢が考えられますが、何よりも重要なのは、事業継承計画を早期に策定し、適切な後継者を育成することにあります。

また、社外の専門家やアドバイザーの意見を取り入れることも、新たな視点を得るために有効です。

日本企業が直面するこの後継者問題は、今後も継続的に注視されるべき課題であり、その解決策は日本経済の将来に大きな影響を与えるでしょう。


日本の業種別後継者不足:深刻化する現状

※㈱日本M&Aセンター資料より

日本の業界における後継者不足の現状は、まさに一筋縄ではいかない複雑な問題です。業種別に分析を進めると、驚くべき数字が浮かび上がります。

特にサービス業の不在率が72.1%にも上り、これは業界全体の7割以上が後継者を見つけることに苦労していることを示しています。

続いて建設業が69.6%、林業狩猟業が69.1%と続きます。

一方で、農業の後継者不在率は56.9%と、他業種と比較してやや低い数値を示しています。

これは、長い間後継者問題が指摘されていた農業において、事業者の視点では問題がそれほど深刻でない可能性を示唆しています。


※㈱日本M&Aセンター資料より

驚くべきことに、小規模医療機関での後継者不足が特に顕著です。

無床診療所では、その割合が90.3%にも上り、しか診療所が89.3%、有床診療所が81.5%と続きます。

このデータは、小規模医療機関の経営継続に対する危機感を強く感じさせます。

さらに、広告業界も後継者不足の影響を受けています。

ディスプレイ業や広告制作などの関連事業も不在率が高く、業界全体が苦境に立たされている様子が伺えます。

これらの業種別分析からは、日本経済全体に及ぶ後継者不足の深刻な影響を垣間見ることができます。

特にサービス業や医療業界の後継者問題は、今後の日本経済の持続可能性にとって大きな課題となっています。

このような状況下で、企業は継続可能なビジネスモデルの確立と後継者育成への取り組みを急ぐ必要があるでしょう。

日本における医療法人のM&Aは、近年活発化しています。特に、人口減少や医師不足の影響を受け、地域医療の維持が課題となっている中、M&Aが有効な解決策の一つとして注目されています。


後継者問題

多くの医療法人が直面している大きな問題が後継者不足です。

経営者の高齢化に伴い、適切な後継者が見つからない状況が多く見られます。

日本の多くの家族経営企業が直面する親族継承の壁。その背後には、厳しい経営環境が広がります。

かつては家業を継ぐことが当たり前だった時代とは異なり、現代では高度な経営手腕と、従業員を導くマネジメント能力、さらにはカリスマ性まで求められる時代になりました。

これら全てを兼ね備えた「王の資格者」は、そう簡単には見つかりません。

次に、親族継承の道が険しくなる要因として、個人のライフプランや価値観の変化が挙げられます。

生き方一つ取っても多様性が叫ばれる現代、自分自身の夢や志向を追求する若者は、親の仕事を継ぐよりも自らのキャリアを築くことを選ぶことが多くなっています。

また、事業継承対策がなされていないことも一因です。

事業継承の計画なくして、突然の継承は企業にとっても大きなリスク。しかし、多くの企業がこの準備を怠っています。

そして、避けて通れないのが相続税の問題です。

企業価値に見合った高額な相続税がかかることは、親族継承を躊躇させる大きな障害となっています。

継承者が見つかったとしても、この税金の壁が事業継続の足かせになり得るのです。

これらの理由が複雑に絡み合い、親族継承が上手く進まない実態があります。

これからの企業は、これらの課題にどう向き合い、どう解決していくのかが、持続可能な未来へのカギを握っているのです。

一方で、日本の伝統的な企業形態において、「番頭継承」という言葉があります。

これは、創業者やオーナー家族以外の信頼された従業員が企業を継ぐことを意味します。

しかし、この番頭継承が上手くいかないという現実があるのです。

その理由の一つに、出資持分の買取資金の手当ができないという問題があります。

企業の操縦桿を握ろうとしても、その資金を用意することができなければ、継承は夢物語で終わってしまいます。

また、企業継承には金融機関への担保提供能力も求められますが、これが番頭には大きな壁となり得ます。

金融機関からの信頼を得るには、経営者としての信用や実績が不可欠です。

さらに、経験の不足は致命的です。

何年もその企業で働いてきたとしても、経営の最前線での経験がなければ、承継後にはたいていの場合、失敗に終わると言われています。

しかし、最も重要なのは、番頭が持つべき責任感と、企業を背負う覚悟です。

企業の舵を取るということは、単に経営を行うこと以上の意味を持ちます。

それは従業員の生活、企業の伝統、地域社会への貢献といった、重い責任を負うことを意味します。

番頭継承が上手くいかないのは、資金や経験の問題だけではなく、この深い責任感と覚悟が必要とされるからかもしれません。

将来を見据えた真の経営者は、これらの困難を乗り越えられるだけの内面的強さを持っているのです。


事業継承の岐路に立つ企業たち

経営の世代交代は企業にとって大きな転機です。

事業継承の選択肢は多岐にわたり、家族内継承、従業員への売却、さらには外部法人へのM&Aと、経営者はその道を選ぶ際に多様なパスを見つめます。

特にM&Aは、後継者のいない企業が新たな命を吹き込まれる機会として、最近のビジネスシーンで注目を集めています。

現代のM&A最新事情は、かつてないほどのダイナミズムを見せています。

大手医療グループや投資ファンドが、その強力な資本力と経営の専門知識を武器に、次々と医療業界の企業を買収しているのです。

これは単なる所有の変更ではありません。

それは、経営資源の最適化、イノベーションの促進、そして最終的には患者サービスの向上につながるという大きな期待を含んでいます。

こうした動きは、医療業界だけでなく、多くの業界で見られる現象です。

資本の流動性が高まり、ビジネスのフロンティアが拡大する中、事業継承は新たな展開を見せています。

経営者にとっては、これらの選択肢が企業の未来を左右するという重圧と、変化を恐れず前進するという期待が交錯する時代になっています。


成功事例3例

NDAもあり、詳述はかないませんが以下のような案件を中心に活動しています。

  • 大手医療グループによる地域病院の買収:地域密着型のサービスを維持しつつ、経営効率化を図る。

  • 専門クリニックのチェーン展開:特定分野に特化し、ブランド力を強化。

  • 投資ファンドによる再生型買収:経営難の病院を買収し、リストラクチャリングを行う。

では、どういった病院が売れるのか?

買い手が現れやすい病院というのは、一定の収益基盤を持ち、特化した医療サービスや地域での強みを持つ病院です。

病院を買収するための条件には、医療法人としての適格性、財務的な健全性、地域医療への貢献などがあります。


医療業界での未来を切り開く

医療業界に足を踏み入れることは、ただの仕事ではなく、社会への深い貢献という使命感を持って生きる道を選ぶことを意味します。

医療の世界での勤務は、高齢化社会が進む中で、安定した需要という形で、その未来の保証を与えてくれます。

これは、経済的な不透明さが漂う現代において、安定性を求める就活生にとって、一つの灯台となるでしょう。

また、医療分野では、絶えず進化する専門性という自己成長の機会が溢れています。

病院での勤務は、日々の実践を通じて専門知識を深め、スキルを磨くプロセスです。

これは、個人のキャリアを形成し、将来に向けたステップアップを可能にします。

医療業界は、医療技術者から事務職、経営に至るまで、幅広い職種が存在します。

それぞれの道は、多様なキャリアパスを提供し、自らの興味や能力に合わせて選択できる自由を持っています。

そして、医療業界は常にイノベーションの最前線にあり、新しい技術や治療法が生まれる場所です。

そう、医療業界での勤務は、未来に対する確かな約束を持っています。

それは、安定したキャリアの構築、絶えず学び続ける環境での成長、そして何よりも人々の生活を支えるという大きな責任感を胸に、充実したプロフェッショナルライフを送ることを意味しているのです。

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