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世界の森林と日本の森林(その16)by 立花吉茂

地球を護る森林
 地球の温暖化や大気汚染を考えるとき、森林の果たす役割は大きい。その森林は、温帯にも熱帯にもあるが、亜寒帯の森林は単純な単層構造であるのに対して、熱帯の森林は複雑な多層構造である。それが果たす役割はたいして変わらないように見えるが、若干の違いはある。北半球のハワイのデータでは、二酸化炭素の排出濃度は冬と夏とで差がある(図1)。

 これは、温帯と亜寒帯の森林(主にシベリアとカナダの針葉樹林)が、冬季に休眠してあまり多くの二酸化炭素を利用しないからであると考えられる。これに対して熱帯の森林では1年中休むことなく光合成がおこなわれるから直線状になる。このような違いは大きい目で見ればさほどの影響はないように見える。最も大きな違いは、多様性の差であり、生物資源の種類の多さの違いである。シベリアやカナダの針葉樹林は材木(紙パルプ)としての価値が高く、現在の重要な資源である。これに対して熱帯林は、年中酸素を放出する利益以外に、多様な遺伝資源を持ち、未来の人類の必須の資源である。その価値の高さははかりしれないほど大きい。

消えて行く熱帯雨林
 その貴重な熱帯林は、資源として大半が切り尽くされた。いま残っている場所はアマゾン地域である。そこが毎日切り倒され、焼き払われている。わずか少数の人びとの農地開発なのである。ここに職場をつくってやれば伐採せずにすむ。にもかかわらず、世界の人たちはそのようにしようとはしない。いま、その重大性を説き、実際の行動に出なければもう間に合わない。それは、図2を見ていただければおわかりになるであろう。

 16%のラインはもうないに等しいから、それはもうすぐやってくるのである。ブラジルに職場をつくる運動をボランティアでやらなければ、だれもやらないのであろうか? みなさん、どのようにお考えでしょうか?
(緑の地球64号 1998年11月掲載分)

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