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アジアのcrypto市場トレンド(2024年春)

 小田玄紀です

 香港で開催されたWeb3 Festivalに招待頂き参加してきました。昨年は4日間で合計5万人が参加したアジア最大級のcryptoイベントの1つになります。

 crypto winterが明けてから初となる大規模イベントということもあり、会場は非常に盛り上がっていましたが、実際に参加してみるとさらに市場が熱を帯びる可能性を実感し、また、業界のトレンドを認識することができたのでシェアさせて頂きます。

 まず、今回のイベントに参加して感じたのが香港当局のcrypto市場への本気度です。

 コロナ以降に香港から多くのプロジェクトや投資家が香港から流出したこともあり、香港当局としては再び香港を国際金融都市としての魅力を再度高めることが至上命題の一つになっており、その中でもcryptoは非常に大きな要素になっています。

 中国本土ではまだcryptoは禁止ですが、香港では完全に解禁しており、むしろ非常に積極的です。むしろ中国本土の投資家と海外市場をつなぐハブに香港市場がなっていこうという姿勢を感じました。

 今回、私が登壇したのはメインステージでのパネルセッションであり、日本・香港・シンガポールのcrypto市場の現状を語るセッションでした。会場は満席で、非常に高い期待を感じることができました。

 香港やシンガポールでもcrypto事業者は銀行口座開設や送金に制限がかかる問題はあるらしく、これは日本も同様なのですが、複数参加していた香港当局の議員や関係者がこれは改善していくことを名言しており、短期間で改善される可能性を感じました。

 私からは日本では自主規制団体が機能しており、法律でカバーしきれない点をうまく補完していることを説明し、香港でも自主規制団体を立ち上げることを提案し、そのための協力は惜しまずに行うことを表明しました。

 一つの事例として、日本では自主規制で顧客資産は実質100%コールドウォレットで管理するようになっており、この対策が功を奏して2020年以降は一件もハッキング被害が国内事業者からは発生していないことを紹介しました。

 これも、当初はこんなこと不可能と言われていましたが、事業者側のオペレーション体制の見直しをした結果として実現することができました。

 その他、マネーローンダリング対策も自主規制で定めて適切に運用するなど、法律でカバー仕切れない点を含めて自主規制で対応することの重要性を話してきました。

 crypto市場は今月中旬に予定されているビットコイン半減期に加えて5月のロンドンでのビットコインETNやアメリカでの現物イーサリアムETFの承認可能性、また、香港でもビットコイン・イーサリアムの現物ETFが6-8月中に認められる可能性があり、非常に明るい市場になっていく可能性があります。

 シンガポール当局の方もcryptoのテクノロジー実装には非常に期待をしていて、Zero Trustでの取引ができること、また、コストの安さなどから既存の金融取引を大きく変える可能性を強調していました。特にアフリカ市場での導入が進む可能性があるとの見方でした。

 この表は日本の交換業者の口座開設者数の推移ですが、実はこの1月には国内暗号資産口座開設者は917万人となりました。直近で発表された2月のデータでは950万人を超えており、近く1000万口座になる見込みです。

 1000万口座ということは日本人の10%に相当する数です。もはや暗号資産取引はマイナーなものではなく、広く国民に浸透しつつありますし、これから欧米に加えてアジアでもこの市場が活性化していく中で、日本も改めて金融という観点からも、また、事業という観点からもcryptoの可能性を再評価する必要があると感じました。

 税制改正、ETF、レバレッジ改正などやれることはまだたくさんあります。引き続きセキュリティ強化やマネーローンダリング対策の徹底を実施しながらも、日本のためにもやるべきことはしっかりとやっていく必要性を感じました。

 比較的、日本はcryptoではしっかりとしたレギュレーションが出来ていたとこの数年評価されてきましたが、ここに甘んじてはすぐに追い越されます。改めて、そのことを実感することができました。

 また、今回イベントに参加して、これからのcrypto業界におけるキーワードが見えてきました。

 それはDePINです。Decentralized Physical Infrastructure Networksの略称で、分散型物理インフラネットワークを指します。

 日本でも先日、東京電力やKDDIがDEA社と提携してDePINへの取組みを発表していましたが、まさにこれがキーワードになっていました。

 実社会のインフラ整備にcryptoが使われることで、これまでとは違った価値が出てきます。

 暗号資産への懐疑派の人達は『暗号資産の根源的価値は何か?』『金のように価値があるものと暗号資産は異なる』という意見は未だにあります。

 しかし、上記のようにブロックチェーンはそれ自体が情報の非改竄性に強いデジタル資産であること。

 発行主体が国家や特定の機関ではなく、プログラムで作られていて発行量がオープンであること。恣意性もった供給量の操作がされないこと。市場で価格決定されるフェアなものであること。

 現実的にビットコインの時価総額が東証の時価総額10兆円超え企業の合算時価総額を超えていて、東証全体の1日あたり取引量を上回っているという事実があること。

 よく対比される金も、実は原資産はありません。暗号資産の価値は、要するに市場でフェアに価格が決まり、プログラムで誰しもがオープンかつフェアに価値評価できる歴史上初めての資産が出来上がったと認識するのが正しい見方ではないかと考えています。

 これからさらにcrypto市場は新しいフェーズに移行していきます。その中でどう自ら価値を発揮していくのか、多くの関係者が改めて問われていると感じています。

 2024年4月6日 小田玄紀

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