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第17話 長澤まさみと坂本弥生

自分にとって転換点となる作品には、いつも長澤まさみがいた。

『告白』『悪人』の後、自分の映画づくりの方向性をがらっと変えて、音楽を中心に据えた映画『モテキ』に大根仁監督と取り組んだ。
そのとき、長澤まさみに出演を依頼した。

『世界の中心で愛をさけぶ』の清純なイメージからすると、まるで印象の違うチャレンジングな役。周囲に出演を懸念する声も多かった。けれども彼女は思い切ってオファーを受け、振り切って演じてくれた。
結果観客は長澤まさみの新しい顔を発見し、その衝撃が映画を大きな現象にしてくれた。

長澤まさみはその美貌への言及が多いが、実は声の女優だとも思う。
『世界の中心で愛をさけぶ』はカセットテープに吹き込まれた彼女の声が、あの繊細な世界を造りあげている。

いつか長澤まさみの声の力を借りた映画を、と思っていた。

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