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【13,000字超】凡人による文系&専門性ゼロ人材のキャリア考

タイトルの通り。自分自身が文系&専門性ゼロ人材からスタートし、四苦八苦して血反吐吐きながら10年ほどキャリアを構築してきて、ようやくある程度の市場価値を認めてもらえるシーンが出てきたことから、これまでの思考や経験を外部化しておくために記載する。

大学卒業後に新卒でそのまま社会人になったが、その時点では以下の状態だった。要は特徴のないただの新卒人材である。

  • 私立文系学部卒(非早慶)

  • 人文学系の学部卒(非実学専攻&非院卒)

  • 月給約20万の日系企業総合職入社

  • 特別な専門性やスキルは皆無(実はプログラミングができたりビジネスコンテストに出ていたみたいなことはなく、実学への理解&実務経験は本当にゼロ)

社会に出て10年程度経ち、凡人なりの生存戦略を考えながら生き抜いた結果、以下のようにかなりマシな状態になった。

  • 自分の経験/専門性がハマる仕事であればある程度自由に転職できる

  • 新卒時の5倍以上の待遇を前提に会社と交渉できる

  • ある程度のパフォーマンスを出す前提で自由な働き方を自分で設計できる

上記の変化が起きたこの10年を振り返り、重要だと考えたことを簡単にまとめてみたい。



前提事項

本論に入る前に、ビジネスキャリアを考える上で重要だと私が思うポイントを簡単に挙げておきたい。本論は全般的に以下のポイントを前提としている。

結論を先に言ってしまうと、要は「今後のトレンドを踏まえると、プロフェッショナル人材としてのキャリアを確立することの重要性が益々高まる」ということだ。

①ビジネスキャリアのプロスポーツ化

プロスポーツにおいては、チームが勝つために必要な選手を集めて試合をし、そこでパフォーマンスの低い選手は戦力外通告を受け、パフォーマンスの高い選手はより高い報酬を得る。チームへの所属年数が長いから報酬が高くなったり戦力外通告を免れることはないし、所属年数が短かったり年齢が若かったりすることを理由にチャンスが与えられないということもない。「試合に勝つ」という目的のために組織と人材が最適化される。

ビジネスにおいても既に同様の傾向が出てきており、今後その傾向は更に強まっていく。つまり、事業を成功させるために実績を出すものが報われ、そうではない者は減給や降格されるようになっていき、年功序列制度は徐々に崩れていく

何故このような傾向が強まっているかというと、ビジネスの競争環境が激化しており、また環境変化が早くなってきているからだ。企業が他社に勝つためには、以前よりも限られた期間で高い成果を出す必要がある。そのためには、新卒から自社にいる社員が1つ1つ専門性を身に付けていくのを待っているわけにはいかず、また社員が一度専門性を身に付けたとしても、少し時間が経つとその専門性は陳腐化して新たな専門性が求められることも少なくない。だから高い専門性を持っている人材を市場から集め、短期間で成果を出せるようにプロジェクトを組んでいくようになる。

既に日本企業でもそういった動きは増えてきており、高い専門性を求められる仕事(プロジェクト)に関する求人は多く出てきている。そして、そういったポジションは市場で求められる水準の報酬を出さないと人が集まらないことから、多くの場合、高い報酬が提示される

②人材の二極化

「①ビジネスキャリアのプロスポーツ化」が進んでいくと、所属組織を問わずに高い専門性を軸に仕事をしていく「プロフェッショナル人材」と、組織の中で組織に求められる仕事をしていく「オペレーショナル人材」に二分していく。既にそのトレンドは来ており、今後もその傾向が強まっていく。

橘玲さんによる「人生は攻略できる」という本では、クリエイティブクラスとバックオフィスとで待遇と自由度に大きな差が生まれていくという主張がされている。クリエイティブクラスとは、ミュージシャンや芸術家、起業家のような「クリエイター」と、医者や弁護士、コンサルタントのような「スペシャリスト」に大別され、前者はハイリスクハイリターン、後者はミドルリスクミドルリターン(といっても一般的にはかなり高年収)である。

私が上で言及した「プロフェッショナル人材」とは、この分類でいうと「スペシャリスト」に該当する。(但し本論では「スペシャリスト」という言葉を別の意味で使うため、留意いただきたい。)そして「オペレーショナル人材」は「バックオフィス」に該当する。

プロフェッショナル人材とオペレーショナル人材とでは、企業における位置づけが大きく異なってくる。①のアナロジーを援用すれば、プロフェッショナル人材はスポーツチームにおける選手のように実力・実績に応じた待遇が提示されるが、オペレーショナル人材はプロフェッショナル人材ほどダイナミックな待遇の変化は発生しない。(一方、オペレーショナル人材はプロフェッショナル人材と比較して相対的に雇用や報酬が安定しやすいことが多い。)

当然、転職する際にも両者には違いが生じる。プロフェッショナル人材には、マーケット水準の高い報酬、事業推進上重要な職責、自由な働き方といった条件が提示されることが多くなる。一方で、オペレーショナル人材にはこれまでの一般的な会社員と同様に、固定化された報酬、仕事、働き方が提示されることが続く。

この変化は既に現実化しており、ひとたび人材マーケットでプロフェッショナル人材と認定されると、その人の手元に来る求人の条件や内容が目に見えて変わる。もちろんプロフェッショナル人材にはプロフェッショナルとしてパフォーマンスを出し続けないといけないプレッシャーがあり、しんどい部分もある。プロフェッショナル人材とオペレーショナル人材のどちらが良い/悪いという話ではなく、選択の問題だが、今後のトレンドを踏まえるとプロフェッショナル人材の方が自由度高く働き、キャリア構築していける可能性が高い

③確実な未来予測はない

こういう話になると、「では今後プロフェッショナル人材として生き残っていける職種やスキル、経験はなんでしょうか」という質問が来ることが多い。答えは「わからない」以外ない。2-3年先のことならまだしも、30年先まで通用するスキルなど誰にもわからないし、ましてや最近はより短期の5-10年先ですら見通すことがかなり難しくなっている。

より視野の広い人や知見の深い人であれば、より長期にわたってトレンドを見通せるのかもしれない。しかし、多少の違いはあっても人間の未来を見通す力は五十歩百歩であり、確実な拠り所にできるようなレベルの未来予測は存在しないと思った方が良い。5年前の経済予測やトレンド予想を見てみれば、それが事実だということがすぐわかる。経済予測をしているような人はその道の専門家であることが多いが、ほとんどの予測は当たらない。

予測に頼るのではなく、不確実性を受け入れ、大抵のことが起きても生きていけるように経験を積んでいくことが重要だ。環境の変化を生き抜くだけではなく、環境変化によって自分に有利な状況を作っていけるような「反脆弱性」を構築することを考えることはなお重要だ

④起業が最適解とは限らない

世の中は不確実性で溢れ、どうせ確実なキャリアプランというものが存在しないのであれば、起業(もしくは最初期フェーズのスタートアップに参画)してハイリターンを狙うのが良いのではないかと考える人も少なくない。

確かに起業は(事業が失敗するリスクを受け入れる代わりに)上手くいけば大きなリターンが得られるし、最近は起業の失敗経験を高く評価する企業も出てきており、選択肢の1つとなり得る。しかし、本論ではいきなり起業することは推奨しない

なぜなら、起業は成功率が極端に低いために、あまりにも再現性が低いからだ。本論は「凡人による文系&専門性ゼロ人材のキャリア考」である。専門性を全く持たない凡人が起業して事業が上手くいく確率は極めて低く、もし上手くいった例があってもその成功要因には偶然性が多分に含まれている。

起業家がゼロからスタートして成功したアメリカンドリーム(ジャパニーズドリーム?)のような話はみなに注目される。しかし、そういった成功事例の背後には何万倍もの失敗事例が存在し、それら企業や事業はそのまま日の目を見ずに消えていっている。起業は、私たちが感じているよりも遥かにハイリスクハイリターンな「賭け」である。

但し私は、起業という活動自体を否定したいわけではない。アントレプレナーシップを持つ人は尊敬に値すると考えているし、また社会全体で見れば起業が増えて経済の新陳代謝が起きることは大変望ましいことだとも考えている。しかし、大多数の人(それも本論の対象である専門性のない平凡な人)にとっては、個人のキャリアを考える際に起業が第一の選択肢なのかというと、決してそうではないと考えている。

また、後述する通り、一度プロフェッショナル人材としてキャリアを確立し、安定的に高いパフォーマンスが出せるようになったら、それを土台として高いリスクを取っていく(起業する)ことはむしろ推奨される(キャリアのバーベル戦略)。

⑤自分の適性に合った仕事を軸にする

不確実な世の中で、何を拠り所にしてキャリアを構築していけば良いかといえば、それは「自分の適性」しかない。その時々の流行や(多くの場合当たらない)予測に振り回されてキャリアを考えるよりも、どうやったら自分の適性を発揮できるキャリアを構築していけるかを考える方が余程有効だ。

自分の適性を考える上で重要なのは、「自分の適性は意外と自分自身では気づけない」ということを理解しておくことだ。多くの人が「自分はこれが得意」と思っていることはそのほとんどが勘違いであり、キャリアを構築していく上での軸にはなり得ない。

ではどのように自分の適性を知るのかというと、実際に仕事をしてみるしかない。仕事をしてみて、周囲の人からフィードバックや評価を受ける。そうすると、自分が得意だと思っていたことが、実はもっと得意な人が社会にはごまんといることだったり、自分がさほど意識していなかったようなことが実は人の役に立ったり感謝されたりすることだったりが、手触り感をもってわかってくる

自分の持っている手札のうち、「買われる」能力や経験が何なのかがわかってくれば、そこを軸にキャリアを構築していく。冷徹なほどに自分を突き放して見ていき、他者との関係の中で他社のニーズを満たすようなポイントを自分の中に見つけ出すことが、おそらく唯一の「自分の適性を見極める方法」だ。


以上が前提事項である。これらを踏まえてここから本論に入る。凡人が生き抜くために考えてきたことを要点のみ抽出しまとめたものだ。

その1:目指すべき方向性とプロフェッショナル人材の概要

結論:まずはプロフェッショナル人材としてのキャリアの確立を最優先する

前提事項でも触れたように、プロフェッショナル人材とオペレーショナル人材とでは人材の位置づけが異なってくる。一方で、いきなり起業してハイリターンを狙うのは凡人には賭け要素が強すぎる。これらの点を踏まえると、凡人のキャリアとしては以下のステップを踏むことが重要だ。

  1. まずはプロフェッショナル人材としてキャリアを確立することを目指す。

  2. その上で、副業としてハイリスクハイリターンな仕事をする。橘玲さんの用語でいえば、クリエイティブクラスの中で、スペシャリストからクリエイターに移行する。

1点目の「プロフェッショナル人材としてキャリアを確立」を20代‐30代前半のうちにできるかどうかで、その後の自由度と選択肢の広さが段違いに違いが生まれてくる。

プロフェッショナル人材とは何か

それでは、ひとまずプロフェッショナル人材を目指すとして、プロフェッショナル人材とは一体どういった人材だろうか。まずは次の4象限の分類を見ていただきたい。

人材像の4分類

プロフェッショナル人材は、2つに大別できる。1つはゼネラリスト×プロフェッショナルの「A. プロフェッショナルマネジャー」、もう1つはスペシャリスト×プロフェッショナルの「B. エキスパート」だ

Aのわかりやすい事例としては、プロ経営者が挙げられる。日本でも著名なプロ経営者が増えてきているが、昨今はPEファンドによる投資や事業会社によるM&Aも活発になってきており、世の中で名の知れているプロ経営者以外にも、企業の価値向上にコミットして経営職に就くプロフェッショナルマネジャーの数は増えてきている。

Bはもっとわかりやすい。金融のエキスパートや人事のエキスパートのように、確固たる専門性を持ってプロフェッショナルとして働いている人は増えてきているし、この記事を読んでいる方の周りにも何名かはいらっしゃるかと思う。

AであれBであれ、プロフェッショナル人材には共通していることがある。そのうちの1つは、所属である。プロフェッショナル人材は「職業バンド」に属する。一方でオペレーショナル人材は「組織バンド」に属する。

組織バンドは想像しやすいと思う。いわゆる会社組織のことだ。オペレーショナル人材は組織固有の仕事に習熟することの重要性が高いため、会社組織に所属する考え方が強くなる。

一方で、プロフェッショナル人材は組織ではなく「何のプロなのか」「何で飯を食っている人間なのか」に拠り所がある。この拠り所を私は「職業バンド」と呼んでいる。職業バンドは見えないし明示されないことも多いが、確実に存在する。ファイナンス、人事、マーケター、営業といったわかりやすいものから、プロ経営者、プロマネージャーの様な定義されにくいものもある。共通していることとしては、組織を移っても組織固有の知識やノウハウではなく、機能や役割に固有の知識やノウハウで仕事を進められることにある。

要は、自分の能力や経験がハマる場であれば、組織を移っても高いパフォーマンスを出すことができる。もちろん即戦力としての採用であり、組織のやり方を覚えるのではなく、組織に新しい知恵を入れることが求められることも多い。

加えて、プロフェッショナル人材は「成果にコミット」している。前提事項で挙げたプロスポーツ選手のアナロジーがここにも当てはまる。試合に勝つためにプロとして仕事をすることが求められており、その過程や方法は基本的にプロにお任せだ。要は勝てればよいのだ(もちろんゲームのルールは守らなければならない)。

一方で、オペレーショナル人材は「時間にコミット」している。9時から17時まで、休憩1時間で働く、といったイメージだ。最近はフレックス制度の様な自由の利く働き方も増えてきているが、組織に制度が導入されているかどうかは大きな違いではない。「成果」で判断されているのか、それとも仕事の「過程」で判断されているのかが根本的な違いだ。時間管理されるということは、仕事が過程で判断されているということに他ならない。

プロフェッショナル人材とオペレーショナル人材の仕事の違い

プロフェッショナル人材とオペレーショナル人材の違いを、少し異なる角度で考えてみよう。オペレーショナル人材は「組織で確立された仕事に習熟する」ことの重要性が高い。一方でプロフェッショナル人材は「組織の抱える課題を特定し、解決していく」ことの重要性が高い

プロフェッショナル人材は組織ではなく「何のプロなのか」「何で飯を食っている人間なのか」に拠り所があり、「成果にコミット」していると先ほど言及した。プロスポーツ選手であれば、試合に勝つためにプロとしての仕事をすることが、プロとして飯を食い、成果にコミットして働くことになる。では、ビジネスにおけるプロフェッショナル人材は何をすべきだろうか。

それは、企業が成長したり、事業を大きくしたり、利益を出したりするためにプロとしての仕事をすることに他ならない。企業が成長したり、事業を大きくしたり、利益を出したりするためには、「組織の抱える課題を特定し、解決していく」ことが必要だ。だからこそ、プロフェッショナル人材にとっては「組織の抱える課題を特定し、解決していく」ことの重要性が高くなる

少し話は逸れるが、昨今プロフェッショナルファームへの就職が人気になっていることも、取り組める仕事の違いに起因しているのではないかと思う。プロフェッショナルファームは、基本的に組織の抱える課題を特定・解決することに特化した仕事だ。クライアントA社のオペレーションを業務上必要な範囲で理解することはあるが、それに何か月・何年も取り組んで習熟することは求められないし必要ない。組織の抱える課題を特定・解決することに全力を尽くした経験は、そのあと「買われる」ようになる。明確に言語化せずとも、そういったことを直感的に理解してプロフェッショナルファームで働きたいと考える人が増えているのかもしれない。

注意事項1:プロフェッショナル人材を目指すとしても、オペレーションへの習熟を軽視してはならない

プロフェッショナル人材とオペレーショナル人材を対比して上の様な説明をすると、「ではオペレーションへの習熟は無視して課題特定・解決の能力を高めることだけに注力した方がよいですね」と誤解する人が頻出するが、それは間違いである。

オペレーションに習熟する経験は、主に以下2つの理由から絶対に必要だ。
①組織運営上、どんな形であれ必ずオペレーションは発生するため、それを完全に避けてキャリアを終えることはできず、どこかでぶち当たる
②ぶち当たった時に、早く習熟するか、もしくはポイントを押さえて部下や専門組織に対応してもらうか、無駄を見つけて効率化するか等が求められる(何を求められるかはその時の自分のレイヤーによる)。いずれにしても、オペレーション業務に触れたことがないとパフォームしなくなり、オペレーションが進まないと仕事が完結しないので成果が出ない。

例えば、提案がどれだけ良い内容でも、コンプラチェックが進まないと正式な提案書として完成しない。経理処理が終わらないと振り込みが完結せず、お金が受け取れない等、オペレーションでミスをすると仕事の価値がゼロになるケースはいくらでもある。本論ではあくまでもプロフェッショナル人材を「目指す」というキャリアの方向性を検討しているのであって、オペレーショナル人材を目指さないからといってオペレーションを絶対に軽視してはならない

注意事項2:オペレーション人材としてのキャリアが必ずしも悪いわけではなく、メリット・デメリットを踏まえた選択の問題であることを理解する

オペレーション人材はプロフェッショナル人材と比較して上述したような違いがあるし、オペレーショナル人材の方が一般的には転職しても大きく待遇が上がることは少なく、ポジションアップもしにくい傾向にはあるだろう。

但し、オペレーショナルな職種は、会社の経営状況が安定さえしていれば、会社にとって必要な業務であり続けることも多く、安定的かつ仕事の予見可能性を高く持ちながら働き続けることができるという面もある

また、オペレーショナル人材は転職ができないということではない。例えば昨今では経理人材が市場に不足しており、経理は「超」のつく売り手市場と言われている。他にももっと業界固有の職種を見てみると、金融業界においては例えばマネーロンダリング防止業務の経験のある人は転職が容易と言われている。企業運営に必要だからこそ、オペレーション人材としての練度を高めることができれば明るい未来が見える

なお、ゼネラリスト×オペレーション(C. 総合職)はポテンシャル転職以外では道を見つけにくく、スペシャリスト×オペレーション(D. 専門スタッフ)の方が提供できる価値を訴求しやすい。

但し、どちらであっても絶対意識しておくべきことは、①転職するとしたら必ず「自社ルール」から「他者ルール」への順応が必要であること、②AIツールの進展による業務圧縮のトレンドは不可逆であること、の2つだ。人生を通じて絶対的に安泰な職種というものはもはや存在しないので、組織バンドを移ることは(頻度が低くても)発生しうるという前提でキャリアを考えていくことの重要性は変わらないだろう。

理解の補助:アナロジーとしてのキングダム(飛信隊の例)

ここで、より理解を深めるために漫画「キングダム」のキャラクターを題材にプロフェッショナル人材のキャリア構築を考えてみたい。キングダムを読んでいない方は飛ばしていただいて構わない。

信(出典

信は将軍になり、ゼネラリスト×プロ人材(A. プロフェッショナルマネジャー)となった。仮に秦国が崩壊しても、(当人の意思を置いておけば)信の実力を買って将軍として迎え入れる国は多くあるだろう。

信も当初はオペレーション人材から始めた。軍に入り、そこの規律やルール、兵法、武具の扱い方に習熟し、成果を出していった。兵としての実力が高かったため、早期にスペシャリスト×プロになった。そこから徐々にゼネラリストとしてのキャリアを積んでいった。

羌瘣

羌瘣(出典

羌瘣も信とほぼ同様だ。但し、もともと兵力が高かったため、オペレーション人材としてのキャリアは飛信隊ではあまり積んでいないが、村にいた時代の修行がそれにあたるだろう。

河了貂

河了貂(出典

河了貂はまさしくスペシャリスト×プロフェッショナル(B. エキスパート)の典型。軍師という特別な能力が求められる職業で成果を出し、プロフェッショナル人材としての地位を確立している。他の軍でも引く手あまたのキャリアだろう。

ちなみに、田有もスペシャリスト×プロフェッショナル。信のように戦況を読んで軍を率いるスキルが長けている描写はないので、兵としてのスキルを高めていく方向性のキャリアになると思われる。弓矢兄弟も同様だ。

尾平

尾平(出典

尾平は非常に良い事例で、ゼネラリスト×オペレーション(C. 総合職)の典型だ。飛信隊ではムードメーカーで、組織の文化醸成には重要な人物だが、正直飛信隊以外ではなかなか仕事がもらいにくいだろう(目に見える力がないため)。

その2:キャリア初期からプロフェッショナル人材になるためのステップ

本章では、キャリアピボットの重要性をお伝えしたい。専門性とピボット力、この2つを持ち合わせることでプロフェッショナル人材が完成する

具体的なステップに入る前に、押さえておくべきポイントを1つお伝えしたい。それは「自分の適性に完全合致した仕事には、一気に辿りつくものではなく、徐々に方向修正を図りながら辿りつくものだ」ということである。

次のイメージを見ていただきたい。多くの人は、「自分に合った仕事」を見つけることについて、左の様な感覚を持っている。あの人は天職と言えるような仕事を見つけていていいな、自分にもポンと見つかればいいな、というような感想と、羨望の想いを持つ。しかし、そんな風に運命の出会いがあるのは超レアケースである

天職(自分に適性のある仕事)への辿りつき方

むしろ王道とも言えるのは、右の様な辿りつき方だ。他人が天職を見つけている姿を見ると、その過程を知ることが難しいため、運命の出会いから全てが始まると考えてしまいがちだ。(そして、天職を見つけた人たちは、事後補正を行ってさも運命の出会いがあったかのように過去を振り返り、そう伝えるケースも多いので、更に勘違いが生まれてしまう。)しかし実際には、最初は大まかな方向を定め、実践を通じて適性を見極め続けながら幾度も方向修正を繰り返し、ようやく辿りつくものだ

以上の点を踏まえて、ステップ論に入ろう。

第1ステップ:キャリア最初期

どんな会社に入っても最初は必ずオペレーショナルな仕事から入る。コンサルティングファームの様なプロフェッショナルファームでも、情報の構造化や資料作成といった「型」から入る。ここからいかにしてプロフェッショナル人材としての一歩を踏み出すかが重要なポイントだ。

そのために押さえるべきことは、次の3つである。

  1. オペレーションに習熟する経験を積む
    →前述の通り後で必ず役に立つ

  2. 仕事をしながら自分の適性を見極める
    →仕事というバッターボックスに立つことで初めて適性が見えてくる

  3. 小さくても良いので実績を残し、周囲からの信頼を勝ち取る
    →実績を出して信頼を得ないと、その後自分の適性に合った仕事に移行していくことができない

既にその重要性は上で言及してきている部分もあるが、少し補足しておきたい。

1点目の「オペレーションに習熟する経験を積む」については、特にキャリアの最初期に取り組んでおくことが望ましい。理由は2つある。

まず仕事の経験が少ない時の方が周囲から教えてもらいやすく、また当人も「とりあえずやってみるか」と思えることが多いので、結果として習熟しやすい。加えて、オペレーションはその後のキャリア全般で関わらないことはないくらい頻出するものなので、キャリアの最初期に理解を深めておくとその後ずっと役に立つことから効果が高い

2点目の「仕事をしながら自分の適性を見極める」については、前提事項で説明した通り自分の「本当の」適性は実践を通じてしか見えてこない。最初期はいろいろな仕事に触れるチャンスなので、少しでも機会をもらったら全力で取り組んでみる。いくつかの仕事に関与するチャンスがあるのであれば、その中で自分が(勝手に)適性があると信じているものに一番近い仕事を選んで全力で取り組んでみる。そして率直なフィードバックを周囲から得る。

何度か取り組んでみて、「お、意外といけそうだな。周りからの評価も高そうだな」と思えるのか、「あれ、意外とだめだな」と思うのかによって適性がわかってくる。バッターボックスに立つとわかるというやつだ。実践を通じて自分がヒットを打てそうな領域を見定めていく。

3点目の「小さくても良いので実績を残し、周囲からの信頼を勝ち取る」については、当たり前の話ではあるが、実績を出した人であれば新しい仕事へのチャレンジを応援してもらえるが、実績がなければそれは難しいことから、キャリアの最初期に与えられた仕事でしっかり実績を出すことはその後のキャリア構築においてとても重要である。

転職する際には当然実績が求められるし、転職せずに社内で異動を希望するとしても、実績を出している人とそうではない人を比較すると、前者の方が圧倒的にチャンスを掴みやすい。理由は簡単で、「この仕事で実績を出したから、違う仕事でも頑張るだろう」と思ってもらえるからだ。

圧倒的な結果を残す必要はない。キャリアの最初期では、「ちゃんと仕事をして、成果を残した」ということが他人にもはっきりわかるくらいのレベルで実績を残せれば、後は周囲の人が自然と評価してくれる。

第2ステップ:最初のキャリアピボット

第1ステップの3点を押さえたら、最初のキャリアピボットを考え始める。自分の適性が何となくわかってきているし、実績も出して周囲からの信頼も一定程度勝ち得ている状態であれば、自分がどこに一歩踏み出すべきかがわかってきていて、かつそれを応援してくれている人もいるはずだ。

では具体的に「キャリアピボット」とは何をするのか。次の3点に大別することができる。

  1. 組織内の所属(部署)を変えず、仕事の内容だけを変える

  2. 組織内の所属(部署)を変える(部署異動する)

  3. 組織を変える(転職する)

ここで重要なのは、「自分の適性に合っていそうな仕事に取り組んでいく」ことが目的である、ということを再度認識することである。そのためには転職はマストではないし、部署を異動する必要がないケースもある。1つの部署にはいくつかの種類の仕事が存在することが普通だし、プロジェクト型の仕事の場合ではそもそも違うプロジェクトに参画すれば仕事内容がガラリと変わることも多い。転職や部署異動は手段である。目的と手段を倒錯してはいけない

目的が達成されるのであれば、環境変化をむやみやたらに起こす必要はない。環境適応にはそれ自体に労力がかかるため、新しい仕事への適応に割くことのできる時間や脳のメモリーが少なくなる。故に、適性のありそうな仕事に近づくことを考える上では、必ず上から順に検討していくことが重要だ

そして、キャリアピボットをしたら、第1ステップと同様に、愚直に適性の見極めと実績の積み上げを行う。その際に注意すべきことは、キャリアピボットをした直後はパフォーマンスが低下することが多いので、「あれ、自分は実はこの仕事向いていないのでは」と感じてしまうことがあるかもしれないが、すぐに諦めないということだ。

キャリアピボットをするとパフォーマンスが低下する事象には、大別すると3つの要因がある。

  1. 単に仕事に慣れていない
    →誰もが経験することであり、今後もキャリアピボットの度に発生する。時間が解決してくれることも多く、過度に気にする必要はない

  2. 新しい仕事や環境に適応する力がまだ低い
    →1点目に近いが、キャリアピボットを複数回経験すると適応力が向上し、過去の経験やスキルの活かし方がわかるようになってくる

  3. 新しい仕事が向いていない
    →適性の見極めが上手くいかないことも当然ある。しかし多くの場合数か月程度では本当の向き不向きはわからないので、一定期間が経過してから判断すべき(誰がどう見ても明らかな場合は除く)

要は、あまり早期に焦って判断しないことが重要だということだ。多くの場合、上の1点目や2点目の要因で、「一時的に」パフォーマンスが低下しているだけである。

第3ステップ以降:追加のキャリアピボット

20代~30代前半までのキャリアピボットとしては、あと1‐2回程度が限界だろう。第2ステップと同様にピボットを行い、回数を重ねるごとに精度を高め、より適性のある仕事に近づいていく。

平行して常にやるべきこと①:自分の適性や強み、その結果としての専門性や実績の言語化

ごく当たり前のことではあるが、第1‐第3ステップを経験する中で見極めた自分の適性を振り返り、言語化し続けることが重要だ。

これは自分の向かうべき方向性を具体化するためだけのものではない。言語化し続けることで、ポッと目の前にチャンスが転がってきたときに、それが自分にとって絶好のチャンスであるということに気づき、即座にアピールすることができるようにもなる

言語化していると、自分の中にアンテナが立つ。普段だったら見過ごしてしまっていること(例えばちょっとした仕事や空きポジションの案内、上司が雑談で話している他部署の求人情報等)に意識が向くようになり、チャンスを引き寄せられるようになる。そして、何故自分がそのチャンスを掴むべき人間なのかを具体的に説明し、アピールすることができる。毎日言語化を行う必要はないが、自分でペースを決めて常にアップデートし続けていくことが肝要だ。

平行して常にやるべきこと②:課題特定・解決型の仕事への取組みと機会の獲得

その1にて、プロフェッショナル人材は「組織の抱える課題を特定し、解決していく」ことの重要性が高いことを説明した。プロフェッショナル人材になることを目指すからには、日々の仕事で課題特定と解決に取り組んでいく必要がある。

そのために重要なことは2つある。1つ目は、「目の前の仕事に習熟する」ことや「上司・先輩に仕事を教えてもらい、再現する」ことだけではなく、「この組織(会社、部署、チーム、顧客等、仕事の実態に応じて解釈を変えてよい)や事業がより良くなったり、成長したりするために何ができるだろうか」という視点を持って仕事を見つめなおして、自分のやれることから能動的に取り組んでみるということだ。

要はある種の「姿勢」「心構え」だが、プロフェッショナル人材は同じ事象を見ていてもオペレーショナル人材とは異なる視点で組織や事業を眺め、課題特定・解決をするという「姿勢」「心構え」の違いから起因する仕事の仕方をする人たちなので、常にその視点を持てているかは想像以上に重要である。

2つ目は、「課題特定・解決がメインの仕事に関与する機会を探す」ことだ。課題特定や解決というものは、特定の誰かや部署が独占的に取り組んでいるわけではない。あらゆる仕事、あらゆる場面で必ず課題特定・解決を行うシーンがある。しかし、ひとたび課題が特定され、解決策が見出されてしまうと、それを実行して改善していくというフェーズに入ってしまい、課題特定・解決のプロセスが見えにくくなってしまいがちである。特にキャリアの初期においては、そのプロセスには携わる機会が少ないと言える。

だからこそ、自分の関わっている仕事や所属している部署において、課題特定・解決のプロセスに関われそうな機会があれば、積極的に取りに行くことが重要だ。例として、今までの仕事の進め方を大きく変えようとしていたり、通常業務に大きな問題が発生したりといった、「現状からの転換」が求められるタイミングにおいて課題特定・解決が見えやすくなる傾向にある。若手も潜り込むチャンスなので、積極的に関与していくとよい実践になる。


以上が「凡人による文系&専門性ゼロ人材のキャリア考」の概要である。まだまだ書ききれていない要素や上手く書き下せていない点が多くあるため、内容の加除修正や追加の論考のまとめ等を今後行っていく。


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