限界読書

知的独立者を目指す30代の越境的読書実践記録。ノンフィクション中心に読書と本について発…

限界読書

知的独立者を目指す30代の越境的読書実践記録。ノンフィクション中心に読書と本について発信。Amazonのアソシエイトとして、限界読書は適格販売により収入を得ています。 Twitter : https://twitter.com/genkaidokusho

マガジン

  • 凡人による生存のためのキャリア考

  • 書評集

    何も評していないので厳密には書評ではないのだが書評以外に良い言葉がないので書評と名付けている書評マガジンです。良い言葉を募集中です。

  • 仕事で役に立った哲学の考え方

    仕事で実際に役に立った哲学の考え方をまとめる

  • コラム

最近の記事

情報インプットが映像中心になりつつある現代におけるテキストによるインプットの優位性

私は、映像よりもテキストで情報を処理する方が好みである。例えば、画像や図解よりも詳細な説明が書かれたテキスト。アニメよりマンガ。Web講義よりも教科書。2つの選択肢があったら、常に後者である。 何故テキストの方が好きかというと、単純にテキストの方が早く情報処理できるからだ。加えて、理解したい部分をピックアップすることが容易であるし、情報処理のスピードを変えることができる。 まず、何故テキストの方が情報処理が速い理由は、ある情報を伝えるためのデータ量が、映像よりもテキストの

    • 一流の本質(著:クックビズ(株)Foodion、大和書房)

      一流シェフたちが、料理の観点からだけでなく、仕事人としての仕事術やプロフェッショナルとしての在り方について語っている本。プロフェッショナル・キャリアを考える上ではこれ以上ないくらい最高の内容だ。 どのシェフの仕事論も読みごたえがあるが、私が特に引き込まれたのは岸田周三氏のパートだ。岸田周三氏はカンテサンス(Quintessence)のオーナーシェフ。ミシュランガイド東京版の創刊から17年連続で三つ星を獲得し続けている店は日本に3つしかない。日本料理【かんだ】、フランス料理【

      • 佐藤可士和さん、仕事って楽しいですか? (著:佐藤可士和、宣伝会議)

        クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏が、仕事に関する学生からの素朴な質問に一問一答形式で答えた内容をまとめた本。とても読みやすく、難解なことは書かれていないが、答えている内容はクリエイターの仕事に留まらない本質論ばかりで、佐藤可士和氏のクリアな思考が味わえる一冊。 特に味わい深いのが、「対象の本質に迫る」という佐藤可士和氏のクリエイションのルールである。何かをクリエイトするというと、ゼロから何かを創造することがイメージされ、何か情報やアイデアを「足していく」思考が優位に

        • ソシュールから学ぶ「定義」の方法

          先日、以下記事で記述的な定義の方法と、対象の働きを定義する方法を紹介した。今回は別の軸で、物事を定義する上での考え方を深堀りしてみたい。 絶対的定義前回の投稿で取り上げた「記述的に定義すること」と「対象の働きを定義すること」には、共通点がある。それは、定義しようとしている対象を直接的に取り上げようとしている点だ。つまりどちらの定義の方法も、対象を他の何かと比較することなく、定義したい対象そのものを定義しにいっている。これを私は「絶対的定義」と呼んでいる。 このようなアプロ

        情報インプットが映像中心になりつつある現代におけるテキストによるインプットの優位性

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        • 凡人による生存のためのキャリア考
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        記事

          まぐれ(著:ナシーム・ニコラス・タレブ、翻訳:望月 衛、ダイヤモンド社)

          現代は "Fooled by Randomness"、直訳すれば「ランダム性に騙される」。本書は、人間の認知では正しく捉えきれないランダム性を主題に置き、ランダム性に溢れる世の中を上手く乗りこなしていくためのヒントを多く与えてくれる本である。 本書を読み進めると、自分がいかにランダム性を実態通りに認識できていないかが良くわかる。疑いを持たずに信じ切っていた「当たり前」が、ページを捲るごとにガリガリと削り取られていくような感覚を覚える。 著者が示す最も重要な示唆の1つは、ほ

          まぐれ(著:ナシーム・ニコラス・タレブ、翻訳:望月 衛、ダイヤモンド社)

          読書の理解度を上げるためにやっていること

          大学に入ってから本格的に本を読み始め、現在30代であるから、15年くらいは自分なりに試行錯誤しながら様々な本を読んできた。その中で、少しずつ本を読む時の自分なりのルールが構築されてきており、それを整理しておきたい。 その時関心のある本、読みたいと思った本、どうしても読まないといけない本を読む(全てはここから)これが最も重要である。単に人に勧められたから、流行っているからといった理由で本を読んでも、自分の中に残るものが少ない。しかし、自分がその時に本当に読みたいと思った本や、

          読書の理解度を上げるためにやっていること

          フェルマーの最終定理(著:サイモン・シン、訳:青木薫、新潮文庫)

          本書のタイトルである「フェルマーの最終定理」について、Wikipediaで上記のようにうまく要約されている。定理の内容は中学生でも理解できる。しかし、天才たちがひしめく数学の世界において300年以上に亘り未解決のままであった。その未解決の定理がどのように証明されていったのか、その経緯とドラマが本書では読み応えある形でまとめられている。 フェルマーの最終定理が証明されるまでのストーリーは、「現実は小説より奇なり」という言葉がこれ以上ないくらいぴったりと当てはまる。まず始まりか

          フェルマーの最終定理(著:サイモン・シン、訳:青木薫、新潮文庫)

          私の個人主義(著:夏目漱石、講談社学術文庫)

          夏目漱石が大正三年(1914年)に行った講演内容。タイトルにもある「個人主義」や「自己本位」といった言葉が、この講演のテーマである。 この講演における「自己本位」とは、ものすごく嚙み砕いていえば「自分の意見を持てるようにする」ということだ。ただし、自分の意見を持つと言ってもどんな意見でも良いわけではない。誰が何と言おうと、自分にとって物事はこう見えているし、故にこう考えていると主張できるくらいに強固かつ独自の意見を持てることを指している。 反対の概念は「他人本位」である。

          私の個人主義(著:夏目漱石、講談社学術文庫)

          モチベーションを仕事に持ち込まないことから全てが始まる

          仕事におけるモチベーションを考える時、多くの人は「モチベーションを上げるにはどうしたら良いか?」という問いを立てているように思います。何故かというと、当たり前のことですが、モチベーションが高いと仕事のパフォーマンスも上がるからです。しかし、いくらモチベーションを上げる方法を考えても、生きている間常にモチベーションを高く保てる人間は存在しないので、暗に「モチベーションが低い時はパフォーマンスが低くなる」と言っていることになります。 自分の仕事に対して対価を貰っている人をプロフ

          モチベーションを仕事に持ち込まないことから全てが始まる

          成果は瞬間風速ではなく積分で考える

          一芸に秀でている人についつい憧れてしまいます。いざという時に、あるベクトルでものすごく高いパフォーマンスを発揮している姿を見ると、いや〜カッコいいな、あんなことができたらいいなと感じさせられてしまいます。 このように、ある瞬間にものすごく高いパフォーマンスを発揮する仕事のやり方のことを、私は瞬間風速的な仕事と呼んでいるのですが、これはインパクトがあり、瞬間風速的な仕事ができる人は優秀な人と思われていることが多いと思います。事実、瞬間風速的な仕事ができるということは一瞬であっ

          成果は瞬間風速ではなく積分で考える

          秩序を作る仕事と秩序に習熟する仕事

          「VUCAの時代」とよく言われるが、世の中が予測可能だったことなどなく、いつ世のも予測不可能である。現代から過去を振り返るからさも予測できたかのように思えるだけで、その時代に生きる人にとっては世の中は常に予測不可能だ。 あらゆる活動は、そういった予測不可能な世の中で行われる。例えば狩猟採集していた時代には、いつどこでどのような獲物が現れるかを確実に予測することはできない。唯一できることは、獲物の行動パターンや自然の移り変わりを理解し、獲物との遭遇確率をできる限り上げることだ

          秩序を作る仕事と秩序に習熟する仕事

          敗者のゲーム(著:チャールズ・エリス、訳:鹿毛雄二、鹿毛房子、日本経済新聞出版)

          投資哲学の名著。読み継がれてきたベストセラーなだけあって、流行に左右されない本質的な投資哲学が語られており、投資関連の本としては珍しく誰にでもお勧めできる希少な本だ。 本書のタイトルでもある「敗者のゲーム」とは、「ミスをしないことが勝敗を分けるゲームのこと」を指す。テニスでは、プロは得点を取りにいくことで勝敗が決まるが、アマチュアはミスによって得点を失うことで勝敗が決まる。後者が「敗者のゲーム」である。 株式投資は敗者のゲームになったというのが本書の根底にある考えである。

          敗者のゲーム(著:チャールズ・エリス、訳:鹿毛雄二、鹿毛房子、日本経済新聞出版)

          アリストテレスから学ぶ「定義」の方法

          人と人がコミュニケーションする際、同じ言葉を使っていても全く異なることを頭の中に思い浮かべていることがある。仕事において、自分の話がうまく相手に伝わらない時や、話が嚙み合わない時には、自分や相手の伝達力や理解力が十分ではないことが要因である場合もあるが、そこで使われている言葉やコンセプトが十分に定義されていないことが要因であることも少なくない。 しかし、何かを定義することは想像以上に難しい。そもそも「定義」とは何だろうか。ネットで意味を引くと、「物事の意味・内容を他と区別で

          アリストテレスから学ぶ「定義」の方法

          多読術(著:松岡正剛、ちくまプリマ―新書)

          どうやったらもっと多くの本が読めるのだろうか。この問いを投げかけ、答えてもらう人物として、松岡正剛氏ほどふさわしい方はいないだろう。氏が現在進行形でコンテンツを積み上げ続けている伝説的なブックガイド「千夜千冊」は、本読みならば決して目を背けられない。圧倒的な読書量に裏打ちされた濃密な連載が展開されている。 今回取り上げている「多読術」は、そんな松岡正剛氏がどうやってそれほど多くの本を読み、消化し、自らの血肉としているのかを披歴している本である。本を読む人間であれば気にならな

          多読術(著:松岡正剛、ちくまプリマ―新書)

          データが溢れる時代における直観力の活かし方

          心理学において二重過程理論というものがある。 人間の思考や意思決定は、無意識的な過程と意識的な過程の2つの結果として生まれるという考え方だ。この考え方を深く研究し、わかりやすい形で広めたのがノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者、ダニエル・カーネマンである。二重過程理論を扱った代表作「ファスト&スロー」はベストセラーとなった。 この本では、思考には「システム1(早い思考)」と「システム2(遅い思考)」の二つがあるという概念が示されている。 システム1は、いわゆる直感であ

          データが溢れる時代における直観力の活かし方

          転職先で活躍する人は"unlearn"が上手い

          私は数度の転職経験があり、そのうちの1社は某コンサルティングファームです(現在はそのファームを離れています)。コンサルティングファームは人材の流動性が非常に高い、つまり人の出入りが(少なくとも日系大手企業の平均値と比較すると)激しい職場でした。毎月何人も入社し、少なからぬ人が去っていくということが日常茶飯事です。 そのファームでは新卒も採用していましたが、中途入社者の比率が高く、あらゆる業界からファームの門を叩いて入社してきました。コンサルティングファームに入社しようとする

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