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歴史を変える戦い。長野県高校女子サッカーインターハイ準決勝

前置き

これから書く記事の内容は、2023年の長野県高校女子サッカー、5月27日に行われたインターハイ準決勝2試合についてです。

引用元:長野県サッカー協会HP

今年の長野県大会は、単独出場4チーム、合同(北信+東信、中信+南信)2チームの6チームにより行われています。
かつては単独で出場していた数チームも、部員不足の煽りを受け単独では試合にならない(合同でも人数が足らず、試合終了までずっと10人以下で戦ったチームも)この現状は寂しい限りです。
小さな子どもたちの年代に対する普及活動としては、最近「JFAなでしこひろば」など結構な頻度で長野県内でも活発に行われていると思いますが、少子化やコロナの影響をもろに受け、更に中学年代の優れた才能は県外の有力校にチャレンジし、県内の高校世代競技人口はどんどん減少していく現状を、県サッカー協会や県内のWEリーグ所属チーム、北信越リーグ所属チームなどはどう考えているんでしょうか。既に各高校にどうにかできるレベルではないように外野から見て感じます。

準決勝①佐久長聖vs松本国際

5月27日の10時から、大町運動公園サッカー場で準決勝第1試合の佐久長聖vs松本国際が行われました。

多くの旗
挑戦

上記の競技人口減少の流れの中、松本国際は新たに単独での参加を初めて果たしたチーム。1回戦を快勝し準決勝に臨みましたが、相手の佐久長聖は、この大会3連覇を目指す強豪。結果は11-0で佐久長聖の圧勝でした。
しかし、松本国際にとってはこの日が新たな挑戦の第一歩。前半早々に負傷での選手交代があったり難しい試合の中、後半の数分間は松本国際が押していた時間もあったり、試合終了間際に佐久が右からのクロスに左から飛び込んだ選手がダイレクトで放ったシュートを、GKが足で弾き出したり。やられっぱなしで終わらなかった試合でした。

準決勝②松商学園vs東海大諏訪

東海大諏訪というチーム

東海大諏訪ボール

東海大諏訪の女子サッカーチームを見始めたのは、2020年のコロナ禍以降。
その前年から松商学園女子サッカー部を応援していた中で、相手チームとして対戦が多く、同世代のAC長野パルセイロシュヴェスターともちょくちょく対戦があった相手。
コロナ以降で無観客試合もあった中、県内の高校女子サッカーの勢力はトップが松商学園から佐久長聖に代わり、東海大諏訪が3番手、という感じでした。
東海大諏訪にとっての不運は、松商学園との相性が絶望的に悪かったこと。ただ戦績ほど力の差はないように思え、今や長野県女子サッカーNo.1ウォッチャーのYさん(多分)が「見ていて心臓に悪い」と評する毎回の接戦。
特に新人戦は白熱し、2021年の新人戦決勝は、準決勝で佐久長聖に1-0で勝利して勢いに乗る東海大諏訪と松商学園の対戦。後半に東海大諏訪が先制、直後に松商学園が追い付き、1-1同点のままPK戦に。東海大のGKが2本目と4本目をセーブしたのに対し、松商学園GK薬袋選手が2、3、4本目を3連続セーブ。PK3連続セーブ(全て枠内シュートをストップ)を私が生で見たのは今のところこの試合だけ。それくらい神懸った読みとセーブでした。そして先行の東海大諏訪の5人目が、両チーム合計9人目で初めて枠を外し、松商学園が県新人戦優勝を飾りました。
2022年の新人戦は、準決勝で対戦。前半を2-0でリードした東海大諏訪に楽勝ムードも漂った中、後半開始早々のゴールからあっという間に逆転した松商学園が2-3で勝利、決勝に進出。東海大諏訪にとって、松商学園は鬼門とも言える存在でした。両チームとも、この時のメンバーが進学して最初の大舞台。前の試合で勝ち決勝に進んだ佐久長聖への、挑戦権を決める試合でもありました。
私が見始めた頃から、東海大諏訪は粘り強い守備、スピードのあるサイド、軸になる長身FWという印象でした。2020年新人戦1回戦で、1年生ながらFK含む6得点(だったと思う)を決めたFW熊谷選手に注目していたのですが、チーム事情からか2年生以降はサイドや中盤を務めることが多くなり、残念に思っていました。その1学年下の長身FW中嶋選手は、FWのまま10番となり、今年が3年生。4年も見ていると愛着も沸くもので、年々差が詰まっている印象があったり、今年の北信越U-18リーグで強豪相手に点差のつかない試合をしていたり(首位の帝京長岡に0-1など)、今年の東海大諏訪には松商学園と佐久長聖相手に互角以上に戦えるのではないかと期待する声も聞こえていました。

前半

先制点

5月27日の12時30分から、大町運動公園サッカー場で準決勝第2試合の松商学園vs東海大諏訪が行われました。
前半、開始数分で松商学園が得たCK。これをクリアしたところから東海大諏訪のカウンターが発動し、最後はキャプテン山口選手がゴール前に走り込みシュート。これが決まって東海大諏訪が先制。

ロングシュート

更に東海大諏訪は、吉原選手の高い軌道のミドルシュートが決まって追加点。

反撃の1点

2点差となった直後、松商学園も11番柄澤選手の突破から、10番笠井選手が決めて1点差。松商学園1-2東海大諏訪で前半終了。

後半

3点目

後半開始早々、クロスに飛び込んだ東海大諏訪FW中嶋選手のヘディングがネットを揺らし、東海大諏訪に追加点。試合展開的には、前半と後半の開始数分での失点が松商にとっては悔やまれるし、東海大諏訪にとってはこれで一気に試合の主導権を握ることに。

ダメ押し

5月としては異常な蒸し暑さの中、主審も給水タイムをとり対策するものの、足が攣る選手が数人。そんな中、足が攣ってピッチ外で治療を受けていた東海大諏訪の吉原選手が、治療後にピッチ内に戻ったものの、元のポジションまで戻る余裕が無かったのか監督の作戦か、そのまま最初とは違うFWの位置へ。数分後、その吉原選手の足元にボールが。多分足を攣ったまま無心で放った左足シュートが決まり、東海大諏訪に4点目。
そのまま、松商学園1-4東海大諏訪で、ゲームセット。

試合終了後

大歓喜

私とYさんは、メインスタンドとは反対側から試合を見ていましたが、その横にいた東海大諏訪の部員応援団は、試合開始前から素晴らしいテンションの高さでした。吹奏楽部から借りてきたような小太鼓を使い、コロナ禍でしばらく聞いていなかった大声援。令和2年度には中止の憂き目も味わったインターハイ県予選にも応援と歓声が戻ってきました。
そして、試合終了と共に東海大諏訪ベンチと応援団は歓喜の渦。試合に出ていた選手のほとんどは涙。この試合に賭ける意気込みの時点で、松商学園は圧されていたのかなあとも思いました。スタンドや応援団に挨拶して喜ぶ東海大諏訪の選手の中から悲鳴が。ずっと足を引きずっていた吉原選手が喜びと我慢の限界だったか、応援団の前で緊急治療。それほどまでに、精神力が東海大諏訪イレブンを突き動かしていた試合でした。
東海大諏訪は6月4日、長野Uスタジアムで佐久長聖とインターハイ県決勝を戦います。それまでにはまた治療をして万全の状態で戻ってきますように。
松商学園にとっては、点差と同様厳しい結果となった試合。今後は北信越U-18リーグを戦いつつ、例年通りなら7月に行われる皇后杯長野県予選が次の大舞台となります。6月10日11時には筑北村サッカー場で、U-18北信越リーグで今回と同じカード「松商学園vs東海大諏訪」が予定されています。

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