抗体医薬、喘息、基礎研究など

今回は抗体医薬9報、アレルゲン免疫療法1報、アナフィラキシー1報、気管支喘息10報、食物アレルギー2報、薬物アレルギー・過敏症2報、アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎2報、EGPA 1報、その他・基礎研究7報です。

初めの2報は症例報告ですが私たちからのものです。

<抗体医薬>

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34386404/
56歳の女性。口唇と顔面の腫脹を繰り返し、ステロイドを減らすと再燃。喘息と副鼻腔炎あり。好酸球数632、ANCA陰性。好酸球性環状紅斑と診断した。ベンラリズマブの投与で速やかに皮膚・気道症状が消失し、ステロイド依存から脱却(慶応大学)
Asia Pac Allergy. 2021 Jul 12

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34386403/
経口ステロイド依存性重症喘息の51歳女性。貝類と小麦、キウイの食物アレルギー症状がオマリズマブの開始・中止・再開に伴って改善・増悪・改善。同薬は食物アレルギー合併重症喘息の治療オプションとして検討(慶応大学)
Asia Pac Allergy. 2021 Jul 9

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33746062/
デュピルマブが気道型NSAIDs不耐症患者のアスピリン投与可能閾値を増加させる可能性があり、これらの患者に非選択的COX阻害剤を臨時で使用できる可能性があるというケースシリーズ(米国)
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Jun

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34144110/
喘息患者における生物学的製剤や全身ステロイドの使用とCOVID-19との関連解析:両剤はSARS-CoV-2感染のリスク増加と無関係。一方,全身ステロイドは,COVID-19の重症化と死亡の独立した危険因子(イスラエル)
J Allergy Clin Immunol. 2021 Aug

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34172470/
3年以上メポリズマブの継続投与を受けた患者を、中止(プラセボに変更)群151人と継続群144人にわりつけ。中止群は継続群よりも最初の増悪までの期間が有意に短く(HR 1.61, 95%CI 1.17,2.22]、喘息のコントロールが悪化した
Eur Respir J. 2021 Jul 15

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34163180/
12歳以上の重症好酸球性喘息患者にメポリズマブを投与した576人のデータの後解析:血中好酸球数が300個/μL以上あればアトピー性疾患やダニ感作の有無に関わらずACQ-5スコアがプラセボよりも-0.75、-0.73、-0.78改善され、臨床効果がみられた。
J Asthma Allergy. 2021 Jun 14

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34356836/
気管支拡張症は気道好中球性炎症が原因と考えられていたが、最近では2型炎症亢進型が存在すると考えられている。2型炎症亢進気管支拡張症にメポリズマブ、ベンラリズマブを投与したところ増悪が減少し、その効果は2年後まで持続した(イタリア)
Biomedicines. 2021 Jul 2

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34347947/
メポリズマブの100mg/4週投与(喘息の用量)と300mg/4週投与(EGPAの用量)はともにEGPAに対して有効(12-24週後の完全奏功率30-35%)(European EGPA Study Group)
Arthritis Rheumatol. 2021 Aug 4

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34403803/
重症喘息に対してTezapelumab(TSLP抗体)の投与によりIL-5やIL-13などの2型サイトカインのレベルが低下することが予想される(アストラゼネカ社、アムジェン社)
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Aug 14


<アレルゲン免疫療法>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34386408/
ダニ喘息患者でラッシュ法アレルゲン免疫療法(rush-IT)を受けた群12人と受けなかった群12人との比較:rush-IT群で3人にアナフィラキシーが起きたが重症例はなく、短期間で回復した。rush-IT群で喘息コントロールが改善し吸入ステロイド投与量が減った。rush-IT群は対照群よりもダニ刺激による末梢血単核細胞からのIL-5, 13の産生が少なかった(埼玉医大)
Asia Pac Allergy. 2021 Jul 19

<アナフィラキシー>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34365055/
妊娠中のアナフィラキシーの頻度は1.5~3.8人/10万人。アナフィラキシー関連妊産婦死亡率は0.05人/10万人。49%-74%は帝王切開中に発症し、β-ラクタム系抗菌薬(58%)、ラテックス(25%)、麻酔薬(17%)が主な原因。妊娠中のアナフィラキシーには非妊娠患者と同じ管理・治療が提案されている。(フランス)
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Aug 5

<気管支喘息>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34274049/
スコットランドでの小児を乗せた車内での喫煙を禁止する法律施行は,小児全体や高年齢層の重症喘息による入院には影響しなかったが,未就学児の喘息増悪入院の減少と関連していた(英国)
Lancet Public Health. 2021 Aug

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34252377/
従来の小児喘息フォローでは寛解を期待して治療強度を漸減していたが、COVID-19感染拡大時には治療強度を維持して増悪のリスクを減らすことが提案される(米国)
Lancet Respir Med. 2021 Aug

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34403838/
妊娠中の重度の喘息増悪の発生率は9.2%であり、ICSの中/高用量投与、アクションプランの有無、妊娠前1年間の喘息増悪歴が増悪率の増加と関連した(オーストラリア)
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Aug 14

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34376437/
GERD合併喘息に対するプロトンポンプ阻害薬(PPI)が朝のピークフローを改善するかどうかのメタ解析: 14件の無作為化臨床試験(被験者数2182名)を統合した結果、PPIの効果は認められなかった(中国)
BMJ Open. 2021 Aug 10

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34244105/
オンラインアンケートでCOVID-19流行下での喘息治療に対する考えや臨床的アプローチの変化、患者の行動変化などについて質問:ネブライザー使用や定期的な肺機能検査が回避され、患者定期受診キャンセルや治療非継続がみられた(日本呼吸器学会)
Respir Investig. 2021 Jul 6

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34353798/
パティオ(宅地の中庭)、運動場、スポーツ場での喫煙を禁止した2015年のカナダ・オンタリオ州無煙法改正により、同地域の喘息患児の医療サービス利用率が22%減少した
BMJ Open. 2021 Aug 5

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34356828/
成人喘息患者132人(増悪なし80、増悪あり52)でのバイオマーカーの解析:好酸球数300以上(RR = 1.88; 95% CI, 1.26-2.81)またはFeNO 20以上(RR = 2.10; 95% CI, 1.05-4.18)で増悪リスクが上昇(台湾)
Biomedicines. 2021 Jul 1

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34320686/
喘息予測指数(API)の有用性の評価:生後30カ月の時点で研究者がAPIを決定。307人中44人(14.3%)がAPI陽性であり、APIには母体の肥満度、経口避妊薬の使用歴、出生時体重、胎盤重量、胃食道逆流症、急性中耳炎、気管支炎、クループ・肺炎、臍帯血アディポネクチンなどが関連(チリ)
Pediatr Pulmonol. 2021 Jul 28

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34331994/
成人発症職業性喘息のバイオマーカーの探索研究:小麦粉、イソシアネート、溶接ヒューム患者61名の血液中の免疫細胞等を調査。5つの遺伝子からなるバイオマーカーのサブセットを特定した(フィンランド、スウェーデン)
J Allergy Clin Immunol. 2021 Jul 28

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34254951/
三次小児病院における喘息受診データ(N=16,779,739)と地域の微小粒子状物質(PM)濃度の関係の分析:6歳以下の小児においてPM濃度と小児喘息受診が相関。マウスモデルではPMがHDM誘発気道炎症を悪化させ、IL-33中和抗体投与で改善(中国)
Aging (Albany NY). 2021 Jul 13


<食物アレルギー>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32634325/
食物アレルギーを中心とした小児アレルギー疾患のレビュー:RCTでは経口耐性誘導と原因食品の早期導入により、ピーナッツや卵アレルギーの有病率を下げることに成功している。米国では乳児離乳のガイドラインが改正され、ピーナッツアレルギーの予防のために摂食を積極的に推奨している
Annu Rev Cell Dev Biol. 2020 Oct

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34333192/
食物アレルギー(FA)に対する経口免疫療法(OIT)について成人FA患者および小児FA患者の両親/介護者を対象にした知識、経験の調査:72%が調査前にOITを知らず。年収10万ドル以上世帯・大学卒の回答者はでは認知率が高い(米国)
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Jul 29

<薬物アレルギー・過敏症>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34343674/
ポリソルベート80への皮膚テスト陽性患者でのmRNAコロナワクチン初回投与後の2相性アナフィラキシーの報告(米国)
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Jul 31

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34364538/
アスピリン増悪呼吸器疾患(AERD)の総説:AERDは喘息患者の5-15%に発症し、鼻ポリープ併発患者ではより頻度が高い。鼻ポリープは生活の質を低下させる大きな要因。過去10年間で出た2型炎症標的抗体医薬はAERD患者の管理にも有用(英国)
J Allergy Clin Immunol. 2021 Aug

<アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34320489/
臨床的なアレルギー症状がないにもかかわらず、皮膚プリックテスト(SPT)陽性や血清アレルゲン特異的IgE陽性である「無症候性感作」の原因推察:ダニアレルギー性鼻炎(AR)患者と無症候性ダニ感作者との間では、皮膚プリックテストや好塩基球刺激試験結果が異なった。(抗原特異的免疫寛容の指標となると考えられる)IgG4だけでは、無症候性ダニ感作者とAR患者を区別できない(中国)
Int Arch Allergy Immunol. 2021 Jul 28

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34371082/
好酸球性鼻ポリープを伴う副鼻腔炎とアスピリン増悪性呼吸器疾患では2型炎症による気道上皮リモデリングにより炎症誘発物質の過剰発現、粘膜保護因子の喪失、組織の炎症を持続させる抗ウイルスプログラムの調節不全が起きている(米国)
J Allergy Clin Immunol. 2021 Aug 6

<EGPA>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34032390/
EGPA患者354例の約7年間の解析:ANCA陽性例では神経や腎臓の病変が多く、陰性例では心臓や肺病変が多い。12.6%の患者が2年以上の治療中止期間があった。全体の死亡率は4.0%(米国・カナダ)
ACR Open Rheumatol. 2021 Jun


<基礎研究・その他>

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33569761/
乳児期のワクチン接種がアレルギー疾患のリスクを高めるのではないかという仮説の検証:BCG、百日咳、麻疹ワクチン接種がその後のアレルギー疾患を増加させる証拠はない。さらにBCGと麻疹ワクチンの接種が湿疹のリスク低下と関連していることが示唆された
Allergy. 2021 Jul

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34324715/
IL-2/IL-2抗体(IC6)複合体による制御性T細胞(Tregs)誘導:ダニ抗原喘息モデルマウスと小麦アレルギーモデルマウスにIL-2/1C6を投与すると、アレルギー症状、特異的IgE産生、獲得免疫反応が有意に改善した。IL-2/1C6投与により喘息モデルマウスではILC2が増加し、食物アレルギーモデルマウスではILC3が減少した。(フランス)
Allergy. 2021 Jul 29

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32418317/
ダニ喘息マウスモデルにおいて、抗CD127モノクローナル抗体の腹腔内注射は肺組織におけるTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)およびケモカイン(CCL5/RANTES)のmRNA発現を有意に低下させた(フランス)
Clin Exp Allergy. 2020 Jul

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33558372/
グルコーストランスポーター1やグルタミナーゼを阻害すると、ダニ+LPS刺激よる喘息増悪マウスモデルでの好酸球増多、T細胞のサイトカイン産生、気道過敏性が抑制され、デキサメタゾンの免疫抑制作用が増強された(米国)
J Immunol. 2021 Mar 15

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34086364/
エオタキシン(CCL11)がヒト好塩基球からのメディエーター遊離を促進する(帝京大学)
Allergy. 2021 Jun 4

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34266437/
OVA感作させたマウスにOVA吸入チャレンジ後にRSV-A2に感染させたところ感染6時間後にTSLPとIL-33が検出され、好酸球、好中球、ILC2、ILC3が増加した。IL-33中和抗体によりILC2と好酸球、IL-5、IL-13、CCL17、CCL22が減少した(米国)
Respir Res. 2021 Jul 15

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34301840/
ステロイド抵抗性の気道炎症のマウスモデルに対するデキサメタゾンの全身投与とIL-27の鼻腔内投与を組み合わせが有効。IL-27を介してFoxp3+制御性T細胞(Tregs)を直接刺激することが有効と考えられた(米国)
J Immunol. 2021 Jul 23

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