墓参りの恐怖
お盆の中日…
私は一人で両親の墓参りに来た
奇妙な事に
盆だというのに
私の他には墓参りに訪れる
人の姿は無かった
墓の掃除を終えた私は
供え物をし線香を上げて
父母と先祖に祈りを捧げた
そして、帰ろうとしたところ…
急に立ち眩みがして
そのまま私は気を失ってしまった…
目が覚めると
辺りは暗かった
どのくらい気を失っていたのだろう…?
墓地には人の気配もなく
明かりと言えば
離れた所にある駐車場の照明だけだ
墓地の暗がりを駐車場へ進む
「ボコッ!」
足元の地面から何かの音がした
驚いて走り出そうとした私の左足首を
何かが掴んだ
「ひいぃっ!」
私は叫びながら前のめりに地面に倒れた
左足を掴むモノを右足で蹴った
繰り返し何度か蹴って
ようやく左足首が解放された
私は一度も後ろを振り返りもせず
恐怖のあまりに
もつれそうになる脚を懸命に動かし
駐車場を目指して必死で走った
ようやく駐車場にたどり着き
明るい所にでた私は
安堵の吐息をついて
後ろの墓地を振り返った…
そこには
明かりがまったく無く
虫の声以外何も聞こえない
静かな暗がりの中に
ひっそりと墓地が
不気味に広がっているだけだった
追いかけてくる者などいない…
人も獣も…
「何だったんだ、あれは…?」
私は墓を掃除するために持ってきた
手桶や柄杓、箒に塵取りなど
何も手に持っていなかった
だが…
墓まで取りに戻る気はしなかった
「うっ…!」
痛む左足首を見た私は愕然とした
そこには赤紫色に腫れた手形が付いていたのだ
私は急いで自分の車に乗り
エンジンをかけてすぐに車を動かし
ヘッドライトを墓地の方へと向けた
「うわああっ!」
私は急いで車を発進させて駐車場を出た
そして道路に入るとすぐに
アクセルを思いっ切り踏んで加速させ
ひたすら車を走らせた
大通りに出て
他の車の行き来を見た私は
やっと安心して安全運転に戻り
自分の家への帰路に就いた
次の彼岸の墓参りには
絶対に誰かと朝方に来るようにしよう
私は自分が
ヘッドライトの中に見た光景は
生涯、誰にも話すまい
そう、固く心に決めた…
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