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【スマブラSP】「地元最強」が存在しなくなった現代スマブラについて

リンク使いのgenです。スマブラDXの競技シーンで活躍し、日本人では初めてのプロスマブラーになったaMSaさんの本を読みました。

この本で取り上げられるスマブラDXでは、オンライン対戦が実装されていませんでした。そのため対戦相手は地元の友達などに限られ、そうしたコミュニティでトップに立った人はいわゆる「地元最強」になります。

自分はスマブラSPから入った新規勢であり、オンライン対戦がないスマブラDXの環境はスマブラSPと対比的で、非常に新鮮なものに見えました。

この記事では、オンライン対戦が実装されたことで「自分より強い人の存在が無限に可視化されるようになった」「『地元最強』は成り立たなくなった」ということについて書いてみます。

「地元最強」と「ガチ勢」

スマブラDXにハマり、地元では最強クラスとなったaMSaさんが、初めての遠征でスマブラDXガチ勢の対戦会に参加して、ガチ勢たちのあまりの強さに衝撃を受けるシーンがあります。

ガチ勢の強さは僕にとって未体験のものだった。どのプレイヤーも地元最強レベルとは比べ物にならないほど強く、経験豊富だった。

…(中略)…

対戦会で初対戦したフォックス使いは何をやっているのか動きが全くわからなかった。 こちらの攻撃が通らず、動きを読んだと思ったらギリギリで攻撃を避けられてしまう。また、フォックスの空中下攻撃のドリル→リフレクター→上スマッシュという非常に難しい操作が要求されるコンボを簡単にこなしてきたため、「地元最強プレイヤー」と「ガチ勢」の違いを思い知らされた対戦会となった。

同時に、スマブラの奥深さを知ることができ、僕のスマブラに対するモチベーションはさらに高まっていった。

aMSa「日本人初 プロスマブラーの軌跡」

「何をされているか分からない」「自分の狙いがまったく通らない」…格上の選手とガチ対戦したことがあるスマ勢なら、なんとなく理解できるシーンではないでしょうか。

当時のaMSaさんは「地元最強」だったわけですが、初めての遠征でガチ勢たちの強さを思い知らされることになります。

「地元最強」について、もう一つ例をあげます。インターネットが普及する前の時代の将棋界について描いた大崎善生「将棋の子」という作品があります。

この本では、「地元最強」だった子たちが「ガチ勢」の集団である奨励会に入って打ちのめされる描写があります。

全国から集まったプロを志す将棋の天才少年たちは奨励会に入会して、そこで初めて自分が天才でも何でもなく、将棋棋士を目指すごく普通の人間の一人であることを知る。地方にいたころには大人にさえほとんど負けることがなかった少年も、自分よりも年下の子供に手もなくひねられるという現実が待ち受けている。一度、天才の集団に入ってしまえば、どんなに優れていたとしてもごく平凡な存在となってしまうのだ。

大崎善生「将棋の子」

スマブラDXと、この時代の将棋は「オンライン対戦が存在しない」「対戦相手が限られている」ことで共通しています。その特徴ゆえに「地元で自分に勝てるやつはいない」という状態が生まれます。いわゆる「地元最強」ですね。Youtubeなどでトップ選手の対戦を見る機会はあっても、トップ選手と対戦する機会はほぼなかったでしょう。

ここで「地元最強」ではないその他大勢のプレイヤーたちは、おそらく遠征もせず、ガチ対戦の世界には足を踏み入れなかったのではないでしょうか。地元という限られたコミュニティでトップに立ち、それでも飽き足らなかった一部の人だけがガチ対戦の世界にステップアップする、一種の選抜テスト的な環境が「地元」だったのではないかと想像します。

オンライン対戦が普及した後の世界

いっぽうで、スマブラSP環境ではオンライン対戦が実装されており、日本中のプレイヤーと対戦ができます。この環境では、前述した選抜試験的な「地元」はもう存在しません。「地元」での選抜を受けず、いきなりガチ勢たちと戦うことになるわけです。

このため、スマブラSPをはじめて「いっちょオンラインやってみるか」と手を出したプレイヤーのほとんどはいわゆる「逆vip」に落とされます。

逆vipである自分の戦闘力を見せられるのは、自分の弱さを突きつけられることに他ならず、まぁしんどいです。これを書いている自分自身、スマブラSPをはじめて数か月は逆vipを一生うろうろしていました…。

仮に「逆vipを脱出した」「vipに到達した」といったことを達成した場合でも、不思議とそこで満足する人は少ないです。たいていはより上を目指し、勝てない自分に萎えたりしながらスマブラを続けることになります。

私見ですが、これは「まだまだ強い人が無限にいる」ことが世界戦闘力やスマメイトのレートで可視化されているからではないでしょうか。(TwitterやYouTubeが普及して、強いプレイヤーの活躍が見えやすくなったことも影響していそうです)

しかし、世界戦闘力を限りなく高め続ける作業は、決して楽しいことではありません。ストイックで、お金と時間を集中的にスマブラに注げるごく少数のプレイヤーを除いては、右肩上がりに強くなり続けることは難しいからです。

                             江島絵理「対ありでした。」

自分より強い人が無限にいて、そのことを常に見せつけられる環境では、自分自身の実力の向上が感じられないと、モチベーションの維持が難しくなります。人間は「今の自分の実力より少し上」「自分がぎりぎり超えられるくらいのハードル」が見えているときにモチベを出す生き物です。

あえて対戦相手を限定するという択

そこで逆説的ですが、オンラインで誰とでも対戦できる現代のスマブラ環境においては、あえて対戦相手を限定することがモチベーションの向上につながるのではないかと考えます。

一例として、初スマというオフ大会があります。

この初スマでは「vip未満」「vip前後」といった実力制限があり、いわゆる上位勢は対象外となっています。この大会の人気はすさまじく、大会の参加申請が開始されると一瞬で枠が埋まってしまうそうです。

こうした大会は実力制限があるため、前述した「無限に格上が見える環境」にはならず、自分と同等か少し上くらいのプレイヤーとだけ対戦できる(=かつての「地元」に近い環境が作れる)ことも人気の一因なのではないのでしょうか。宅オフや小規模な対戦会の需要も、こうした心理に関係しているのではと思います。

まとめ

一部、オンライン対戦の悪口みたいな内容になってしまいましたが、オンライン対戦を否定する意図はありません。オンライン対戦ができるメリットもたくさんありますし、今さらオンライン対戦を廃止することは現実的ではないと考えます。

ただ、この記事に書いたようなスマブラSPの対戦環境をきちんと知って、自分がどういうフィールドで戦っているのか認識することは重要だと思います。そうすれば、必要以上に「俺よわ…」と萎えることも減るんじゃないでしょうか。

今回、aMSaさんの本を読んでそのへんを考えたため、記事にまとめました。少しでも参考になる点があれば嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました!

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