なぜ自民党は改憲を目指すのか?

今年で日本国憲法が施行されてから77年、日本国憲法は「古びた」ものであり、時代に合わせた憲法に「改正」しようという動きが加速している。
岸田首相は改憲派の集会で「改憲は先送りできない」と述べた。
自民党がなぜ改憲を目指しているのか考えてみたい。

そもそも憲法とはなにか。
憲法は国民が守るべきものだと勘違いする人がいるが、正しくは国家権力、すなわち公務員が守るものである。
憲法とは、国家権力を縛るために国民が制定するものなのである。

単に憲法と聞くと、どこか実生活から遠く離れたような感じがするが、実際に憲法は生活に密接なものである。

たとえば、仮に君が無実の罪で容疑をかけられたとする。このとき、仮に憲法というものがなければ、国家権力は「正義」の名のもとに、確実な証拠がなくとも、君の電話を傍聴したり、勝手に家宅捜索したり、挙句の果てに自白するまで拷問にかける、なんていうことが可能になってしまうのである。
まさか、国家権力がそんなことはしないだろうと思うかもしれない。
しかし、実際に戦前の特高警察は無実の罪の人々を拷問し、罪をでっちあげたりなんてことを平気でしていたのである。
一般市民が国家権力によって自由や権利を奪われないために、憲法というのはとても重要なのだ。

自民党の目指す改憲の核心は9条改憲と緊急事態条項の創設にある。

いまの日本においては、憲法9条で戦争放棄をうたっているため、(憲法違反かどうかの議論はあるが)軍隊の代わりに自衛隊を保持している。
自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力組織」であるから、他国の軍隊のように徴兵制の導入をすることもできないし、他国に侵略戦争をしかけることもできない。

権力側にとってみればこれが非常に厄介なのだ。

有事の時に徴兵制を導入したりなど、国民の自由や権利を大幅に制限することができないのは権力にとって都合が悪い。
仮にアメリカが台湾で戦争を始めたら、自民党は日本のメンツのためにアメリカの戦争に自衛隊を参戦させたいし、万が一のことがあれば徴兵制を導入して軍備拡張を図りたいのである。

自衛隊のままでは他国に侵略されるかもしれない、というのは詭弁である。
単に自衛のことだけを考えれば、自衛戦争が認められ、自衛のための最小限度の実力(最小限度を大幅に超えているが)を保有する自衛隊だけで十分だからである。

他国に侵略されるという、合理的に考えればあり得ない話を持ち出しているが、改憲を狙うその核心は、軍備拡張にあるのだ。

そもそも、自民党は「国家のために自分の命を捧げることは素晴らしいことだ」と考えている。
権力側に取ってみれば、一般市民が自らの命を国家のために捧げることで、権力側に都合の良い社会を維持することができるからである。
いまの日本において、大企業が企業献金という名の賄賂を渡し、自民党政権が大企業を優遇するという癒着構造がまかり通っているわけだが、権力側にしてみれば、そういう構造を維持し一般市民が汗水垂らして働く中で自分たちだけ甘い汁を吸いたいのである。

憲法とは一般市民のために国家権力を縛るものであるから、権力側が憲法を変えて一般市民の自由や権利を制限しようというのは当然の帰結だ。
権力側がなぜ改憲を企むのか、我々一般市民が注意深く監視しなければならない。




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