SNSにおける加工文化: 若年層のルッキズムに対する考察

若年層のSNS文化の一つとして“加工”というものがある.
“加工”というのは顔写真を編集し,より可愛らしく,美しく見せることを指す.SNSでみられるような女子中高生の自撮りは,そのほとんどが加工後の写真であり,近年では,主に女子中高生の間で加工文化が浸透している.

加工により,自らの顔を理想に近づけることができる一方,集合写真や卒業アルバムの顔写真など,加工することができない写真に対し,自分の容姿に強烈なコンプレックスを抱いてしまうことも少なくない.卒業アルバムに関するアンケート調査によると,掲載する写真を「加工したい」と答えた高校生が4割を超えたという.

“加工”により理想に一歩近づいたが,むしろ加工によって不自由のみとなってしまったわけだ.

“加工”と聞くと,特に年配の人であれば,不自然に思うかもしれない.しかし,若年層にとってみれば,加工は化粧と同じくらい自然なことである.

日本の化粧に関する歴史を振り返ると,美容としての化粧については『古事記』や『日本書紀』に記述があり,6世紀後半から,化粧文化が日本に存在したようである.

女性は化粧をして当たり前,そういった考えが世に浸透し,いまや,すっぴんで街を出歩く女性はほとんどいない.
自らが自由になるために化粧を始めたのが,いつしか化粧によって自分を縛られる,そんな世の中になっている.

“加工”もそれと同じように一般的なものになり,加工するのが当たり前で,逆に加工していないのが恥ずかしい,といった考えが一般的になるのだろう.実際,若年層においてはすでにそういう考えが広まっている.

美しくなりたい,というポジティブな感情が,美しくいなければいけない,というネガティブな感情に変わり,女性を縛り付けている.

女性が自由になるためには,ルッキズムとはなにか,その根本から考える必要があるだろう.

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