母親から遺伝した病気
いままでひた隠しにしてきたが、
おれは重大な病気を抱えている。
それは母親からの遺伝であると、
今回富山に帰ってきてから判明した。
50歳になっても治らないのだから、
これはもはや不治の病なのかもしれない。
症例は少なく、治療法もわからない。
病名もついていない。
もしもコレに病名をつけるとしたら……
半額病!!
この前母親とスーパーに買い物に行ったときに気づいた。
彼女は買いたいもの、欲しいもの、必要なものを買っているのではない。
半額シールが貼ってあるものを買っている。
家に帰って冷蔵庫やテーブルの上にある食料を観察してみると、かなりの割合で半額シールが貼ってある。
賞味期限の過ぎたパン、黒く変色したバナナ、冷蔵庫の中は賞味期限の過ぎた牛乳や卵、納豆などであふれている。
食べきれないのに、半額だと知ってしまったらテンションが上がって、買わずにはいられなくなる。
ああ、おれもそういうところ、あるわ。
めっちゃ心当たりがある。
元家族と一緒にいたころ、結婚していたころは、おれはよくスーパーに半額のお刺身を探しに行き、それを元奥さんに買い与えていた。
それはおれがやさしいから、思いやりがあるから、奥さんを大事にしているから、ぜんぜんそういう理由ではなくて、半額病のせいだったのだ。
半額のものを買わずにはいられない。
おれはそんな重度の病を、母親から受け継いでしまっていた。
それに今回、気づいてしまった。
👵「ほら!ヨーグルトはどうだい?」
👵「パン!パンはいらないかい?」
👵「焼き鳥食べないかい?」
スーパーで母親がすすめてくるものには、もれなく半額シールが貼ってあった。
😨この人、病気だ…(おまえもな)
カゴの中を半額の商品でいっぱいにした彼女は会計を済ませて、おれと共に帰路に着いた。おれは彼女がこんなとき、どんな言葉で喜ぶのか、よく知っている。
「半額じゃなかったら6000円だったね」
「でも実際に払ったのは3000円だったね」
🤣👍「3000円儲かったな!!」
彼女は「儲かる」という言葉が好きだ。
だからこんなふうに言った。
彼女は満面の笑みを浮かべた❤❤❤👵❤❤❤
実際は、廃棄寸前の食料をお金を払って購入しているわけだから、助かっているのはスーパーのほうで、実際は食べきれなかったり捨てたりして、こっちは大損しているんだけどな。
でもそういうことは黙っておいた。
なんでも言葉にすればいいってもんじゃない。
おれも母親の域まではいかないけど、
それでも食べきれない半額のお弁当を爆買いしてしまい、
後悔と共に無理矢理食べることがある。
食べきれずに捨てたことも、そんなに多くないけど、ある。
だって半額の商品みると嬉しくなって、
気づいたら買っちゃってるんだもの😢
でも今回、母親の姿を見て、ちょっと冷静になれた。
おれも彼女みたいに、
欲しいものや必要なものじゃなくて、
半額のものを「買わされている」んだなって。
自分の意志で商品を買っているんじゃなくて、
半額シールに買わされている。
店長に買わされている。
誰かに操られている。
自分というものがない。
意思がない。
こころがない。
ゾンビみたいなものだ。半額ゾンビ。
前々から思ってたんだ。
もっと丁寧に生きていきたいな、って。
なにかに操られたり、
何かに駆り立てられたり、
焦らされたり、
自分を見失ったりしないで、
ちゃんと地に足をつけて、冷静に、
おれとして、自分として、生きていきたいって。
ずっと思ってた。
母親はおれの鏡みたいなものだ。
母親の姿を見て、おれは自分の行動を顧みることができた。
おれもあんなふうに、半額のものを買い漁ってたんだな……
お母さん、ありがとな。
おれはこれから、本当に食べたいものしか買わないようにしようと思うよ。
損得計算はしてもいいけど、
行動の基準がそれだけになっちゃうと、
こころがとても貧しくなってしまうね。
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