高見温| On Takami

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旅日記だったり、つらつらと長文を書くこともあったりします。気ままに読んでくださいませ。 サポート代はお紅茶代に充てさせていただきます。連絡や依頼はontakami92@gmail.comまで

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基本的には展覧会評や書評及びエッセイを書きます。海外の美術館情報や小ネタも投稿します。美術好きなら面白いと思うのでぜひ。記事は3日に一本くらいを予定しております。

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    オランダ旅行といくつかの美術の小論が載っています。ひとつひとつ読むよりお得です。

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    教科書や本に出てこない、学術書の隅っこに載っているような美術の小ネタやゴシップを紹介します。細部に神は宿る…はず。美術が好きだったり、変わった世界の話に興味があれば面白いと思います。

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読書記録(2024年4月分)

読書記録を公開して一年経ちました。読みたい本が無くなりつつあるとはいえ、読んでいると自然と気になる本が新たに出てきますから、やはり書物は海のようだなと思います。 文芸書①アイザック・B・シンガー『モスカット一族』 詳しい感想はnoteで記事化していますが、久しぶりに数十人の登場人物が数十年を生きる大河小説を読んだなということで特別な印象を持ちました。ポーランド・ワルシャワのユダヤ人社会を克明に描写した作品で、20世紀半ばの小説としては何よりも読みやすいです。 世代間のす

    • ル・クレジオ『ブルターニュの歌』

      存命のフランス人作家では世界的に最も高名な作家のひとり、ル・クレジオ。1963年の『調書』で華々しいデビューを飾り、硬質な詩的散文で一世を風靡しましたが、やがて父祖の地モーリシャスやアフリカ、世界各地を舞台にした文化人類学の視点を持つ作風に移ります。2008年ノーベル文学賞受賞。 世界各地を放浪するように書き続けてきた彼も80代に。2020年、ついに自分の幼少期をテーマにした作品が出たということで邦訳を読んでみました。結局歳をとると幼少期の事を回想したくなるのでしょうか。

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      • ベリサリウス/Βελισάριος

        人類史上最高の軍事的天才とは誰か。アレクサンダー大王?ナポレオン?など不毛ながら暇潰し的には楽しい問いというものがあります。 私個人の考えでは東ローマ帝国の将軍ベリサリウス(500〜565)だと思います。 このベリサリウスという将軍はユスティニアヌス大帝の下で獅子奮迅し、各地の反乱を滅ぼして、イタリアやイベリア半島まで征服する恐ろしいまでの戦績の良さによって、歴史家から高く評価されています。 そのため大帝はこの将軍を恐れ、ずっと冷遇します。凱旋式の後に解任したり色々やっ

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        • お知らせ

          いつも投稿を読んでくださり、また活動を支援していただきましてありがとうございます 藝大の大学院を修了したことで時間ができて、記事の更新の頻度を上げられることになり、今後さらに多くの文章が書けるだろうということになりました。非公認とはいえ、組織の看板を背負っていたことから穏健なことしか書けませんでしたが、そのくびきからも解放されたので色々書けると思います これからは無料公開記事は本の紹介と展覧会の感想(展覧会の写真などは営利目的には使用不可なので)に絞り、noteはほぼ限定

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          ベリサリウス/Βελισάριος

          「スタンダード」他に参加すると最後まで読めます

          人類史上最高の軍事的天才とは誰か。アレクサンダー大王?ナポレオン?など不毛ながら暇潰し的には楽しい問いというものがあります。 私個人の考えでは東ローマ帝国の将軍ベリサリウス(500〜565)だと思います。 このベリサリウスという将軍はユスティニアヌス大帝の下で獅子奮迅し、各地の反乱を滅ぼして、イタリアやイベリア半島まで征服する恐ろしいまでの戦績の良さによって、歴史家から高く評価されています。 そのため大帝はこの将軍を恐れ、ずっと冷遇します。凱旋式の後に解任したり色々やっ

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          『プロテスタントと美術館展示の倫理』

          「スタンダード」他に参加すると最後まで読めます

          マックス・ヴェーバーの『プロテスタントと資本主義の倫理』という社会学の名著があります。プロテスタントの禁欲的な思想こそが資本主義の根本を成立したという逆説性と、論理的な展開によって多くの反響を呼びました。 今日ではプロテスタントの思想が資本主義と繋がるのも部分的で、もっと早期に確立されていたのでは、などとヴェーバーの考えそのままが主流ではなくなっていますが、古典の古典たる故は内容より様式や課題への態度なので、おそらく今後も読み継がれていくでしょう。

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          3D

          「スタンダード」他に参加すると最後まで読めます

          ク〇スティーズやサ〇ビーズといった競売会社は、大金が飛び交う優雅な商売と言われますが、実態としてはえげつないことをやっていたりします。告発という話ではなく、楽しんで読んでください。 この業界は、アートを売りたい人からセットで買って、それをオークションにかけて売ることで、その差額を売上にする会社です。自らアートを取り扱う画商とは全く異なりますが、アートを売りたい人がいないと始まらないビジネスです。 では、コレクターはいつアートを売るのか。それが3Dと呼ばれる Debt(借金

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          絵画の地位をめぐる法廷闘争 in スペイン🇪🇸

          「スタンダード」他に参加すると最後まで読めます

          少し前に若桑みどり氏の著作の一節から、真に人文主義的な芸術はイタリアにしかないというが、それはどのような意味なのかという質問が来ましたが、あの後も個人的に調べてみました。 端的に言えば、絵を描くというのは哲学や数学、宗教学に古典の知識など様々な学問分野に精通する必要がある→これは単なる職人仕事ではなく、高度に知的な労働なのだ!という論理で、地位の向上を目指します。職業差別的なものが起点にあるといえば否定できません。 穿った見方をすれば、「知的な俺たちはお前ら手作業とは違う

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          風変わりな紳士

          「スタンダード」他に参加すると最後まで読めます

          美術館への資金援助をするお金持ちは、自分の名声のため、あるいは市民の自尊心といった諸々の感情から寄付をします。単純な理由で決める人もいれば、自分の力の誇示のため周到に練られたものもあったでしょう。 ただ時に変な条件をつけてくる人というものもいます。大抵お金持ちは少し変わったところがありますし(笑)一筋縄にはいかないケースもあるものです。その中でも奇妙なものをひとつ。

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          10年という年月の重さ

          「スタンダード」他に参加すると最後まで読めます

          「ピケティのr>gというのは、資本主義の格差拡大の論理で、それは社会を分断するのではという問題提起だった。でも10年でその公式は、働くより株など投資した方が資本は蓄積されるので、金融商品を買ってくださいだのFIREしましょうなどの誘い文句になってしまった」 金融業界の方と喋った時に印象に残った言葉です。たった10年でほぼ真逆のニュアンスで利用されているピケティという権威を思うと、学者が伝えたいことはどれくらい世に浸透させられるのだろうかと不安になります。ベストセラーの宿命と

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          『プロテスタントと美術館展示の倫理』

          マックス・ヴェーバーの『プロテスタントと資本主義の倫理』という社会学の名著があります。プロテスタントの禁欲的な思想こそが資本主義の根本を成立したという逆説性と、論理的な展開によって多くの反響を呼びました。 今日ではプロテスタントの思想が資本主義と繋がるのも部分的で、もっと早期に確立されていたのでは、などとヴェーバーの考えそのままが主流ではなくなっていますが、古典の古典たる故は内容より様式や課題への態度なので、おそらく今後も読み継がれていくでしょう。

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          3D

          ク〇スティーズやサ〇ビーズといった競売会社は、大金が飛び交う優雅な商売と言われますが、実態としてはえげつないことをやっていたりします。告発という話ではなく、楽しんで読んでください。 この業界は、アートを売りたい人からセットで買って、それをオークションにかけて売ることで、その差額を売上にする会社です。自らアートを取り扱う画商とは全く異なりますが、アートを売りたい人がいないと始まらないビジネスです。 では、コレクターはいつアートを売るのか。それが3Dと呼ばれる Debt(借金

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          絵画の地位をめぐる法廷闘争 in スペイン🇪🇸

          少し前に若桑みどり氏の著作の一節から、真に人文主義的な芸術はイタリアにしかないというが、それはどのような意味なのかという質問が来ましたが、あの後も個人的に調べてみました。 端的に言えば、絵を描くというのは哲学や数学、宗教学に古典の知識など様々な学問分野に精通する必要がある→これは単なる職人仕事ではなく、高度に知的な労働なのだ!という論理で、地位の向上を目指します。職業差別的なものが起点にあるといえば否定できません。 穿った見方をすれば、「知的な俺たちはお前ら手作業とは違う

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          古美術エッセイ選

          質問がよく来ていたので、心に残ったものをいくつか紹介します。学術書でも美術書でもなくあくまで美術エッセイです。 現代アート系のエッセイの方が著者の思想が前面に出てきて面白いかもしれませんが、今回は古いところでまとめています。 ①徐京植『私の西洋美術巡礼』 在日朝鮮人二世の美術批評家のエッセイ。本書は単純な旅行記でも評論でもなく、自分のあやふやなアイデンティティを持って、厳然と聳える名画に対峙した時のどうしようもない自らの脆さを嘆くところが胸をうちます。芸術を観るとは自分を

          古美術エッセイ選

          風変わりな紳士

          美術館への資金援助をするお金持ちは、自分の名声のため、あるいは市民の自尊心といった諸々の感情から寄付をします。単純な理由で決める人もいれば、自分の力の誇示のため周到に練られたものもあったでしょう。 ただ時に変な条件をつけてくる人というものもいます。大抵お金持ちは少し変わったところがありますし(笑)一筋縄にはいかないケースもあるものです。その中でも奇妙なものをひとつ。

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          「未完の始まり 未来のヴンダーカンマー展」感想

          豊田市美術館で開催されている、現代美術の展覧会です。毎度ワクワクさせてくれる数少ない美術館です。 これまでの展示もぜひ読んで頂きたいです。 概要ヴンダーカンマーとは「脅威の部屋」と訳される、世界中の珍品が集められた部屋のことを指します。特に15〜18世紀にかけて貴族たちが鉱物や貝殻といったものをコレクションし、見せ合っていました。 18世紀に博物学が成熟して、謎のままごちゃ混ぜになっていたものたちが分類され、整理されていきます。それが今日の博物館そして美術館へと繋がって

          「未完の始まり 未来のヴンダーカンマー展」感想

          10年という年月の重さ

          「ピケティのr>gというのは、資本主義の格差拡大の論理で、それは社会を分断するのではという問題提起だった。でも10年でその公式は、働くより株など投資した方が資本は蓄積されるので、金融商品を買ってくださいだのFIREしましょうなどの誘い文句になってしまった」 金融業界の方と喋った時に印象に残った言葉です。たった10年でほぼ真逆のニュアンスで利用されているピケティという権威を思うと、学者が伝えたいことはどれくらい世に浸透させられるのだろうかと不安になります。ベストセラーの宿命と

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          好きなゲーム音楽

          最近あまりゲームをしない筆者(しかも下手)にとっては、もっぱらBGMがゲームの評価になってしまうことがあります。RPGも得意ではありません。エイッとやって、だいたい中盤で詰んでいます。 ケイト・ブランシェットの演技で話題になった本作の最後、仕事を干された彼女が放浪の先でゲーム音楽を振って、客席にはオタクたちがずらりと座っているという終幕は、賛否両論あったと思います。 さんざん音楽の高みが〜と言っておきながらゲーム音楽なんて、というものから、因襲と陰謀に満ちたクラシック音楽か

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          アイザック・B・シンガー『モスカット一族』

          1950年に出版されたI.B.シンガーの長編小説『モスカット一族』(Isaac Bashevis Singer, 《The Family Moskat》大崎ふみ子訳) が今年日本語訳で読めるようになりました。その感想です。 シンガーはポーランド出身のアメリカ人作家で、ルーツであるポーランドのユダヤ系社会をテーマに、生涯イディッシュ語で書きました。1972年ノーベル文学賞受賞。 ストーリー20世紀初頭のロシア帝国下ポーランドのワルシャワ。そこのユダヤ・コミュニティの長老メシ

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          反美術史

          反芸術、反美術、アンチアートみたいなものは耳にタコができるほど聞いたことがありますが、反美術史となるとさあどうでしょう。 ・ エルンスト・ロベルト・クルティウスは、私が最も尊敬する文学研究者ですが、これはいただけないという文章をちらほら見かけたことがあります。例えば代表作の『ヨーロッパ文学とラテン中世』(1948)の中で美術史家を低く評価してるところです クルティウスは、絵画は文学作品と異なり、その本質を直感的に理解できるという立場です。文字に頼らないので、学問的な解説

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          藝大お嬢様部の成り立ち

          過去の回想というものはどうしても美化されますが、今思えば、非常に素朴な始まりだったと思います。私が”お嬢様”に会ったのは2021年の奈良でした。会うと言っても何度か話したことはあって、校内ですれちがうたびに雑談をするくらいの関係でした。奈良公園を久しぶりに歩きたいけれど、仏像や日本美術に詳しくないから案内してよ、という連絡です。親しい間柄とはいえ、急なお誘いに驚きました。 コロナが一旦おさまったのと、インドの変異型が流行して再度厳格な体制がとられる間の時期でした。観光客は当

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          読書記録(2024年 3月分)

          諸々が過ぎ去ったため、時間がかなりとれたこともありたくさん読めました。その中でもよかったものを精選してみました。 文芸書①サミュエル・ベケット『モロイ』 第二次大戦後から1950年代がヨーロッパ文学の最後の輝きだと勝手に思っていますが、その時代に書かれた問題作。 なぜこの作品を読むのか、と理解する以前のよく分からないところでの感動がありました。文章を追っているものの、詩でもなくストーリーでもなく、どこまでも文章としか言えないものを読むという体験です。 小説は、娯楽でも

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