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国際ベトナム語能力試験(iVPT) Aレベルを振り返る2 試験対策

国際ベトナム語能力試験(iVPT)Aレベル受験の振り返り記事パート2です。パート1では外国語教師としての視点からこの試験の特徴を分析してみました。

今回の記事では私が受験するに際して行った試験対策を紹介します。まず、Aレベル試験の特徴をおさらいするとこんな感じです。

  1. リーディングとリスニングの問題がある

  2. 文法知識よりも語彙知識が試される

  3. 語彙のジャンルとしては「生活用語」が多く出る

  4. リスニングの音声再生回数は一回のみ

  5. 会話音声は問題文ナレーションよりもスピードが速くなる

ちなみに各問題は4択の選択肢問題でマークシート記入式です。

上記2から分かるようにiVPTを受験する際は語彙対策が一番のキモになります。よく出題される「生活用語」というのは具体的には果物、動物、花、身体部位、職業、交通機関、家庭用品などの日常生活を送るにあたって身近にある物の名前のことで小学生高学年の児童なら大体知っているような語彙です。こういう語彙は母語話者なら難なく覚えられるものなのですが、ベトナムに在住していない外国語学習者にとっては馴染みがないものも多く注意が必要です。生活スタイルの面から見ても普段から果物をあまり食べず、動物園や植物園には何年も行ったことがなく、ベトナムに行っても外食中心で部屋の掃除もルームキーパー任せな人なんて全然珍しくないと思いますが、そういう人ほどAレベルの単語対策は重要になります。もちろん私もその一人。

語彙対策:イメージと単語をつなぐことの重要性

ということで、リーディングをやるにもリスニングをやるにもまずは語彙対策から始める必要があるのですが、その際に留意しておきたいはベトナムと日本の気候や生活スタイルの違いです。気候が違うと収穫できる作物や果物は一変しますので覚えておくべき単語が異なってきます。例えば、ベトナムの果物というと以下のようなものがあります。

ドラゴンフルーツ、ライチ、龍眼、ドリアン、ザボン、マンゴー、マンゴスチン、ランブータン、スイカ、パイン など

実は私、ランブータンやマンゴスチンはまだ食べたことがありません(ドリアンはあります!)。そんな食べたことがない果物でもベトナム語の名前を覚えないといけないのですが、食べたことがない果物の色や形ってイメージが湧きますでしょうか?…多くの人はかなりあやふやなイメージしか持てないと思います。となると、ベトナム語の生活用語を身につける際には「今学んだ単語はそもそもどういう物か」から理解しないといけません。実際の出題では絵を用いた問題もありますので、文字だけで「ランブータン = chôm chôm」と機械的に覚えてもあまり役に立たないのです。

このような「物の名前とそのイメージを繋げる語彙学習」を行う場合、文字だけで書かれた単語集は明らかに不利です。一個一個の語彙について自分で画像検索をかけないと実物を見ることができませんが、忙しい時にそこまで手間をかけている暇はありません。
そこで私が使ったのでビジュアル辞典です。ベトナム語でもハンディーサイズの辞典が安価で売っており、しかも日本のamazonから購入できます。

この辞典には果物、野菜、料理、身体部位、動物、昆虫、家庭用品などの単語が写真と組み合わせて載っており、iVPT Aレベルの試験問題を解くのに必要な単語の多くをカバーできていると感じました(ただし職業名はちょっと足りない)。私の場合、試験の2週間前から通勤・退勤時にパラパラと流し読みを繰り返しました。一方でそれ以外のタスク、例えば単語の書き取りなどは一切やりませんでした。というのも、Aレベルは4択の選択肢問題だけで書き取りテストがないためスペリングの大まかな印象さえ分かれば選択肢を選べるだろうと山を張ったのです。

この作戦はうまく的中し多くの問題で正答を導けましたので、結果から見て今回の受験に当たって一番役に立ったのはこの辞書でした。日本のベトナム語テキストの多くは文法に重点を置いているところがあるので、語彙重視のAレベル試験とは相性があまり良くないと感じています。

リスニング対策は特効薬が見つからない

語彙知識が増えてくるとリーディングの出来は自然と安定するのですが、リスニング対策は最後まで特効薬が見つかりませんでした。「各問一回だけの放送」というのはとにかく挽回が効かないので、少し集中力が切れたり知らない単語に引っかかったりすると一発アウトなんですよね…むしろ実際のベトナム語会話では分からなかった部分は聞き返すのが普通ですので、前後の文脈が一切与えられない発話を一回で全部聞き取るのは正直無理ゲーな気もします。

リスニング対策で使ったのは今や定番になりつつある『ベトナム語レッスン中級』(スリーエーネットワーク)の音声だったのですが、出てくる単語の種類がAレベルの試験問題とはあまり重なっておらず「役に立った!」という感触はあまりなかったです。

それ以外にもVOV(ベトナムの国営ラジオ局)やVTV(国営テレビ局)のオンライン放送を普段から聞いたり視聴したりもしたのですが、こちらも「一回で全て聞き取る」ための即応力を身につけるのにはあまり役立った感じがしません。これまでの中国語試験の受験経験から考えるとこの手のリスニングはとにかく場数を増やすことが重要な気がしますので、対策も長期的なスパンで計画した方がいいのかもしれません。

というか私、日本語の会話でもよく聞き返しているんですよね…母語でもできないことを外国語でこなせる自信は全くないのでリスニングの対策はなかなか難しいかもしれません。