トラネキサム酸笑顔【毎週SS】
男は画商であったが、審美眼に恵まれず
仕入れた美術品は尽く売れなかった。
街角に構えたの30坪満たない画廊には、
埃が被った絵画や壺で溢れかえっていた。
親の反対を押し切って美大に進んだものの、
芸術の才を見出される気配がないと見るや、
価値を見出す側であればよかろうと
卒業間近に画商になると決めた。
一向に商才を振るう様子がないため、
親からも別の仕事を探せとせっつかれていた。
しかし男もここまで来てしまった手前、後に引けない状況である。
とはいえ肝心の売り上げがない以