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マカオに賭けた一縷の望み 70万円が溶ける(前編)

『資本主義は欲望を増幅させる装置である』。

誰の発言か忘れてしまったけれど(おそらく著名な作家)、私の中で印象に残っている言葉である。

私たちが働いてお金を稼ぐのは、一体何のためか?「食うために働く」という慣用表現があるが、飽食の現代において、この表現は明らかに不適当である。戦後の焼け野原状態、食べ物にも困るような状況下ではそのように言えるだろうが、現代で食うに困ることは、まずない。

少しでもいい家に住みたい、いい服を着たい、いい車に乗りたい、子どもをいい学校に入れたい。そういった他者との差別化に対する欲望が、人々を資本主義という名のゲームの俎上へと駆り立てる。そんな風に、私は解釈をしている。

そのゲームの盤面上で、ギリギリ端っこで落ちるか落ちないかの攻防を日々繰り返しているのが、私、ががおである(いや、もう何度も落ちているんだけど、なぜか生きながらえています)。

マカオの歴史といま


正式名称「中華人民共和国マカオ特別行政区」、通称マカオ。人口約68万人、国土面積32.9k㎡(東京都板橋区とほぼ一緒の広さ)。

元々は辺境の漁村であったが、16世紀にポルトガル人がキリスト教布教のために来航、拠点都市として発展。ポルトガルによる実質的な植民地支配が400年以上続き、1999年に中国領土へと返還される。現在は一国二制度下において、自治権が与えられている。「マカオ」とはポルトガル語である。

東アジアは15c~16c大航海時代における、ひとつの終着点であった。

16世紀に中国本土から渡ってきた労働者の間で賭博が盛んになり、1847年にはポルトガル政府によって賭博産業が合法化される。2024年現在、マカオには約30軒のカジノがあり、同年のカジノ産業売上見込みは3.6兆円、マカオ政府税収の40%を占めることとなる。同等の面積である板橋区にカジノが30軒あり売上3.6兆円と考えたら、とてつもない数字である。

マカオのカジノへ行くということは、ただギャンブルに興じるというだけでなく、中世から続く人々のロマンと発展の歴史そのものを体感することなのである。

マカオのカジノ分布。カジノは特定のエリアに密集している。

軍資金50万円でカジノへGO!

2024年2月13日夜、仕事終わりで成田空港へ直行。春節真っ只中のマカオへ単身で乗り込む。

小ぶりのスーツケースは、大勝ちした際の現金輸送用です。

なぜ、わざわざ混雑必至の春節を選んだのか?『劇的な勝ち方をしたとき、周りにオーディエンスがいればヒーローになれるから』。人の想像力は必ず具現化される。まずはイメージをすること。それが勝利と成功への第一歩である。

選んだ賭場は、グランド・リスボア。まさに『資本主義は欲望を増幅させる装置である』という言葉を体現したかのような、そのまがまがしいビジュアルが私の感覚神経を大いに刺激する。

夜のグランド・リスボア。米国のトランプタワーのようなギラつき感。

軍資金は50万円。ハッキリ言って、ほぼ全財産に近い。銀行口座に1000万円あるうちの50万円ではなく、100万円のうちの50万円である。さらに残りの50万円も予備の軍資金として計算に入れていたことから、全身全霊突撃特攻、不退転の決意である。

狙いのゲームは、バカラと大小(シックボー/タイサイ)。どちらもシンプルかつ、すぐに決着がつく。使うツールがトランプかサイコロという違いだけで、数字が大きいほうか小さいほうにかけるかで確率ほぼ1/2は一緒である。

AM10:00 ゲーム開始!

ホテル泊で一夜明け、いざカジノへ。朝10時であったが、春節ということでとにかくものすごい人でフロアは埋め尽くされていた。

人であふれかえるカジノの入り口。『恭賀新禧』は中国の新年のあいさつ。

翌日の16時にはマカオを出国しなければいけないので、逆算すると30時間はマカオに滞在できることとなる。

一番やってはいけないのは、最初の数時間で軍資金をすべて溶かすこと。わざわざ海外まで来たのに、そんなもんで終わりたくはない。よって、最初は小出しで様子をみることにした。

カジノ内にはATMが設置されているが、引き出し上限額が3000香港ドル(≒6万円)に設定されている。なのでまずはマックス3000HK$を引き出し。

早速、バカラのテーブルに着席。私はいつも、誰もプレイヤーがいないテーブルに着席するのが好きである。いつだって運命を切り開くのは、自分自身でありたいから。

♠バカラの超簡単なルール解説♠
「プレイヤ―」と「バンカー」、それぞれに2枚のカードが配られます。2枚の数字の合計の下一桁の数字が9に近いほうが勝利です。私たちは「プレイヤ―」と「バンカー」、二者択一でどちらかにお金を賭けます。勝てばお金は2倍、負ければ没収。確率50%(厳密には期待値48%台)の完全運ゲーです。

まずは500HK$をプレイヤーに賭ける。当たり、1000HK$になる。次に500HK$をバンカーに賭ける、外れで失う。結果は1分で決まる。そんな感じでミニマムベッドで一進一退の攻防を繰り返していたら、30分で3000HK$(6万円)が6000HK(12万円)になった。

PM14:00 賭け金アップで30万円が一瞬で溶ける

ひたすら同じベッド金額で勝ち負けを繰り返していても、お金は増えない。大きく勝ちたいなら、どこかで大きく張る必要がある。しかし、当てずっぽうでいきなり大きく張るのには躊躇してしまう。

ここでバカラの場合、「罫線を眺めて流れを読む」という戦法が、方法論のひとつとして取れる。

「罫線(けいせん)」とは、前回までのゲーム結果が記されている図表である。例えば、下の図を見てほしい。

青はプレイヤーの勝利、赤はバンカーの勝利。
図の見方は、「プレイヤー3連勝」→「バンカー1連勝」→「プレイヤー3連勝」→「バンカー1連勝」→「プレイヤー3連勝」→「バンカー1連勝」 である。

前回までの勝敗結果を踏まえたうえで、次にどちらに賭けるかを判断するのである。勝率はどちらのほうが高いのか、流れはどちらに向いているのか。。これが「罫線を読む」である。

ほぼ1/2の確率ゲームで、5連勝する確率はどのくらいか?単純計算で1/2の5乗=1/32、約3.1%である。つまり、バンカーorプレイヤーどちらかが5連勝する確率は極めて低い。

この連勝確率の低さを狙って、逆張りを狙う手法がある。「バンカーが5連勝しているのだから、6連はない。次に来るのはプレイヤーだろう」という考え方である。この手法を使うために、罫線を見てどちらかに偏りがあるテーブルを探すのである。罫線はすべてのテーブルにモニター表示されているので、探しやすい。

罫線モニターは全台に設置されていて、見つけやすい。(画像拝借)

上記の手法を使うために、どちらかに偏りがあるテーブルを探す(フロア内にバカラのテーブルは50以上ある)。

あった。バンカー5連勝中の台。ここからバンカー6連勝はないだろう。よって、プレイヤーに5000HK$(10万円)ベッドだ!

「Banker Win」。バンカーの勝ちで6連勝。OKわかった、7連勝はない。今度こそプレイヤーだ!5000HK$(10万円)ベッド。

「Banker Win」。バンカーの勝ちで7連勝。OKわかった、8連勝はない。今度こそプレイヤーだ!5000HK$(10万円)ベッド。

「Banker Win」。バンカー8連勝。えぇっっ….?

ものの数分で、30万円が溶けた。増やすのはコツコツ、溶けるのはドカン。FXやってるときと一緒じゃん。。おかしいよぉ。。

数学的な確率というのは、カジノ短期決戦においてはまったく当てにならない。バンカーかプレイヤーが10連勝したあとに、さらに10連勝してしまうのが、賭場の魔力なのである。それを再認識。

ちなみに、こういうときに中国人は割と順張りをする(勝ち続けているほうにさらに賭ける)。投機の世界では、日本人(ミセス・ワタナベ)は逆張りが好きだというが、カジノでも一緒である。日本人はなぜか逆張りをしてしまうのだ。マジでバカ丸出し。。

まだ死んでないけれど、開始4時間で30万負けは痛すぎる。。
一旦引いて、ひとり作戦会議をすることに。

後半に続く。


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