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年平均190回、驚異の来店頻度を誇る美容室はハサミを持たない?

コロナ禍でサービス業が軒並み冷え込む中、大分から東京へ出店を仕掛けるなど前進し続けている株式会社Lecture(リクレ)。狩生社長は女性の自立をテーマに、お客様にはサービスを通じて日々の生活に潤いを与え、社員には働きがいある環境を実現しています。それを裏打ちするかのように、来店頻度は驚異の年平均190回、社員の離職率は6年で5%と、美容業界の平均は3年で80%と言われるなか高実績を実現しています。その行動力の源泉はどこなのか、お話を伺いました。

シャンプー・ブローに特化したことで生まれた、新しいライフスタイル

-ハサミを持たない美容室を運営されているそうですね。

はい、Lecture(以下、リクレ)はカット・パーマを行わないシャンプーブローの専門店を展開しています。大分に2店舗、福岡に2店舗展開し、2021年に東京恵比寿に首都圏1号店を出店しました。恵比寿店ではシャンプーブローは所要時間20分程で1回2000円(※九州の店舗では1650円~)です。男性は1650円とお得になっています。都内だと美容室でシャンプーブローしたら一般的には4000円程度でしょうか。価格的にも気軽に来ていただいています。月額定額で通いたい放題のサブスクリプションプランもあり、恵比寿店では約10名の方にご利用いただいています。毎日来店される方もいらっしゃるんです(笑)

-新しいスタイルの美容室ですね。お客様の反応はいかがですか?

初めは1回だけ様子を見ようという感覚でご来店されます。気軽に利用してもらいたいことや、どのスタッフも同じサービスを提供しているので、指名するためにスタッフのシフトを気にする必要がないことなどを伝えています。お客様は私たちのスタンスを理解されると、来店回数がどんどん増えていき、最終的には通いたい放題のサブスクリプションプランをご利用になりますね。

当店のご利用ニーズですが、最初は、シャンプーブローが面倒くさいという方のご利用が中心でしたが、最近は、様々なご利用ニーズがでてきました。コロナ禍の在宅ワーク中で30分リフレッシュ休憩に来られる方、ランチで焼き肉を食べ髪の毛の臭いが気になる営業の方や、終業後のデート前にセットしたい方も多いですね。また、小さいお子さんがいらっしゃるママさんも、よくご来店になります。個室もあるのでベビーカーのまま入室でき、シャンプー台はフラットに倒れるので、ママのおなかに赤ちゃんをのせて、一緒にリラックスして過ごされる方もいます。

-なぜシャンプーブローだけの美容室に着目されたのでしょうか?

私自身、髪の毛が長くシャンプーに時間と労力がかかります。だから、仕事で疲れた日は、正直、髪の毛を洗う気力がなくなることもあります。また、髪型が決まっているかどうかで気持ちが大きく左右されるもの。急に楽しい予定が入ったけれど、髪型が決まっていないので出かけるのを諦めたり、大事な商談は髪型が決まっている時の方がうまくいく!なんてこともありますよね。このような自分の体験談を美容室でお客様にお話ししていたら、多くの方々から「わかる!」と共感いただけたんです。

でも、一般的な美容室では、シャンプーブローだけのお客様をあまり積極的に集客していません。お客様も、シャンプーブローだけでは申し訳ないから「前髪くらい切った方がいいのかな」と気を遣われます。ヘッドスパ専門店もありますが、ゆっくりリラックスしたいのではなく、ただ髪を洗ってもらいたいだけのニーズがあるはずと考えました。だから、手軽な価格帯で髪を洗うことを提供できたら、ビジネスになるのではと考えました。

また、もう一つのきっかけは、祖母が入院をした時にシャンプーができずに辛そうだったことです。怪我をして髪が洗えなかったのですが、それが気持ちが悪かったようで「髪を洗ってすっきりしたい!」とこぼしていました。このような思いは、祖母だけではありません。例えば、レーシックや白内障など目の手術後は、1週間顔を濡らすことができないので、自分で髪を洗うことが大変なのだそうです。そんな時に、ジャンプーブローしてもらえるサービスがあったらいいのではと考えました。医療サービスを受けている時は、皆さん気分が落ち込みがちです。そんな時に、シャンプーブローで、少しでも気分を上げていただければと思っています。

美容業界で長く働けるよう、女性のライフステージに合わせた働き方を追求

-美容師はカットが花形業務のイメージがあります。リクレで働かれている皆さんはどんなことにやりがいを感じて転職して来られるのでしょうか?

美容師の世界ではカットが花形ですし、多くの方がそこを目指して美容室に働きにきます。でも、カットでつまずく人も多く、それでも美容が好きで美容師免許を取ったから、この道で働き続けたいと思う人もいます。また、私のように実際に美容師として働いてみたら、カットよりヘアアレンジの方が好きだとわかった人や、ヘッドスパに興味が出てきた、という人もいます。全員が全員、花形のカットを極めていきたい訳ではないのです。

また、女性は自分のライフステージを考えると、働き方を考える局面もあります。「結婚後もこんなに長い拘束時間で働き続けられるのか」「出産で仕事を離れたら、目まぐるしく変わる流行についていけるのか」など、ご自身の婚期が近づくと不安を覚えるようになります。

そういった、既存の美容師の働き方ではフィットしない方からすると、リクレの事業内容はクリアでわかりやすく、安心して選択していただけるのではないでしょうか。シャンプーブローは、美容室に入って一番最初に習う技術で、一度仕事を離れても復帰がしやすい。そして、カットせずに、お客様を綺麗にして喜んでもらうという、サロンが提供する価値は変わりません。現在、リクレの求人は、インスタグラムで募集していますが、それだけで集まるくらい働く側にもニーズがあるんです。そして、社員は皆、お客様が喜ぶ姿に仕事の楽しさを見出していますね。

また、リクレの働き方に対する考え方も特徴的かもしれません。一般的な美容室の場合、営業前後に練習があって、定休日には講習会に行くこともあります。「上に登っていくには、誰よりも練習することだ」みたいな体育会系のノリが残っている業界でもあります。リクレの場合は、練習カリキュラムも営業時間内に全て行い、休みも週休二日制です。また、出産後も働きやすいように、短時間正社員も制度もあります。私自身も子供が3人いるので、その経験も踏まえながら、働きやすい環境を整えています。その結果、産休取得率は100%、離職率も低く、結婚で辞めた方が1名と、業務内容が合わずに辞めた方1名以外は、全員辞めずに働いてくれています。

逆境が自分を成長させてくれる

-狩生社長の前向きなエネルギーの源はなんでしょうか?

危機的な状況とか、予想外のことが起こると、アドレナリンが出て楽しいんです!(笑)もちろん失敗もたくさんしましたし、周囲に反対されるような経験もありましたが、最終的にはなんとかなっています。振り返ってみれば、逆境があったからこそ成長してこれました。積み重なった小さい成功体験と「ここに行きたい!」という強い思いがあれば、どんな厳しい道を辿っても、どうにか辿り着けるんじゃないかと思えます。

-新しいスタイルの美容室のオープン、逆境はありましたか?

周囲から「それでやっていけるの?」と言われましたが、全然気になりません。私達のお客様が応援してくださっているので、それがものすごく力になっています。だから、お客様と一緒にこの事業を大きくしていきたいと思っています。実際に、都内の次の出店地は、恵比寿店にお越しいただいている1000人のお客様にアンケートを取って、銀座と表参道に決め、今物件を探しています。

難しいと思ったのは、資金調達です。例えば、融資の相談をする金融機関の方は、50代、60代の男性が多く、私達の「シャンプーブロー専門店」と一般的な「美容室」の違いをご理解いただくだけでも大変でした。最近は、店舗が増えてきたので、お客様のニーズがあることはご理解いただけますが、最初は「流行らないのではないか」と言われたり、話すら聞いてもらえないこともあり、説明に苦労しました。でも具体的に数字で説明できるよう努めてきたことで、このあたりの対応力は鍛えられましたね(笑)

事業スピードを加速させるためにファンドから資金を調達

-FVCが運営するファンドから資金を受け入れたのはどのような背景でしょうか?

ファンドに興味を持った理由は、どうしても事業スピードを上げたかったからです。私達のサロンは、オープンして半年ぐらいで黒字化するので、1年後には1店舗ずつ融資を受けることが可能です。しかし、それでは100店舗にするのに何年もかかってしまいます。そこで「これじゃ駄目だ、ファンドを本気で受け入れよう!」と、起業2年目に思いました。それから、ファンドについて理解するために「株式とは」みたいなところから勉強をスタート。2020年頃からVCさんとお会いするようになりました。

しかし、お会いした多くのVCの方からは、美容というジャンルで括られ、「ファンドは必要ないでしょ?」とか、「そういうサービスはファンドの対象じゃない」と言われることが多かったのです。そんな中で、FVCの本田さんは、事業についてたくさん質問をしてくれたことが印象的でした。私たちは起業して最初の4年間、ゆっくり自分たちのペースでやってきました。そこからファンド受け入れて「スタートアップとして急成長していこう!」と、舵を切りなおしたときに、本田さんに出会えて、温かく受け入れてもらえたと感じました。

本田さんは、とてもコミュニケーションがとりやすく、私にとって癒し系です(笑)私が相談した内容を噛み砕いて整理し、選択肢を提示してくれます。私の少ない引き出しから答えを出すのではなく、本田さんによって視野を広げてもらっていますね。VCの方には、結果だけを聞いてくる方もいらっしゃる中で、FVCの本田さんはちょっと違う繋がり方をしてくださいます。本田さんの行動には、いつもリクレを気にかけてくださっているということが目に見えて、本当に有り難いです。

非日常を日常にすることで、新しい価値提供を

-狩生社長が目指しているもの、リクレの未来はどんなものなのでしょうか?

スタバやコンビニのように、日本全国、皆さんの身近なところにシャンプーブローサロンがある状態を目指しています。さらに、アジア圏にも進出したいと考え、上海のパートナー企業さんとも契約のお話を進めています。

美容サロンとしての展開が安定してきたら、医療分野での展開も本格化していきたいです。例えば、介護施設や調剤薬局の中に、シャンプー台を1台置かせていただいて、訪問シャンプーができたらと考えています。「シャンプーブローと言えばリクレ」と言われるよう、シャンプーを通じて、日常に新しい感覚・体験を提供していきたいです。

また、個人の夢になりますが、海外に学校と職場を作れたらと考えています。マレーシアに行ったとき、子供が物乞いをしている姿を見ました。お金を稼ぐ術を知らないから、そういう現実になっているのだと思います。女の子が手に職をつけるなど、生活できる術を伝えたいです。女性が働いて自立することは、私がすごく大事にしているテーマです。そのために、私たちが持っている技術や、やり方を提供することで、一人でも多くの女性が自立できたらと考えています。

-御社を一言で表すとしたらどんな会社でしょうか?

リクレのコンセプトは「『非日常を日常に』をテーマに、新しい市場を作り、人に新しい日常を作る」です。社名の英語表記、Lectureは「教える」という意味があることはご存じだと思いますが、実は「読書」という意味もあります。本に知識が書かれていたとしても、読むという行動がないと自分の中に落とし込めない。それと同じで、いろんな世の中の良いものを、誰かの彩りに変わるように落とし込んでいく。そういった役割でありたいと思っています。

また、2021年度の美容室の年間の来店平均は4回という結果が出ていますが、リクレの年間の来店平均は190回です。このように、リクレは本当にお客様との距離が近いので、そんな近い関係だからできる新しい価値を提供できたらと考えています。

私達は、現在シャンプーブローという美容業を展開していますが、新しいライフスタイルを提案するようなライフスタイルカンパニーになっていきたいですね。


狩生社長の”座右の銘”
「初志貫徹」
小さいころから行動すると決めると突っ走るところがある私をずっと見てきたおばあちゃんから、起業した時に「初めてもらったそのお金の気持ちを絶対忘れないで」と言われていました。だから、私のパソコンには、最初のお客様から受け取った2,000円を写真に撮ってずっと残しています。先日、おばあちゃんにそれを話したら、おばあちゃんも同じように残していると、初めて聞きましたね(笑)


投資担当者からひとこと
狩生さんの事業に対する熱い想いは、最初の面談から強く感じました。本事業を通した理想とする社会の実現に、少しでも協力したいという想いからファンドでご支援させていただきました。狩生さんは、人を巻き込む力や事業推進力が強い、魅力ある経営者です。また、狩生さん自身が働く女性の苦労や悩みを身をもって経験され理解されていることが強い武器となっています。リクレさんは今後更なる飛躍が出来るものと強く期待しています。私はもちろん、ほうわ創業・事業承継支援ファンドに関わる全ての関係者が狩生さんの味方です!全力で応援しています!!(本田 哲也)

インタビュアーからひとこと
インタビュー中、終始明るく前向きな受け答えに、本当に楽しんでお仕事をされているのだなと伝わってきました。お客様も一緒に働かれている社員の方も、この空気感が居心地よく、引き寄せられているのだろうと感じました。個人的に身近に1店舗欲しいサービスです。エリア拡大を楽しみにしています。

投資ファンド
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