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積み重なっていくのは雪だけじゃない

こんな冬には温かいものが恋しくなるのは世の常なんだろう。人肌恋しくなるという象徴的な言葉があるけど、それ以外にも温かいものは心を癒してくれる。

寒い朝に離れがたくなるあの布団のぬくもり。寝る前にふと飲みたくなったココア。いつだったか誰かとつないだ手の思い出。そんなものが私の脳裏によぎっては消えていく。

最近私の住んでいる場所でも雪が降った。その時に久しぶりにエアコンの暖房をつけたんだけど、全然部屋は温まってくれなかった。

20℃にも満たない室温の部屋で震えていると、母が温かいほうじ茶を入れてくれた。それを二人で飲みながら、縮こまっていた心がほわっと緩み始めるのを感じた。


「ねえお母さん、ほうじ茶より紅茶とか発酵させたお茶の方が体は温まるらしいよ」

私はついさっきスマホで検索して得た知識を披露した。

温まる飲み物ランキング。一位はココアで二位は紅茶で、三位はショウガ系の飲み物。案外甘酒は温まらないみたい。そんなことを話してみせた。母はにこりと笑った。

「だからショウガ食べなさいって言ってるでしょ」
「うっ…」

私はショウガが苦手だ。豚の生姜焼きなどすり下ろされたショウガが入っていたりするものはむしろウェルカムなんだけど、形のまま残っているものがどうしても苦手。

外で食べるときは多少我慢はするけれど、家で食べるとなるとまるで子供みたいに残してしまう唯一の食材だ。


「…私はココア飲むから大丈夫!」

強がりで宣言して、残っているほうじ茶をごくごくと飲んだ。そしてふと気づいたのは、大きな茎の部分がちょうど茶柱になっているということだった。

今まで茶柱というものは一度も見たことがない。何かラッキーなことがあるのだろうか。そんなことを思ってなんとなくわくわくする。

「そうだ、ココアオレ買っておいたわよ」
「ありがとう」

なくなりそうだと言ってもいないのに補充してくれている母には頭が上がらない。このあたりはいつも残りをチェックしてくれているのだろうか。他にも私だけしか食べないものを切らさないようにしてくれている。

何だかちょっと魔法みたいに感じることがある。


カーテンを開けるとそこには銀世界が広がっていた。朝見た時よりもずっと雪の塊が大きく重くなっていて、本格的な降り方になっているということがわかる。

このままいくと明日は今よりもっと積もっているだろう。

「おかわり入れようか」
「お願いね」

母に差し出された湯呑にお茶を注ぎながら、本当の温かさというものに気付く。それはこうして積み重ねられてきた互いを思う気持ちなんだろう。

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