初冬の候、どこからか甘い匂いが
今日はとても寒い。まるで一気に冬になってしまったかのようだ。昨日までは秋で、今日はもう冬。ちょっと前までは少し蒸し暑い日もあっただけに余計に季節感がわからなくなってくる。
あの日私は半そでをわざわざ取り出した。そして今日は真冬の服を一気にタンスから引き出した。フリースだったりモコモコのそれは何となく私の気持をほっこりさせる。
一連の作業を終えるとなにやら台所からいい匂いがしてきた。
「お母さん、昼ご飯はカレーライス?」
「カレーうどんよ」
「めっちゃあったまりそう!いいな」
起きるのが母より遅く、まだまだ次のご飯の時間でない私。とりあえず体を温めようと筋トレやストレッチをしてみるものの、まだまだ足りない。
「お茶かホットミルクでも飲んで一息ついたら?」
「そうだね」
そこで私は脳裏に浮かぶ一つのホットドリンクがあった。
「ホットミロにしよう!」
いつだったか私が貧血気味という検査結果に困っていた頃、カルシウムも鉄分も補給できると知って買っておいたのがミロという救世主だった。
これだけ栄養を補ってくれるのにココアのような味がしておいしいというのは、もうネスレのみなさんに感謝しかない。次の検査結果で本当に貧血は治っていたのだ。
とりあえず牛乳をマグカップに注ぎ、電子レンジで60℃くらいまで温める。次にミロの袋から大さじ2杯分の粉を入れ、ひたすらに混ぜていく。
…はずだった。
「うわああああああ」
いきなり悲鳴を上げた私に驚いて母がテレビの前から姿を現す。
「何があったのちょこ…って、え!?」
「ごめんお母さん…」
そこにあったのはテーブル横の家具や置いてあったいろんなものに飛び散った、大量のミロの粉だった。あっちこっちに散らばった茶色い粉はぷんぷんととてもいい匂いをさせている。
「どうしたの、これ!?」
「実はミロの粉を入れようと思って、大さじスプーンですりきってたらそれが勢いよくぽーんと飛び出してしまって…」
「これから飲みたい時は外で用意しなさい」
母は思いっきり怒りをにじませながら言う。
「えっ!」
どうしよう、と慌て始める私。
「…とりあえず掃除機で今すぐ片付けなさい」
「はーい…」
「とりあえず私の実力でできる限り掃除しました」
「ご苦労様。あとは私がやっておくわ」
何とか機嫌を直してくれたようでほっとする。ぬるくなってしまったホットミロを飲み始めながら考える。母は怒ると怖い。けどいつまでも引きずって怒っているようなタイプでもない。
…はずだった。
「…まだ甘い匂いがするわね。どこかに粉が隠れているんだわ」
普通に話してくれるようにはなったものの、しばらく忌々しげに言っていた母は今回のことではかなり怒っていたと思う。申し訳ない…。
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