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金は人を裏切らない

 「人は人を裏切る。だけど、金は人を裏切らない」

子供の頃、何かのドラマでこのセリフを訊いた私は、多大なる衝撃を受けました。

「そっか!お金って人を裏切らないんだ!!」

お金ってすごい。子供ながらにそう思って以来、大人になった今でも、この言葉は記憶の片隅に残り続けています。

 幼少期、私の家は特別貧乏ではなかったと思いますが、お金に余裕のある家庭ではありませんでした。両親は共働きで、私はひとりっ子。そのため、割と幼いときから、両親が働きにでている時は、夜でも家でひとり、留守番をすることが多かった記憶があります。

ただ、その留守番は両親が仕事の時だけに限らず。

私の父と母は昔、ギャンブル(パチンコ)をする人間でした。
夜、両親がパチンコに出かけた時は、だいたい23時くらいまで、家でひとり留守番をしていました。

だけど別に、そのこと自体は苦ではありませんでした。ひとつ嫌だったことと言えば、負けて帰ってきた両親が、大声で喧嘩を始めること。そして、お金のことで揉めること。
「お金がない」と、口癖のようにいつもそう溜め息をついていた母のことも、嫌でたまりませんでした。

しかし、私自身、お金のことで苦労した記憶はありません。学校にも通い、服やおもちゃなど、必要なものは買ってもらい、高校生の頃はおこづかいもきちんともらっていました。
その点で言うと親には感謝していますし、本当に家にお金がなかったのかは、正直謎です。

ただ、そういった環境だったこともあり、子供の頃から「自分はギャンブルはせずに生きよう」。そう誓って、この年齢まで生きてきました。

今も、お金に対する特別な執着はありません。お金持ちになりたいという欲求も、ブランド物が欲しいといった物欲もあまりないからです。だから副業でやっているシナリオライターの仕事も、始めた当初から、私は収入よりも、やりがいを重視して活動をしてきました。
ただ、そんな自分を甘いなと思う瞬間もあります。仕事なんだから、稼いでなんぼだろといった葛藤は、これまでに何回も抱いてきたものです。

自分のやりたいことと収入、どちらを重要視するべきか。

その問題にぶち当たる時、いつも私の頭には彼の姿が浮かんできます。

 私の彼は、2年前に肺癌でこの世を去りました。
彼の家は自営業で、おそらくお金はあったんだと思います。3年間という闘病生活のなかで、彼の両親も兄家族も、多額の治療費を彼に当ててくれていました。
それでも、彼は生きることができませんでした。

とても仕事が好きで、自分の仕事に誇りを持って一生懸命に働いていた人でした。しかし最期は食べることもできず痩せ細り、咳で呼吸もままならなくなり、大好きだったはずの仕事はまったくできなくなりました。
闘病中、あまり弱音を吐かなかった彼も、仕事ができなくなったことに対しては「情けない」と、そう漏らしていたのを今でも覚えています。

時々、「お金があれば幸せ」だと思っている人を見かけます。嫌な言い方をしてしまいますが、正直そういった人を見ると羨ましくて仕方がありません。

「あぁ、この人はお金以上に大切なものを失ったことがないんだな」
そう思ってしまうからです。
『お金がある=自由』の方程式は、必ず成り立つわけじゃないのに。

だけど現実問題、お金がないと、人は生きていけません。食べることも住む家も、病気になったときの治療にも、必ずお金は必要になります。行きたい場所に行く、会いたい人に会う、人生のそういった彩りを得るためにも、お金は必要不可欠です。

ただ、お金は本当に人を裏切らないのか。そう問われると、今の私は上手く答えることができません。

だからでしょうか。大人になった今、‟お金”というものの本当の価値について、考える機会が増えました。

やりたいことをやりつつ、ある程度の収入を得ることができれば、きっとそれが一番いいのでしょう。同時に、それが一番難しくもあるのだと感じます。

だけど副業とはいえ、自分の大好きな「書くこと」で、少しでも収入を得ることができている今の現状は、褒めてあげたい。

「人は人を裏切るし、金は人を裏切るかは分からない。だけどきっと、自分だけは、自分のことを裏切らないだろう」と、お金について真剣に考えだした今、そのように思っています。

【今日の独り言】
冒頭で書いたセリフのドラマ……なんだっけねぇ。確かね、俳優の北村一輝さんが言っていたセリフなんすよ。おそらくもう20年くらい前のドラマ。
北村一輝がかっこよかったことしか思い出せない。むむむ。


【37/100】


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