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それでMFA(美大修士)ってビジネスにどう活かせるの? 〈前編〉

日々の仕事やビジネス、ひいては経営に、MFAでの学びがどう活かせるのか、一気にまとめてご紹介します。

はじめに

ビジネスにアートが必要だ、ビジネスパーソンは美術館にいきましょう、と昨今盛り上がっていますが、具体的に何がどうビジネスにプラスに作用するのか、感覚的にわかるようで、ストンと腑に落ちないもどかしさがありますよね。私もMFAを学ぶ前、感覚ではわかるものの、腑に落ちるレベルまではいっていませんでした。

MFAでの積み重ねとこれまでの経験をもとに、芯で捉えられるところまできましたので、皆さまにとって腑に落ちるところまで持っていけるよう、なんとか言語化してシェアしたいと思っています。そのために、皆さんの疑問の中心となるWhen、What、How、Whyの4つに応えます。

応えたい4つのポイント
〈When〉どの局面でMFAが活かせるのか(経営においてMFAが通用する範囲)
〈What〉MFAの何が活かせるのか(経営において活用できるもの)
〈How〉MFAがどのように作用するのか(経営に作用する因果関係)
〈Why〉なぜMFAが活かせると言えるのか(経営におけるMFAの位置付けの理論的な説明)

今回の投稿はまずは〈When〉と〈What〉について理解を深めていただきます。

〈When〉どの局面でMFAが活かせるのか

経営・ビジネスと一口に言っても色々な局面があります。その中でいつMFAが通用するのか、それは厄介な問題に向き合って意思決定が求められる局面においてです。

ビジネスの世界、経営環境は大きく変化しています。これまではニーズが安定し予測可能な時代でした。その安定した環境下での経営戦略は、既存市場の中での競争戦略に立脚していました。一方で、昨今の経営環境はニーズが不安定であり予測不可能な時代に突入しています。その際に取るべき経営戦略は、新しい価値を創造し新しい市場を創造するような提案をすることです。その答えのない新しい価値を解として提案する行為は、厄介な問題に応えることです。

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厄介な問題とは、「未来における新しい○○とは」といった正解のない問題のことを指します。具体的には「2040年に求められる自動車とは」など。厄介な問題は、正解がない問いのため、意思決定は「正解か不正解か」ではなく「魅力的か魅力的でないか」という曖昧な判断基準に基づいて行われます。

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正解のある問いに対して解を導ける科学的アプローチを多用してきた経営の意思決定において、この厄介な問題に向き合う行為は、これまでの意思決定と根本的に異なるため、経営者の判断を膠着させています。この膠着してしまいがちな「魅力的か魅力的でないか」といった曖昧な意思決定を前に進めるために、MFAを活用するのです。

さらに、厄介な問題に向き合ってビジネスを実装すると言う全体の工程の中で、「未来における新しい○○とは」の解となる仮説を出し、それでいこうと意思決定すること、この仮説を出すことを全体の工程の真ん中の工程とした場合に、仮説を立てる前までの前半と仮説を立てた後の後半に分かれますが、主に前半の工程でMFAを活用します。

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逆に、後半の工程においては、立てた仮説を概ね科学的アプローチで立証して物事を管理して前に進めていくため、適用範囲は限定的です。では仮説を立てるまでの前半の工程において、具体的にMFAの何を活用するのか後述します。

〈Why〉なぜMFAが活かせると言えるのか

なぜその局面においてMFAが活かせると言えるのか、理論的な説明については、今回触りだけ書きます。先ほど「未来における新しい○○とは」という問いに対する解を導いていくことがこれからの経営において重要だと語りました。その問いに対する解は正解がないとは言え、何でも良いわけではありません。「魅力的か魅力的でないか」で判断する結果として、人々の思想を進展させるほど心を魅了するモノでなければなりません。

人々を魅了させるビジネスとは
皆さんがこのサービスは魅了されたな、この経営者が提案するものはすごく魅了されるなと思うビジネスは何ですか。iPhone、Amazon、UberEats、星野リゾート、、数々ありますね。すべて新しい何かを提案し「人々を魅了し、そして人々の思想を進展させ、さらに人々の行動を変え生活を一変させる」ようなものでした。

人々を魅了させるアートとは
アートと言うと、皆さんはどういう印象がありますか。あらゆる作品を皆さん思い浮かべると思いますが、歴史的に名を残しインパクトを与えてきたアートには共通項があります。それは、描画技術のうまさではありません。みなさんご存知のピカソや、ジャクソンポロック、などなど、それらがなぜ価値として高く評価されているか、それは既存の価値観を壊し新しい価値観を提案しており、人々の思想を進展させるものだったからです。

人類の長い歴史で言うと、ビジネスの世界での「人々の思想を進展させるほどの魅了するものを提案せよ」ということの盛り上がりは昨今の出来事ですが、アートは歴史的にも古くから長きに渡り、その営みをしあらゆる新しい価値を生み出してきました。もちろん、アートはあくまでも人々の思想を進展させるに留まり、人々の行動への進展へ寄与するケースは稀ではありますが、人々の思想を進展させるという態度にヒントがあると捉えています。

よって、正解のない問いに向き合って魅力的なものを提案することが求められるこの時代に、MFAが活用できると言えます。

別の回で、こういった現象ドリブンでの説明のみならず、理論ドリブンで、なぜMFAが活かせると言えるのか、経営におけるMFAの位置付けの理論的な説明について改めてご紹介したいと思います。

〈What〉MFAの何が活かせるのか

先ほど、厄介な問題に向き合う意思決定を行う場合において、その解となる仮説を立てる前の工程にてMFAを活用するとお伝えしました。その工程において、MFAの何が活かせるのか、をご紹介します。

「未来における新しい○○とは」の解となる仮説は、人々を魅了させるものでなければなりません。人々を魅了させるモノを生み出すにはどうしたらよいのでしょうか。

「人々を魅了させる」モノを生み出すメカニズム
これにはメカニズムがあります。そのメカニズムは、Input → Synthesis → Outputの3つのステップで成り立たせます。この一つ一つのステップにおいて重要なポイントを抑えた上で実施することで「人々を魅了させるもの」である仮説が生み出せるのです。

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Outputという仮説を立てるゴールに向かって後ろから順番にポイントを述べます。また、それぞれMFAの何を活用するかをご紹介します。

まずOutputは、「人々を魅了し、そして人々の思想を進展させ、さらに人々の行動を変え生活を一変させる」ものでなければなりません。人々を魅了するものは一定の法則があり、その法則に基づいていること、そしてそれが人々に伝わる表現に仕立て上げられることが求められます。

Outputにおけるポイント
① 法則:人々を魅了する法則に基づいていること(後編で詳述)
② 表現:それが最大限伝わる表現に仕立てあげられていること
OutputにおけるMFA活用ポイント
① 法則:法則に基づいた提案をする力《アート実習》《デザイン実習》
② 表現:情報言語のみに依存しない表現する力、造形言語(ここは一般的なアートのイメージの部分であり、技術にも分類されるものです)《デザイン実習》

次にSynthesis。Outputを創出するために、Synthesisという過程を通します。この過程が非常に重要です。Synthesisという言葉に馴染みのない方も多いかもしれません。日本語では統合ですが、最初に聞いた時の印象と、実態のアクティビティは少し違います。

人々を魅了するという解を出すために、どのような問いに答えるのか、問いを立てます。この問いが同質化した問いですと、人々の思想を進展させるほどの解は100年悩んでも出ません。同質化されていない新しい問いを立てることが重要です。その新しい問いに対して解を導くのです。また、この問いを立てるときも、問いに対する解を出すときも、行うのが統合です。あらゆる要素に分解して、それらに対して統合をするという導き方をします。

Synthesisにおけるポイント
① 問い:同質化に繋がらない新しい問いを立てること
② 統合:問いを立てる際、解を出す際も、あらゆる要素に分解して、それらの要素を統合すること
SynthesisにおけるMFA活用ポイント
① 問い:これまでにない新しい問いを組み上げる力《アート実習》《デザイン実習》
② 統合:要素を分解させる粒度を今までないものにする力《アート実習》《デザイン構想》

そしてInput。Synthesisで新しい問いを立てる、それにあたっての情報を得る工程です。新しい問いを立てているものにふれ、多くの刺激を得ます。さらに、その人々の行動を進展させるほどの仮説を出すために、人々の潜在的な未来のニーズを捉えます。そして何より重要なのは、汚いお皿にどのような美味しい食材を置いても美味しくないように、お皿を磨いておかなければなりません。つまり、Inputを得る際に重要なことは、お皿となる自分を一掃することです。それがUnlearnです。Unlearnは前回述べた通り、自身の経験や知識をあえて一度忘れ去ることです。それらをした上でInputを取り込むことができるかということがポイントとなります。

Inputのポイント
① 刺激:新しい問いを立てているモノに触れ、刺激を得ること
② 未来のニーズ:人々の行動を進展させるほどの未来のニーズを捉えること
③ Unlearn(学んだもの・経験したものを意識的に忘れる)を常にすること
InputでのMFA活用ポイント
① 刺激:日々の生活やビジネスでは出逢わない新しい問いを知る《座学講義》《アート実習》
② 未来のニーズ:人々の未来のニーズを捉えるためのリサーチ手法《デザイン実習》
③ Unlearn:これは学ぶlearnの反語なので学べるものではないですが、何度も強制的にunlearnのきっかけがもたらされる

まとめ

いかがでしたでしょうか。ここまで読んでいただきありがとうございます。今回は、〈When〉どの局面でMFAが活かせるのかをビジネスで求められている背景をふまえながらご説明し、〈What〉MFAの何が活かせるのかを中心に紹介しました。〈Why〉なぜMFAが活かせると言えるのか(経営におけるMFAの位置付けの理論的な説明)はほんの触りだけ。

人々を魅了するものを生み出すメカニズムにてご紹介したポイント、書くのは簡単ですが、やってみれるのはまた全然違います。それぞれステップにおけるより具体的な方法と、〈How〉MFAがどのように作用するのか(経営に作用する因果関係)を交えながら、後編でご紹介したいと思います。具体を知りたい人は次回の方が面白いと思います!お楽しみに。


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