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【あれこれ】不登校を忘れたくない


当時すごした場所から、新年会のお誘い。受けとったあゆみさんの決意についてご寄稿いただきました。(スタッフ・古川)





毎年、年末が近づくと児童養護施設から連絡が来ます。
私は一時期中学生活を家から離れて過ごしていました。中学を卒業する前に家には戻ったのでそんなに長くお世話になってはいません。
その施設では退所した子どもたちが集まって毎年新年会を行うんですが、ありがたいことに私にもお誘いの連絡が来ます。
たまに連絡が来ない年もありますが、予定さえ入っていなければ私はいつも出席の旨を伝え、電車とバスを乗り継ぎながら遠くの施設まで足を運びます。

施設にいい思い出はあんまりありません。というかあまり覚えていないです。
当時の私は家族関係でトラブルを抱えていて、少し距離を置こうという理由で児童相談所の一時保護所で保護され、その後、施設に移りました。
いくつかのエピソードは浮かびますが、時系列の記憶が曖昧で施設に移った年や家に戻ったとき自分が何歳だったのか全く覚えていません。

覚えているのは、初めての共同生活と新しく通う学校生活を頑張ろうと思っていたことでした。
学校生活は特に張り切っていたと思います。楽譜も読めないのに吹奏楽部に入部していました。友達作りも積極的に話しかけました。
しかし、一時保護所にいた分、勉強が遅れていたのは内心焦っていたと思います。友人関係も、既に形成されているグループの輪に入るのは難しかったのでしょう。施設の共同生活にも慣れない。少しずつダメになっていきました。
なんだか毎日疲れていて授業もまともに受けられなく、クラスの人と話すのも億劫で、体調不良で早退する日が多くなっていきました。部活も辞めました。部活を辞めたのを期に学校で話せる人もいなくなりました。

そして、登校を渋り最終的には不登校になりました。
どうしても学校に行きたくないと、施設の人たちと取っ組み合いになったことを覚えています。
学校の担任の先生が定期的に会いに来たときは、自分が学校に行けない現実に引き戻されているようで学校を休んでいても心が休まるとは言い難かったです。

その後、不登校の子たちが集まる適応指導教室(現在は教育支援センターと呼ぶらしいですね)に通うことになるのですが、これも私にとっては学校に行けない罪悪感が付きまといました。
なにせ、適応教室に通うにはバスで長い時間をかけて通わなくてはいけません。
そのバス代だってタダではないです。当時の浅知恵な私は「自分はいろんな人の税金を使ってまで不登校してあの教室に通っているんだ」と本気で思っていました。今でもバス代がどこから出ていたのかは知りませんが。
施設の人ともぶつかることが多くなって、最終的には家に戻ることになりました。

もちろん、嫌な思い出しかないわけではないです。
施設のみんなでご飯を食べたり、横浜まで遠出したり、楽しかったことだってたくさんあります。
でも、この頃に撮られた写真に写る私は笑ってしまうぐらい暗い顔ばかりでした。



施設にいた頃の記憶に限らず不登校の頃の記憶は歳を重ねるごとにどんどん薄れていきます。
「辛い思い出が忘れられるならいいじゃん」と思う方もいるかもしれません。
でも私は忘れたくないです。あんなに苦しい思いをしたのになかったことにするなんて悔しいです。
楽しい思い出も辛い思い出も全部、今の私に繋がる大切な経験だと思っています。

だから、私は施設の新年会で当時の自分を思い出すことにしているんです。
会の最後のほうには、みんなで施設の子たちが写る写真をスクリーンで観ます。
私の写真は1、2枚ほどしか映りません。そしてやっぱり暗い顔をしています。
それでいいんです。当時の自分の気持ちを再確認できますから。許可をもらえれば施設内を見て、当時の出来事を思い出すときだってあります。

今後も新年会のお誘いが来るのかはわかりません。施設の人には短い期間で散々迷惑をかけたぶん、気まずい気持ちだってあります。ですが、私は連絡がくるかぎり出席することを続けたいと思います。

どんなに時が過ぎても、私は自分の不登校を忘れたくないです。



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寄稿連載【あれこれありましたが、】では、当時行きづまっていた私たちがいまどうやって生きているか。あれこれありましたが、よろしくやってる方々の日常や思考を寄せてもらい、連載しています。

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