歌舞伎町大歌舞伎を観ました

2024年5月6日 鑑賞

東急歌舞伎町タワー6階 シアター ミラノ座

久しぶりの歌舞伎鑑賞。
2023年1月に竣工し、同年4月に開業した東急歌舞伎町タワーの6階にあるシアター ミラノ座が会場。

東急歌舞伎町タワー


昼食をとっていたら開演間近だと気がついて、慌てて歌舞伎町タワーに向かったが、長いエスカレーターを乗り換え乗り換えして、劇場に入ったのはギリギリ開幕前だった。
演目は舞踊2題と新作世話物1番の3演目。
【公式サイト】

【歌舞伎美人の公演情報詳細】
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/849
(1)正札附草摺根源/流星   12:00〜12:50
《正札附‥》は、曽我五郎時致を中村虎之介、小林朝比奈の妹舞鶴を中村鶴松。長唄連中。
上方成駒家は、十八代目中村勘三郎が健在だったころから、四代目中村鴈治郎と三代目中村扇雀が中村屋一門の友軍として、平成中村座などの公演に参加していた。
今や世代交代が進み、上方成駒家では、鴈治郎を父とする壱太郎が一日の長があって大活躍しているが、最近は扇雀を父とする虎之介の躍進ぶりが目覚ましい。
その虎之介が、本格的な舞踊で開幕を担うのだから大抜擢だ。
もう一人の鶴松も大抜擢。中村屋一門の弟子では、中村芝のぶが出世頭だが、当代勘九郎を座頭とする今回の座組からすると鶴松が筆頭格と言えよう。それにしても、子役時代から天才と呼ばれて来た鶴松丈だが、舞踊の本舞台での主役とは、やはり大抜擢だ。
二人の陽性な気質がうまく生かされて、華やかで機嫌のいい、観て楽しい舞踊だった。踊り巧者だった十八代目の中村屋風の味わいもどこか感じさせて、一座としての帰属意識も垣間見えたような気もした。
《流星》は、牽牛に勘太郎、織女に長三郎、流星が勘九郎の父子トリオ。延寿太夫を頭とする清元連中。
漢服姿の牽牛、織女の場はおっとりと。
「ご注進」で登場した勘九郎の流星は、花道がないため、客席舞台より上手側の扉から現れた。客席が沸く。
ひところまでは、当代勘九郎の歌舞伎での舞台を観るたびごとに十八代目の影が二重写しになったものだが、もはや当代の自家薬籠中の物。身軽で機敏な動きは、まさに流星そのものだ。
仕方噺の段では、ダンベルのような金の槌や、でんでん太鼓などの小道具を取っ替え引っ替え、父雷や女房雷、婆雷、赤子雷を演じ分ける。こんなに色々小道具使っていたかと、ちょっと驚いた。

(2)福叶神恋噺(ふくかなうかみのこいばな)
                 1:15〜2:20
落語作家小佐田定雄が1980年に故桂枝雀のために書いた新作落語「貧乏神」の、本人による初の歌舞伎劇化。今井豊茂の演出。
主演は、ぐうたら大工の辰五郎を虎之介、貧乏神お足たらず姫改めおびんを七之助。勘九郎が先輩貧乏神すかんぴん、として助演。
小佐田定雄が中村屋のために書き換えた新作歌舞伎は《廓噺山名屋浦里(さとのうわさやまなやうらざと)》《心中月夜星野屋》に続き3作目。
堂に入ったもので、元来上方の人のはずなのに、すっかり江戸前の世話物仕立てになっている。
女貧乏神というキテレツな役どころは、まさに七変化な七之助にピッタリ。
虎之介も憎めないぐうたら男の機微を明るく、そして終盤ではシリアスに演じていた。
飛び道具的な脇キャラ、町内の娘おきゃぴを中村かなめが爆演。新たなスターの誕生を観た。
グダグダになりそうなラストを、脚本と演出の妙と役者たちの好演で乗り切り、見事過ぎるハッピーエンド。
新作初演で、これだけ面白く魅せられるのは大したものだ。
何よりも、勘九郎、七之助兄弟を頭に、虎之介、鶴松、勘太郎、長三郎と中村屋一門の弟子だけで、これだけの舞台を成立させたのは世代交代期とは言え、画期的だ。
終戦後、歌舞伎劇場の誘致によって町を活性化したいとの目論見から「歌舞伎町」と名付けられたらしい。その悲願の歌舞伎公演が、当代勘九郎ら若き中村屋を中心とする一座によって成功したことを大いに祝いたい。
客席は、ほぼ満席だったが、もう少し若い世代が多ければ文句はなかったところだ。

東急歌舞伎町タワーの大型ビジョンの大歌舞伎広告

タワーの外に出たら雨だったが、ゴジラでお馴染みの東宝ビルの側から大型ビジョンに映る歌舞伎町大歌舞伎のCMを観てから移動した。
(2024.5.13記 5.15追記)

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