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殺戮にいたる病/我孫子武丸(1992/9/1)【読書ノート】

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。叙述ミステリの極致!

ひろゆき絶賛

ヨビノリたくみ先生オススメ

「殺戮にいたる病」は、そのタイトルからして非常に強烈です。本作は通常の想像をはるかに超えるグロテスクな描写と狂気に満ちており、そのため一般には推薦し難い作品です。特に、物語の被害者が全て女性であり、彼女たちが犯人によって非常に残酷な扱いを受けるため、女性読者には特におすすめできません。
この小説の興味深い点の一つは、物語が犯人の逮捕から始まるという点です。通常は終わりにくるエピローグが冒頭に置かれており、その後の物語は逮捕に至るまでの経緯を描いています。物語は三人の視点、蒲生稔、母親の蒲生雅子、そして元警察官の樋口武雄から語られ、それぞれの視点から事件の真相に迫ります。
読み終えた後も強烈な印象を残します。一度読み終わると、物語のすべてが明らかになり、再読することで新たな発見があるかもしれません。物語の中で初めは見過ごしてしまうような細かい伏線が、再読することで意味を成し、物語への理解が深まります。「殺戮にいたる病」は決して万人にはおすすめできない作品ですが、グロテスクな描写に耐性があり、ミステリー小説の深い闇を味わいたい読者には興味深い一冊となるでしょう。

サイコキラーの恐怖を描いた衝撃作『殺戮にいたる病』
この作品は、その独特の世界観と猟奇的な描写で読者を魅了し、同時に戸惑わせる問題作として知られています。作品の魅力を伝えることの難しさを感じつつも、多くの方に体験していただきたい一冊です。
この物語は、グロテスクな表現に耐性があり、予想を裏切る衝撃的な展開を楽しみたい方に特におすすめします。表紙デザインからもその雰囲気が伝わり、読み進めるうちに物語の深層に引き込まれることでしょう。
物語は、東京の繁華街を舞台にしたサイコキラー、蒲生稔による連続猟奇殺人から始まります。その冷酷無比な犯行とは裏腹に、犯人は逮捕時には全く抵抗を見せず、その静かな笑みは警官たちさえも戸惑わせました。この序盤から読者は、凍りつくようなラストシーンに至るまで、殺人鬼の内面と行動を追いかけることになります。
『殺戮にいたる病』は、エピローグから物語が始まるという特異な構成を持っています。物語の結末が先に明かされることで、通常ならば物語の面白みを損なうかもしれませんが、この作品ではそうはなりません。逮捕された犯人の過去を追いながら、彼がなぜそのような行動に出たのか、その心理を深く掘り下げていきます。
本作には非常に生々しい殺人シーンが含まれており、一部の読者には受け入れがたい内容も含まれています。しかし、これらの描写は物語において重要な役割を果たしており、主人公の異常な心理状態を浮き彫りにするために必要な要素です。感情移入が難しい主人公を通じて、読者は従来の物語とは異なる視点から物語を体験することになります。


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