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恋愛映画で泣けないの…

女性二人。
 
「ねえ、聞いて」
「どうしたの?」
 
「また最近、
 サブスク加入して、
 映画見るようなったの」
「へえ~」
 
「でも、なんていうの…
 前みたいに泣けないのよ
「そうなの?」
 
「私って…恋愛映画大好物じゃない?
 いっつも見てたでしょ?」
「うん。
 よく、オススメもされた」
 
「毎回、どの作品見ても、
 泣いてたんだから」
「知ってる。
 映画館で…犬の鳴き声みたいな、
 嗚咽おえつを上げてるの見て、
 ドン引きしたから

 
「それ話、盛ってるよね?
 涙が止め処なく流れてた程度でしょ?」
今度、見る時、
 自撮りしな

 
「…………
 …………でね。
 ほんと、どの作品見ても感動してたのよ。
 
 二人の出会いの場面で…泣く…。
 二人の小さなすれ違いで…泣く…。
 
 二人の思い出のアイテムに…泣く…。
 二人の橋渡しをするライバルに…泣く…。
 
 二人のシルエットが重な…」
泣きすぎ
 
「でもさ…
 国内外こくないがい様々な新作が出るたび、
 見てるんだけど…泣けないの…
 涙が出るほど、
 感情が揺さぶられない感じ
…なんだろ…」
結婚したからじゃないの?
 
「やっぱ…そうかなあ…」
「分かんないけどね。
 それくらいしか、
 あんたの心境の変化なんてなくない?」
 
「そうなんだよね」
関係冷え切ってんの?
 
「そんなことない!
 し・つ・れ・い!
 まだ週末デートしてるし、
 大好きだし」
「あっそ。
 じゃあ、老化じゃない?
 
「もっと失礼!
 同じ歳でしょ!」
「私、早生はやうまれだし」
 
「たった3ヶ月で、
 若いアピールしないでよね!」
「でも、恋愛映画に感情移入できないって、
 そういうことじゃないの?
 
 うちらが学生の時とは違って、
 社会人の仲間入りして…
 環境もすっかり変わってしまって…
 何より…あの頃の気持ちには戻れないよ。
 
 年齢重ねて…
 
 眼の前にある現実と、
 映画の中のヒロインとでは、
 重なる部分がほとんどいじゃない。
 
 状況も…気持ちも…
 
「……」
「……」
 
「…大人になったのかな…」
「色々、経験したからね…」
 
「……」
「……」
 
「…経験で思い出した」
「なに?」
 
私、ボランティア始めたの
「何の?」
 
介護施設の
「そうなんだ」
 
「週4時間程度だけどね。
 高齢者のお話を聞く、
 傾聴けいちょうボランティア
「へえ~」
 
「最初は親からたのまれて、
 嫌々いやいや行ったんだけど、
 これが結構、面白いくて」
「へえ~」
 
「その高齢者の話がスゴいのよ。
 友達の彼氏と内緒で付き合ってたとか…
 ダブル不倫してた話とか…
 上司にみつがせたとか…

あなた…
 泣けなくなったの…
 そのせいでしょ

「うげっ!!」


 このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。

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