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図書館司書の失敗談②「手ごわかったレファレンスの話」

こんばんは、古河なつみです。
今回は図書館司書をしていた時に知識が足りずに思わず「えっ?」と首を傾げてしまった利用者さんからのレファレンス(調べ物)の質問を紹介します。(※事例についてはところどころ単語を差し替えてあります)

Q1「ラズベリーパイの本ってありますか?」

若い男性からの質問にNOT理系の私はこう答えてしまいました。

「ええ、料理のレシピ本に掲載があるかもしれないのでお探しを……」
「ああ、違うんです。電子工作の方です」

電子工作?
狐につままれたような気持ちになりながら蔵書を調べると……

「あっ、ラズベリーパイ……「Raspberry Pi」ですね!かしこまりました。所蔵がありましたのでご案内します!」

実は「Raspberry Pi」はプログラミングを学ぶ方に人気なハードウェアの一種だそうです。

質問してくださった方は、最初こそちょっと笑っていましたが、お礼を言ってくださって資料を借りて行かれました。もっと色々なジャンルに興味を持たなくちゃなぁ、と思ったレファレンスでした。

Q2「カドの本持ってきて!」

颯爽と現れた初老の男性からの一言。

「ええと、カドというのは……」
「カドだよ、カド」

……ええっ?
これはちゃんと内容を聞かないとどういう質問なのかすら分からない!

「専門用語だとは思うのですが、どういったジャンルの本ですか?」
「はぁ……アンタ新人?」
「はい(※司書になって一ヶ月目の出来事でした)」
「ったく、カドも知らないとはねぇ……建築に使うプログラムだよ」

もう一度調べ直すと「CAD」というそれらしき単語が。
慌てて本棚へ行き、男性に資料をお渡しすると「勉強が足りないねぇ」とお叱りの言葉がありつつも「これから頑張んなよ」と最後には励ましていただきました。

その後、心配してくれた先輩司書から声を掛けられました。

「なつみちゃん、大丈夫だった?」
「はい、すみません。知らない分野のレファで手間取ってしまいました」
「何聞かれたの?」
「カド、というプログラムについての本を探していたそうで……」
「カドぉ?」

物知りの先輩も「なんじゃそら」の顔をしていたので余程専門的な知識なんだろうな、と思って概要を説明すると……

「それCAD(キャド)じゃん! カドなんて言われたら辿り着けないよ!」
「ということは、あのおじさまは……」
「読み方を勘違いしてたんだよ……なつみちゃん、プログラム用語の場合はその単語の「スペル」を一番最初に聞いたら大抵は解決するから。あと、利用者さんの言うことを信じてあげるのも大事だけど、疑うことも忘れないようにね」

このやり取りの暫く後に出版された『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(福井県立図書館編著/講談社)を読んだ時に、先輩司書のアドバイスが改めて身に沁みたのを覚えています。

Q3「人を追悼する時に詩や歌を詠むことを表す単語ってあるかしら?」

老婦人から質問されて、たまたま察しのついた私はこう答えました。

「多分「挽歌(ばんか)」のことだとは思いますが、辞書で意味を調べて本当に正しいか裏付けを取りますね」
「助かるわ、ありがとうね」

そうして辞書にきちんと思った通りの解説が載っていたので、お見せするとご婦人は喜びながらポケットから紙と鉛筆を取り出しました。

「あっ……それは……」
「ずっと答えが分からなくて困っていたの。ありがとねぇ、お嬢さん」

彼女が取り出した紙はクロスワードの切り抜きでした。

このnoteでも紹介しましたが「クロスワードの答え」は図書館では教えてはいけない事になっています。

この時はもう答えてしまったので「ホントはダメなんです!忘れてください!」とも言えず、次回からは「答え」ではなく「調べる手段」を聞いてみてくださいね、とやんわりご案内をした記憶があります。

最後は答えを探すのに慌てた、というよりも、私自身が非常に口下手なので図書館の事情を説明するのに時間が掛かってしまった事例を紹介しました。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。

古河なつみ


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