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有名小説家が手掛けたクリスマス絵本はちょっぴりビターな物語!おすすめ大人向け絵本2選

こんばんは、古河なつみです。
お子さん向けの可愛いクリスマスの絵本がたくさん出る季節ですが、実はクリスマスを題材にした大人向けの絵本も出版されています。
今回はちょっぴりビターな物語が魅力的な、大人向けのクリスマス絵本を二冊紹介します。

『クリスマスを探偵と』伊坂幸太郎著/マヌエーレ・フィオール絵/河出書房新社

有名なミステリ作家の伊坂幸太郎さんが絵本の形態で作品を出版されているのをみなさまはご存じでしょうか?

ドイツのローテンブルクというどこかメルヘンチックな街中で、一人の探偵が浮気調査のために男を尾行している所から物語は始まります。
温かみのあるタッチのイラストでクリスマスの街並みが幸せそうに描かれている中、主人公の探偵カールだけがどこか浮かない様子。ターゲットがとある夫人の家へ入った所でカールが監視を続けようとベンチへ座ると「もしかして探偵さんですか?」と不思議な男に声を掛けられます。彼と話す内にカールは自分のクリスマスにまつわる苦い過去を思い出すのですが……といった内容です。

これは伊坂さんが学生の時に書いた小説が元になっているそうです。
途中までの展開はほろ苦くて、けれど声を掛けてきた不思議な男が「都合のいい話」として語り直していくと、くすっと最後には微笑めるような展開が待っている優しいお話になっています。

普段の伊坂さんのミステリ作品のような入りから、するっとファンタジーが同居し始める世界観が、どこか『死神と精度』を読んだ時の味わいを思い出せてくれました。


『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』ポール・オースター著/柴田元幸訳/タダジュン絵/スイッチ・パブリッシング

ポール・オースターは海外文学好きの間では有名なアメリカの小説家です。この物語は小さなサイズの絵本形式で日本では出版されており、ブルックリンの街角から始まる不思議なクリスマスのストーリーを味わう事が出来ます。

〆切の近い原稿の内容に悩んでいた小説家が、偶然店で居合わせたオーギー・レンという男からクリスマスに体験した出来事を聞く、というのがおおまかなあらすじです。

そして、いま語った約三行のあらすじは本当に「枠」でしかなく、小さな絵本の中に詰まった「中身」、つまりオーギー・レンが体験した出来事の濃さが印象的でした。

紆余曲折の末、見知らぬおばあさんにオーギー・レンは出会う事になります。その時の行動について、話を聞いた小説家は「いいことをしたんだよ」と答え、オーギー・レン自身は「本当にそうだろうか?」と疑問を抱いている構図が、このストーリーのビターで複雑な味わいを表していると感じました。最後の二人の会話の終わり方がオシャレで映画みたいだなぁ~と思っていたら、『SMOKE/スモーク』という映画の原作小説だったようで、映画の方も見てみたくなった一冊でした。

今回は以上になります。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。

古河なつみ



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