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図書館司書のレファレンス集「ぶたたぬききつねねこみたいな本ってあります?」

こんにちは、古河なつみです。
私が図書館司書をしている時に調べ物の相談(レファレンス)を受ける事が多くありました。
その中でもくすっと笑えた事例を一つご紹介します。
(※相談内容については所々単語を差し替えてあります)


「ぶたたぬききつねねこ」みたいな本ってあります?

2021年の夏ごろ、とある女性から問い合わせを受けました。
『ぶたたぬききつねねこ』は「11ぴきのねこシリーズ」でもお馴染みの馬場のぼるさんが手がけた幼児向けの言葉遊びの絵本です。
その時に私が勤めていた図書館では同じような内容の絵本を集めたコーナーもあったので、簡単な案内で済むかしら……と思ったのですが。

「似たような内容の、言葉遊びの絵本をお探しですか?」
「いえ、タイトルがそういう感じの本なんですけど……ちょっと正確に思い出せなくて……」

「多分、絵本だと思うんですけど……」

その本が読売新聞で紹介されていて興味を持ったご様子。
しかし切り抜きを無くしてしまって手がかりがなくなってしまったようです。

「海外でベストセラーになったらしくて……表紙はほとんど真っ白でこどもと馬かロバ?みたいな生き物が描かれていたと思います」
「新聞に掲載されてた時期って覚えてますか?」
「はっきりとは……ちょっと前だと思うんですけど……」

もしも時期がはっきりとしていれば、新聞のデータベースから書評欄を検索する、という手立てが使えたのですが、今回は難しそうです。

「タイトルが『ぶたたぬききつねねこ』みたい、ということは……生き物の名前が並んでいるようなタイトルだった、という事ですよね……?」
「ええ、うーん……きつねはいたような気がするんですけど……あとの三匹がどうしても思い出せなくて……」

ここで私は「きつね 絵本」でインターネット検索をかけました。
すると最初に表示されるのは「きつねの出てくる絵本のまとめ集」や通販サイトランキングだったのですが、下までスクロールしてみると何やら気になるタイトルが……

「この絵本では……?」

私は検索結果の画面を相談者の女性に見せました。

『ぼく モグラ キツネ 馬』チャーリー・マッケジー著/川村元気訳/飛鳥新社

画像をお見せした瞬間、女性の表情が(正確にはマスクをしていたので目元だけですが)ぱっと明るくなったのが分かりました。

「あっ! これです! この本です!」
「見つかって良かったです~、やはり人気のようで順番待ちになってしまいますが、ご予約しますか?」
「はい、お願いします。……ふふ、それにしてもキツネしか合ってないですね」

恥ずかしそうに笑いつつ、その女性は「楽しみにしています」と予約をして帰っていかれました。無事にお探しの本が見つかって良かったなぁ……と思えたレファレンスでした。

とはいえ、後で先輩司書から「絵本の表紙に描かれているものは内容のキーポイントになるものが多いからさっきの会話で「表紙に馬」まで分かっていたなら「うま きつね 絵本」まで含めて検索するともうサジェストで出てくるし、もう少し提供が早くなるかもね」と教えてもらったので100点満点のレファレンスにはならなかったのは反省ポイントでした。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またお会いしましょう。

古河なつみ



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